識鏡録 19 修行のはずが……
この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
「まったく……騒がしいわね……」
博麗神社。
霊夢が押し切られ、プリシラを泊めてから次の日の昼頃である。
朝から魔理沙がやって来たまではよかったのだが、「せっかくだし、修行をつけてくれなのぜ!」なんて話になったあたりから雲行きが怪しくなった。
霊夢は頑張って妨害したのだが力及ばず、とうとう博麗神社上空で弾幕勝負が始まってしまったのである。
「すごいなぁ……。魔理沙お姉ちゃん、ビュンビュン飛んでる……!」
霊奈が目をキラキラさせて空を見上げている姿を見て、霊夢は複雑な気持ちだった。
可愛い姿ではあるが、姉としてはこの程度の戦いに憧れる妹の姿とは悲しいものにも映る。
まだ、魔理沙もプリシラも小手調べ前のウォーミングアップという程度のところなのだ。
「(萃香も言っていたけど、やはり霊奈に戦闘の才能はなさそうね……)」
ならば、自分が守ってあげなければならない。霊夢は改めてそう思った。
「お姉ちゃん……?」
霊夢は無意識のうちに霊奈の頭を撫でていた。
「どうしたの?」
「ううん。なんでもないわ」
そうこうしてるうちに、上空での戦いは本格化しつつある。
ウォーミングアップから小手調べの段階へ。
霊夢はふたたび空へ目を向ける。
プリシラはレーザーを軸にした弾幕を全方位に展開している。
実戦ならば一瞬とかからず勝負がついているだろうが、弾幕勝負には色々な制約があるので、そうもいかないのだ。
普段使っている極細レーザー系は魔理沙の眼には見えないので全て封印しなければならない。
不可視の攻撃は反則なのだ。
「そろそろいくのぜ! スペルカード発動! 魔符:ノンディレクショナルレーザー!」
瞬時に術陣が八つ展開され、レーザーが吐き出される。ついで大きな術陣が魔理沙の背後に現れ、弾幕を打ち出す。
それに呼応するように、プリシラも杖を構えて術陣を構築した。
スペルカードを唱えるより術式を構築する方が早いプリシラは、基本的にスペルカードを使わない。
スペルカードルールは極最近制定されたもので、神代から生きているプリシラなどにはまだ不慣れなものなのである。
「物量タイプ……ううん。それにしては洗練されているわね……。とても実戦的……」
弾幕勝負は大きくわけて二種類のルールがある。試合形式と決闘形式だ。
試合形式は、事前に使うスペルカードの回数を宣告しておくルールで、人間が格上に挑む時などのために制定されたものだ。
そして決闘形式は、殺しを禁じる程度のなんでもありなルールだ。
試合形式では弾幕の美しさも重要だが、決闘形式ではそれも関係無い。
プリシラの弾幕は、決闘形式に特化したものだと言えるだろう。
余計な弾幕が無く、的確に移動ルートを潰してレーザーで撃墜することだけを目的とした攻撃だった。
「うわっ!?」
魔理沙は少々危なげではあったものの、その弾幕を回避してみせる。
「へぇ……今のを避けるんだ」
さすがに傷が治るたびに風見幽香に試合を挑んでいるだけのことはあるというところだろう。
霊夢はそう感心しつつ観戦する。
「星符:ホーミングスター!」
魔理沙は追尾性能を持つ弾幕を一息に16発発射した。
こういうことを簡単に出来るのはスペルカードのメリットだと言えるだろう。
「それにしても……」
浮遊魔術の出力を上げ、追尾してくる弾幕から逃げながら一つ一つ撃ち落としていきつつも、プリシラは感心していた。
追尾弾は直線的な軌道をとらず、撃ち落としづらいように変則的な挙動をとっている。
ほんの十年ほど前にはあんなに小さかった魔理沙が、今はこんなにも成長した姿を見せている。
