識鏡録 15 アリスの家にて
この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
◆登場人物紹介◆
パチュリー・ノーレッジ
種族:人間族♀。年齢:約1000歳
血統能力:精霊交信。精霊術。
程度の能力:火水木金土日月を操る程度の能力
得意とする霊術:魔術
たまに使う霊術:錬金術、呪術、召喚術
◆痕跡の図書館を管理する大精霊ノーレンジーザの末裔。
『動かない大図書館』にして『七曜の魔女』
吸血鬼の館である紅魔館の地下にある大図書館の館長で、紅魔館の主である吸血鬼レミリアとは親友の仲。
「アリス! アリス! 開けてくれ!」
魔理沙は激しく扉を叩く。
ややあって、洋風な扉が開いた。
「騒がしいわよ魔理沙。少しは落ち着きをもちなさい」
その声と共に顔を出したのは、金髪碧眼の美少女……の操るシャンハイ人形だった。
声は奥から聞こえてくる。
「小言は後にしてくれ! 怪我人がいるんだ!」
奥で物音がして、アリスが姿を現した。
チラリと浮かされているプリシラを見ると、少し横に移動する。
「入って」
外見上はせいぜい二部屋程度に見えるアリスの家だが、内部は亜空増域術式で広げられている。
これはかなり高度な術式で、常時展開出来るのは相当高位の術師だけだ。
アリスの場合は、専用の魔導具を来客時だけ使っているのである。
消費霊力が重すぎるので、人間には常時発動は極めて難しいのだ。
「貴女がどうでも良くない理由で訪ねて来ることがあるなんてね」
「うっ……。おいおい。こういう時くらい皮肉は勘弁してくれのぜ……」
魔理沙は帽子を取って頭を搔く。
「それで、何があったの? これ、プリシラ様よね? 10年くらい前に一度会った切りだけど、よく憶えているわ……」
プリシラの容姿は、一度見れば忘れられない。
もっとも、それはアリスも似たようなものなのだが。
「それが……」
アリスがプリシラをベッドに寝かせている間に、魔理沙はここまでの経緯を掻い摘んで話した。
「何よ、それ……。神世の英雄だなんて……」
アリスも詳しくは知らない。しかし……
「そういえば、たしかそんなことが書かれている本があった気がするわ」
そう言ってアリスはその部屋の本棚を探る。
「あった。これね……」
アリスの指が、【古典:神世の英雄伝】という表紙の前で止まる。
「随分と古い本なのぜ……」
「そうね。ここにあるのは、私の先祖が外からやってくる時に持ってきたものなのよ」
そう言いながら、アリスはパラパラとページを進めていく。
「この本は物語なのだけど……。ん、あったわ。登場人物解説……」
「どれどれ? うへぇ…… 弓神リーヴァルシュネットに救済の女神アロガリンヒェルテ、光神ルミナス……とんでもない名前ばっかりなのぜ……」
そんな中に混じる、三人の英雄の名前。
最古の大勇者レグニス・エルロード
最古の大聖女アルレンシア・キューネヴァル
そして……
最古の大求道者エレイン。
求道者たるエレインだけは名字も姓も持たない。エレインという名すらも、ただの呼び名に過ぎないのだ。
「この物語の最後はどうなってるのぜ? やっぱり死ぬのか?」
「いいえ。最後は三人とも行方不明になるわ」
神々と戦って敗れ、物語はバットエンドを迎える。
大勇者は権能を乱用し過ぎて反動を背負い、大聖女は力の大半を失った。
大求道者は力を得た時点でほとんど全てを失っている。
皆、その後については書かれていない。
それはこの本に限った話ではなく、歴史から姿を消すのだ。レグニスだけは神代に数度の神殺しを行ったと記述する本もあるのだが。
「うーん……。それがなんでこんな所にいるのぜ??」
こんな所とは随分な言い分だが、たしかに幻想郷は辺境だ。偶然とは言い難い。
「何か、面白い話をしているようね」
そう言って、一人の魔術師が部屋へ入ってきた。
「げっ!? パチュリー!?」
「あら、泥棒さんじゃないの。ごきげんよう。ここにも盗みに来たのかしら?」
そうにこやかに、しかし皮肉たっぷりに微笑んだ少女の名はパチュリー・ノーレッジ。
霧の湖のほとりにある吸血鬼の館、紅魔館の地下には大図書館が存在する。
パチュリーはその館長であり、普段は滅多にそこから出てこない。
【動かない大図書館】などという異名すらある程だ。
そのパチュリーが、紅魔館の外にいる。これが驚かずにいられるだろうか。
魔理沙が来る前から亜空増域の魔導具を起動していたのは、彼女が訪ねて来ているからだったのだ。
「盗み?」
「し、失敬なのぜ。ちょっと借りてるだけなのぜ……」
よく紅魔館地下大図書館に忍び込んでは貴重な魔導書を借りパクしている魔理沙は、そっぽを向いてそううそぶいた。
「…………《痕跡の図書館》の一族……か…………」
「!? プリシラ様ッ! お気付きになられたのですね!」
意識はずっとあった。言葉を発せられるようになるのを待っていただけだ。
そう言おうかと思うものの、まだ口を動かすのすら億劫だった。
「……ええ、そうよ。《痕跡の図書館》を管理する大精霊ノーレンジーザが末裔、パチュリー・ノーレッジと申します。エルフの英雄よ、お目にかかれて光栄です」
そう言ってパチュリーは優雅に一礼する。
《痕跡の図書館》または《全知の図書館》あるいは《世界樹の図書館》
呼び名は数あれど、それが示すものはただ一つだけだ。
超越神が一柱、痕跡を司る女神ユグドラシルの体内にあるという、全ての痕跡が納められた図書館。過去の全てが記録された、すなわち全知が納められた神域のことなのだ。
「私のことを……知っている……?」
「もちろんです。痕跡の一族で貴女を知らない者などおりません」
普段は尊大と言うより礼節に無関心な様子のパチュリーだが、しかるべき相手には相応の態度を示す。
魔術師であるが故ではなく、痕跡の一族たるが故である。
エルフ族の祖となった精霊は森と風と知識の精霊である精霊王シルフェンリュードなのだ。
「大求道者エレインについてはどうかしら」
アリスはパチュリーにそう尋ねる。
「残念だけど、私の権限では神世までは閲覧出来ないの。だから詳しくはないわ」
ゆっくり首を振ってそう言ってから、プリシラの方へ向き直る。
「ぜフィリス卿、この件は巫女へ伝えるべきではありませんか?」
「それ程のことなのぜ?」
「裏で何かが動いてる可能性はあるわね。この前人里に行った時、妙な噂を聞いたわ」
「妙な噂?」
「ええ。乳児が行方不明になる事件が何件か起きているらしいわ」
「たしかに気にはなるけど、それって異変と言うより犯罪のたぐいじゃないのぜ?」
「私も最初はそう思ったのだけれど……夜中にあやしていた子がいきなり消えたなんて話もあるわ」
「……ノーレッジ卿。少し調べて欲しい。私は身体が動くようになり次第巫女の所へ行く」
「ぜフィリス卿がそうおっしゃるのであれば。しかし痕跡の図書館は無制限に使えるものではありません。これは貸しになりますよ」
「かまわない」
プリシラがそうまとめ、ひとまずこの話はお開きになった。
まだ、異変かは分からない。
それでも、備えるにこしたことはないだろう。
リニューアルで何処から投稿すればいいのか分からなくなって数日狼狽えていました(笑)