識鏡録 16 開かぬ扉と見当たらぬ鍵
この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
魔法の森某所。
霊夢はこの場所に張られた精密な隠遁術式を解析していた。
この術式は、霊夢の全力の反霊術でも解除出来ない。
年季が違い過ぎる。これを張っているのは、確実に萃香のような超長命者の技術だろう。
だが、あくまでこの術式は迷わせるためのものであり、一定の手順を踏めば通過出来る可能性はある。
「うーん……。妖精の森の術式に似てる気がするわね……」
妖精の森。妖精族の住まう地で、妖精やエルフでなければ通る事の出来ない特殊な術式で森全体が守られているのだ。
奥深くにはエルフも住んでいると萃香は言っていたが、もちろん霊夢はエルフを見た事はない。
妖精族と違い、エルフはほとんど妖精の森から出てこないのだ。
「にしても……」
霊夢は凝った肩をほぐしながら虚空に視線を泳がせる。
「さっきの霊波……誰かがドンパチやってたのは確かだけれど……よくあることなのかしら……」
魔法の森は妖怪の森程では無いが、それなりに物騒な場所ではある。諍いの一つや二つ、あってもおかしくは無いのかもしれない。
「見に行きたいけど……」
解析を放り出すわけにはいかない。
「ま、いいわ。こっちの方が気になるしね」
そう独りごちると、霊夢は解析結果を精査する。
「これは……? 異界門を隠しているのかしら? まったくとんでもないわね……」
驚愕を超えて呆れすらする。
異界。それは誰か、あるいは神器や魔導具等が作り出した空界のことを言う。
神域もその一種だ。
霊夢は解析した手順を踏んで隠遁術式の奥へと進む。
神器の気配はしない。霊夢も神器を持っているから、それはわかる。
つまりこの異界門は術具によって開かれたものだ。一体誰がこんなものを作ったのだろうか。
意を決して、霊夢は異界門へと踏み込んだ。
一瞬視界が歪み、開ける。空間を跨いだ時特有の感覚が霊夢を襲った。
「やっぱりこれ、慣れないわね……」
魔界などへも、この感覚を避けては行けないのだ。故に霊夢は今まで何度か味わったことがある。
ほんの刹那の間だけだが、全ての感覚が消失する感覚。頼る物の何も無い、孤独。
何度経験しても慣れられることではなかった。
風景はそう変わらない。
控えめな色合いの花が所々に咲いているくらいのものだ。
小さな小さな空界。創造神の創った魔界などに比べればちっぽけなものに過ぎない。
その真ん中には、半分植物に埋もれた家があった。
「鍵は……かかってないわね。不用心な……」
家の中は、かなり散らかっていた。
あれほどの隠遁術式と異界門で隠しているにもかかわらず、特別な物はいくつかの聖宝具くらいのものしか見つからない。
「何この扉?」
その扉だけは鍵がかかっていた。物理的なものもそうだが、魔術によるロックもかかっている。
「扉に文字が……」
【真なる王を迎えし時まで開かず】
エルフ文字でそう書かれていたが、もちろん霊夢には読めない。勘のいい彼女には文字だということは分かるのだが。
「開かないわね」
そう呟いて、扉にお祓い棒を向ける。
霊夢の聖眼がわずかに輝き出し、深源眼の紋様が浮かぶ。
霊夢の体内の霊力が急激に活性化し、練り上げられていく。
術式を構築し、棒先に展開。
「ハァッ!」
小手調べの弾幕を扉へ向けて射出する。
ちょっとした炸裂音が鳴り、弾幕が弾けた。
「強化系ね……」
扉を結界で守るか、扉そのものを強化するか。術師によって好みの別れる所だが、この扉は後者らしい。
こういう半永久的な術式は、それを維持するための設備があるはずだが、強化系の場合、その設備は扉の奥に作るのがセオリーだ。
霊夢なら聖眼の力で魔術によるロックは解析出来る。あとは物質の鍵さえ見つけられればいいのだが……。
霊夢は周囲を見渡した。
「ここから鍵を見つけるのはねぇ……」
散らかり放題な有様で、見るだけでうんざりする。
しかし、博麗の巫女として、こんな怪しい場所を調査しないわけにはいかない。
使命感と言うよりは重圧と言うべきそれが、霊夢を動かした。
こうして、霊夢は散らかった部屋であるかも分からない鍵を探し始めるのだった……。
ようやくぼちぼち主人公が出てきます。
3/26。聖具→聖宝具へ変更