人間は凄い。時間の流れが違うかのように、たった数年で信じられない程に変わるのだ。
「(楽しい……)」
工夫された魔術を見ると、ついつい嬉しくなってしまう。
「よいものを見せてもらったお礼。切り札の一つ、見せてあげる」
不敵にそう宣言し、プリシラは杖を掲げる。
「っ!?」
嫌な予感を感じ取った魔理沙は、とっさにミニ八卦炉を取り出し構えた。
「させるか! これでもくらえ! 恋符:マスタースパーク!!」
風見幽香から見て盗んだ、極太のレーザー攻撃。もはや魔理沙の代名詞と言っても過言ではない決め技がプリシラに迫る。
「正しい判断。でも」
プリシラは避ける素振りすら見せず、即座に障壁を展開した。
「無駄なのぜ。当たりさえすれば……!」
幽香と違ってミニ八卦炉無しでは連発出来ないものの、威力だけは折り紙つきなのだ。
「うわ。あれ、大丈夫かしら……」
流石に最大出力では無いが、あんなものが直撃したらただではすまない。……はずなのだが。
「わきまえよ、人間。【大森妖】の遺した愛娘の技を盗んだとて、この身にとどくことなどない」
光が収まると、障壁に包まれた無傷のプリシラが姿を現した。
「……マジかよ…………。あれで無傷なら、最大出力でも……」
魔理沙のショックが収まるまで待っているのでは、とても決闘とは言えない。
そう判断したプリシラは、今度こそ切り札を発動する。
「光輪……展開……!」
光の輪が次々と産み出され、複雑に絡み合ってゆく。
「これは……魔術乗陣か!?」
霊術の威力は、込めた霊力×霊力の練り具合×術力(魔術なら魔力、呪術なら呪力など)によって決まる。
魔術乗陣は魔術で術陣を紡ぐことにより、術力の効果を複数回乗せることで威力を飛躍的に向上させる技術のことである。
「チィッ! なら……!」
再起動した魔理沙は、すぐに乗陣共通の弱点を突きにかかる。
発動した魔術で術陣を紡ぐという段階を踏む以上、構築途中の術陣を壊してしまえばそれで終わりなのだ。
「恋風:スターライトタイフーン!!」
防ぎづらいよう、攻撃範囲の広いスペルカードを選択した判断は正しい。
「全部落とす」
口元に隠しきれない笑みを浮かべ、プリシラは術式を一瞬で構築する。
弾幕には弾幕を。広範囲攻撃には広範囲攻撃を。
実戦ならばまずやらない相手の動きを正面から叩き潰す戦い方。格上にのみ許された戦法だ。
「くっ……!」
さすがに魔術乗陣を構築しながらの迎撃では完全には防げないが、術陣を破壊するには至らない。
「四乗……ううん、五乗かしら。止めないとまずいわよね……」
霊夢はそう呟く。
正直あそこまでやるとは思っていなかったので、止める準備などしていない。
お祓い棒と陰陽玉を取り出すが、もう遅い。
「さあ、しっかり防ぎなさい」
魔術乗陣が光を増してゆく……!
投稿遅れてすみません。
戦闘パートは苦手で難産になりがちです。
【解説】
そもそもスペルカードとは何か。
拙作においては、術式(霊術の構造式)と法式(権能の構造式)を記録したカードということになります。
どちらか片方だけを記録したものもあります。
使用しても消えたりすることは無く、何度でも使えます。
あくまで術式を記録しているだけなので、霊力(権能なら精神力)を消費しないと発動出来ません。
発動には発動宣言「スペルカード発動」と
スペル名「霊符:夢想封印」
の二つを唱える必要があります。
ただし、発動宣言は一度した後はしばらく持続するため、必ずしもすぐにスペル名を唱えなければならないわけではありません。
また、宣言は一定時間持続するため、時間内ならスペル名を唱えるだけで発動出来るようになります。




