識鏡録 20 識神鏡也とは
この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
「さあ、しっかり防ぎなさい」
「ちょ、ま__」
魔理沙は火力と速度に特化しており、防御は苦手なのだ。
弾幕勝負に殺しは厳禁とは言っても、長年のクセというものはそう簡単に抜けるものでは無い。
魔理沙が死を覚悟した、その時だった。
「裏四天王奥義:哀世劉戮譚!!」
解き放たれた超圧縮光線を、粉々に打ち砕く乱撃が襲う。
「うわぁ!?」
「んなっ……」
爆煙を払い、小さな人影が降りてくる。
「ふぅ。危ないところじゃったな」
小さな身体に不釣り合いな大きな捻れた角をもつその鬼人族の少女は、伊吹萃香である。
魔界にて鏡也に修行をつけていたが、ちょうど帰ってきたのだった。
「まったくだ。帰ってそうそうこの調子じゃ、先が思いやられる……」
その鏡也は修行を経て一回り精悍になったように見える。
「おかえりなさい、鏡也お兄ちゃん!」
「ん。ただいま」
真っ先に駆け寄って声をかけたのは、先程まで魔理沙とプリシラの手合わせを観戦していた霊奈だった。
鏡也はそんな霊奈の頭を撫でる。
「えへへ……」
「(さっきまで爆発に怯えていたのに……)」
鏡也の姿を見た瞬間、怯えが飛んで花が咲いたかのような笑顔に変わった。
すっかり懐いた霊奈に呆れればいいのか、人見知りな彼女をあっさり手懐けた鏡也のタラシぶりに呆れればいいのか、難しいところだ。
「あっさり防がれると傷付きます……」
音もなく降りてきたプリシラが、抗議するが如くそう言う。
「何を言うのじゃ。裏を使ったのは久しぶりじゃぞ」
萃香はそううそぶく。
確かに裏を使ったのは久しぶりだが、技量の粋を搾り尽くしたわけでもない。
プリシラはそれを知っていた。
四天王奥義は、萃香が他の四天王にも使えるように考案した技なのである。
他人のために考えた技が、技量の粋であるわけがない。
「いやー、死んだかと思ったのぜ」
一度は死を覚悟したというのに、その声は明るかった。
魔理沙とて何度か死線をくぐってきている。
死にかけたくらいでショックを受けたりはしない。
「……あんた、礼くらい言っときなさいよ?」
「おうよ。……って、あっちは取り込み中みたいなのぜ」
霊夢と魔理沙の視線の先には、何やらコソコソと話す萃香とプリシラの姿があった。
「ああ、すまぬな、少し外してくれるか。飯でも食うてくるがよいじゃろう。鏡也も腹を空かせておる」
「え!? そうなの鏡也お兄ちゃん」
「実はそうなんだよ。腹減って死にそう……」
「あわわ、すぐご飯用意するね!」
「ありがとなー。あ、これ魔界のお土産」
「えっ! ありがとう! これ……宝石?」
「いや、魔石だよ。魔術が苦手って聞いたから、何かの役にたつかなって」
「鏡也お兄ちゃん……!」
「こらそこ。イチャイチャするんじゃないのぜ!」
四人はワイワイ話しながら神社の中へ入って行く。
それを見送り、萃香とプリシラは会話を再開した。
「それで萃香様……やはり彼は第一宗子様ご本人……」
宗子。それは神代を終わらせた神々の宗主たる神、宗神の息子達のことである。
「分からぬ。姿はかつてのあやつそのままじゃが……神気を感じぬ。偽物の可能性も否定出来まい」
「……レフィリア様ならば、判別出来るのでは……」
幻想郷の管理者の一人である白虎神レフィリアは元は獣人であり、第一宗子の奴隷でもある。
「かもしれぬが、あやつは今畜生界に居てのう……。しばらくは帰って来ぬのじゃ」
第一宗子が妹の暴走を鎮めた際に消失して以来2000年が経つが、その間レフィリアはずっと第一宗子の奴隷をやめなかった。
奴隷契約術式は、対象者が欠ければいつでも破棄出来るようになるにも関わらずだ。
「やはりまだ……?」
「うむ。主人を忘れられぬようじゃな」
レフィリアは何も嫌々奴隷をしていたわけではない。
むしろ拝み倒して奴隷にしてもらったのだ。
いつでも破棄出来る奴隷契約を後生大事に残しているレフィリアであれば、第一宗子識神鏡也が本物なのかを判別出来る。
「じゃが、偽者だった時が問題じゃな。レフィリアのやつがブチ切れて鏡也を挽肉にしてしまうじゃろうて」
記憶喪失だと言う彼は、第一宗子識神鏡也にそっくりだった。だから萃香はすんなりと命名したのだ。
だが、それが嘘で、全くの偽物だったら。
敬愛する主人を騙る者を、レフィリアが許すはずもない。
「……偽者でも構わないと?」
本来なら、偽者だった場合の心配など必要無いはずだ。
偽者なら、騙そうとしていたということなのだから。
それなのに心配するということは……。
「担ぎ上げるつもり……」
現在の宗神勢力は纏まりを欠いている。
宗神の子供達も、長男は生死不明で行方不明、次男は盟主たる器が欠けており、跡取りとして指名されていた三男は戦意を欠き、四男は既にこの世に無い。
ただ一人の娘は与えられた力を制御出来ず暴走し、兄が命懸けで封印した。
担ぎ上げるにたる神輿が無い情勢だったのだ。
管理者達こそおおむね結束していると言ってよいだろうが、それ以上のメンツを束ねるとなれば神輿は必要になってくる。
「やはり、結界は長くは持たないということ……」
プリシラのその呟きを、萃香は聞いていないふりでスルーした。
管理者の一人として、結界の秘密に気付かれたとなれば対処しなければならない。だから聞こえなかったことにしたのだ。
「さて、そろそろ中へ入るかのう。わしらの飯がなくなってしまうわい」
そう言って萃香は話を打ち切った。




