識鏡録 25 湖畔に建つ紅の館
この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
◆登場人物紹介◆
紅美鈴
種族:???♀ 年齢:最低70歳以上
血統権能:不明
技能権能:不明
程度の能力:気を使う程度の能力?
◆紅魔館の門番。通称『居眠り中国』。その正体を知る者は少ない。
十六夜咲夜
種族:人間族♀ 年齢:永遠の17歳
血統能力:無し
個別権能:時間操作
技能権能:闘気
程度の能力:時間を操る程度の能力
◆紅魔館の家令にして当主レミリア・ヴァン・スカーレットの側近。能力で老化を止めている。
魔法の森上空。
「そういや、紅魔館って吸血鬼族の館なんだよな?」
「そうだけど、それがどうかしたのぜ?」
「いや、昼間に行って起きてるのか? 吸血鬼は夜行性だって萃香が言ってたけど……」
「…………確かに………………」
二人は顔を見合わせ、少し思案する。
「……ま、寝てるなら起きるまで待てばいい話か」
「神様みたいなこと言いやがるのぜ。わたしはそんなに暇じゃないのぜ?」
「そうなのか? 暇そうだと思ってたよ」
魔理沙は心外そうな表情を浮かべる。
「わたしは日々の糧も自分で集めなきゃならないのぜ。そんなに暇じゃないのぜ」
「お、おう。分かったよ。悪かった」
「分かればいいのぜ。じゃ、取り次いだらわたしは帰るからな~」
「了解。それでいいよ」
二人はさらに速度を上げ、紅魔館目指して飛んでいく。
◇◆◇◆◇◆
魔法の森の上空を抜け、霧の湖を越えて、湖畔に建つ紅の館へとたどり着いた。
「高い壁だなぁ……」
「前はこんなに高くなかったけどな。気が付いたら三倍くらいになってやがるのぜ」
ひとしきり見上げてから、視線を戻して思わず呟く。
「んで、この人誰? なんで寝てるの?」
「あー。コイツの名前は紅美鈴。紅魔館の門番をやってる妖怪なのぜ。正体はよく分からないけどな。通称は居眠り中国」
あっけらかんと魔理沙は説明する。
「居眠り中国……」
否定してあげたいところではあるが、残念ながら目に入る姿はまさに居眠り中国そのままで、擁護しようが無かった。
「んじゃ、入るかー」
「おいおい。門番は無視でいいのか?」
「寝てるんだからほっといていいのぜ」
「えぇ…………」
鏡也が困惑してる間に、魔理沙は魔術で解錠して勝手に中に入って行く。
「うわ。庭広いな」
門を少し開けて潜ると、広大な庭が広がっていた。
それこそ、本館が小さめに見える程である。
「言われてみれば。綺麗な庭なのぜ」
「噴水まであるな……」
「それがどうかしたのぜ?」
「いや、吸血鬼って流水が苦手なんじゃ……と思ってさ」
そう言われ、魔理沙は噴水に視線を移した。
「確かに……。まあ、夜は止まってるんじゃないか?」
「それはありそうだな……」
そんな話をしながら、二人は本館へ近付いて行く。
「ん?」
玄関の前に、静かにたたずむ人影がある。
「なあ……どうする?」
「堂々としていればいいのぜ……」
小声でそう言い交わすと、二人は覚悟を決めて進む。
「識神鏡也様ですね? 御館様より御来訪は言付かっております。お待ちしておりました」
それはそれは丁寧なお辞儀だった。
本館の前で待機していた瀟洒なメイドの名は、十六夜咲夜。
紅魔館に住む数少ない人間だ。
「えっと? どういうこと……? というか、誰……?」
困惑した鏡也がそう問うと、咲夜はふたたび一礼する。
「失礼致しました。私は当館の当主、レミリア・ヴァン・スカーレットに仕える家令、十六夜咲夜と申します。以後、お見知り置きを」
「ん? 家令? メイド長じゃなかったのか?」
「メイドの数が増えたから、メイド長じゃ肩書き不足になったのよ」
鏡也に対するものとは違い、魔理沙には砕けた口調である。
「なんか対応に差があるのぜ……」
「気のせいじゃないかしら? それと、御館様から識神様のお相手をするように仰せつかっているから、貴女はもう帰っていいわよ」
隠す気の欠片も無いようだった。
咲夜にしてみれば、アポ無しとはいえ極めて珍しくレミリアから事前に「賓客として対応しなさい。私が起きるまでの相手をお願いするわ」と命じられた鏡也と、地下の大図書館に忍び込んでは魔導書を盗んで行く魔理沙を同列に扱えるわけがないというものなのだ。
霊夢や文屋がアポ無しで訪ねて来ることはあるが、それをレミリアがわざわざ予言したりすることは無い。
今回は特別なのである。
「へいへい……。ま、そうさせてもらうのぜ。じゃあな鏡也~。首尾よく行くことを祈っといてやるのぜ~」
「おう。ありがとな、案内してくれて」
「また今度お礼してくれればいいのぜ」
箒に跨った魔理沙はニヤリと笑ってそう言うと、低空飛行で来た道を引き返して行った。
「ん? いや、待ってくれ」
見送った鏡也は、ふと気付いて振り返った。
「ここの当主は、俺が来るのが分かってたのか?」
「左様にございます」
咲夜の返答は明解だった。
「それはどうしてだ?」
「…………それは御館様に直接お尋ね下さい」
いくら賓客でも、それを教えるわけにはいかない。
「分かった。そうしよう」
「ありがとうございます。では、こちらへどうぞ」




