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東方二次創作【識神譚】  作者: 遊鑼鳴世
第一章 識鏡録
18/74

識鏡録 17 帰宅前

この作品は東方Project様の二次創作です。

※オリキャラ多数

※独自設定多数

※キャラ崩壊そこそこ

※投稿不定期

以上の点に注意してお楽しみ下さい。

魔法の森上空。


「この辺」


身体の動くようになったプリシラは、魔理沙を連れて空を飛んでいた。

博麗神社に向かう前に、家に置いてきた聖宝具を取りに寄るのだ。

パチュリーは調べ物のために紅魔館へ帰り、アリスは本当に異変だった時の協力を約束して日常に戻った。

もし危惧する通り異変が起こってしまった時に備え、万全の状態にしておく必要がある。

それに今回のことで痛感したのだ。

まさか太古の英雄と戦うことになるとは思わず、ローブと宝珠を置いてきてしまったが、それは油断以外の何ものでもなかったのである。

平和ボケした意識を叩き直さなければならない。そのためにも備えは万全でなければならなかった。


「……??」


家がこの辺にある、という旨のプリシラの発言をうけ、魔理沙は辺りをキョロキョロ見渡した。

もちろんただ見てるだけでは無く、反霊術を放ったりして探しているのだが……。


「……全然分からんのぜ……」


「ひよっこに特定される程甘くはない」


「ぐぬぬ……」


悔しそうな魔理沙だが、こればかりはどうしようもない。年季が違い過ぎるのだ。

霊夢が見つけられたのも聖眼の力であり、それが無ければまず不可能だっただろう。


人間の一生はせいぜい80年程度。

術師ならば体内で霊力を動かすことが多いために免疫力が高めで病気にかかりずらく、100年生きるのも珍しくはないが、プリシラなどにしてみれば誤差でしかない。

高位の術師は霊力循環の刻印術式を施すことで老化速度を半減させることが出来るが、それでもせいぜい180年だ。

パチュリーのように1000年生きてるなんて者は例外中の例外なのである。

他にも気功法という技術を修行することで疑似仙人とでも言うべき状態になることができ、これにより寿命は最大5倍ちょっと伸びたりするのだが、そうやって1000年生きたとしてようやく一般的なエルフと対等程度なのだ。

しかも実際は、エルフは寿命が尽きる頃になっても人間で言う50歳程度までしか肉体が老化しないので、対等にすら届いていない。

種族差。プリシラのように《長寿》の個別権能を有しているか、あるいは卓越した才能で短い寿命の間に超常者の域に至った者か、もしくは神性に目覚めるしか、それを覆すことは出来ないのだ。


「……人間は憐れ」


プリシラのその呟きに、キョロキョロしていた魔理沙はギョッとした顔で振り向く。


「なんだよいきなり。喧嘩売ってるのぜ?」


プリシラはそっと首を振る。


「違う。私は今まで、類稀(たぐいまれ)な才能を持った人間を何人も見てきた。老いて何も成せずに朽ちていく様を」


一つため息をつき、プリシラは続けた。


「せめてエルフであれば、あるいは超常者の領域に辿りつけていたかもしれないような才能が、無為に死んでいった」


「……それでも、私達は人間なのぜ」


魔理沙はそれだけ言うと、話を打ち切った。


「それより、そろそろどこにあるのか教えて欲しいのぜ」


プリシラは無言で頷くと、高度を下げてそっと着陸する。


「手を」


隠遁術式で隠されていることは分かっているので、解除条件に関係あるのだろうと考え、魔理沙は特に聞き返すでもなく手を取った。

綺麗な手だ。治癒術によって治しているのだろう。こまめにそうしていないと、硬質の皮膚になってしまう。

男性にとっては勲章なのかも知れないが、女としてはやはり細く柔らかい手でありたいのだ。

プリシラにもそういう意識があるのかと思って、魔理沙は少し安心した。


そうこうしてるうちに手順を済ませていたらしく、魔理沙の視界にはいつの間にか見慣れぬ魔導具が鎮座していた。


「なんじゃこりゃ……」


「異界門」


プリシラは端的に答える。


「はぁ!? これが……」


目を丸くして驚く魔理沙を横目で見ながら、プリシラは複雑な気持ちになった。

この異界門は大したものではない。

繋がる異界も狭く、安定度もまあまあというところだ。

それもそのはずで、これはとある人間の空間魔術師が試作で作った言わばプロトタイプなのである。

逆に言えば、初めてで使い物にはなる代物を作ってしまった訳で、12属性の中でも特に難しいと言われる空間属性でそれが出来るのは生半可な才能ではない。

そんな彼も、とっくの昔に寿命であっさり逝ってしまった。

先程の発言は、それを思い出していたから出たものだったのだ。


「ん……?」


ふと、異界門に付けてあるメーターに異常を見つける。生命反応の値が高過ぎるのだ。


「……中に何か居る。用心しなさい」


それを聞いた魔理沙は、数度瞬きして驚きを引っ込めると、すぐに臨戦態勢に移行した。

こういうところは、伊達に魔法の森で暮らしてはいないというところだろう。


「……いくよ」


そう言って、プリシラは先導して異界門をくぐった。

3/28。パチュリーとアリスが一緒に居ない理由を追加

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