識鏡録 11 光速の魔術師
この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
◆登場人物紹介◆
プリシラ=フィリシス・ユド=ゼフィリス
種族:ダークエルフ(ハイエルフ)年齢:10万歳以上
程度の能力:長生きする程度の能力
得意とする霊術:魔術
たまに使う霊術:呪術
◆怠惰なる努力家。やる気はないが自己研鑽は惜しまない性格。仕えるにたる主君を求めている。
その日、プリシラは数年ぶりに目を覚ました。
「んぁ…………。よく寝た」
《長寿》の個別権能を持つハイエルフである彼女にとって、数年は人間の数時間程度の感覚なのだ。
「ん……」
起きたら何をしようとしていたのかを少し考え、思い出す。
「マドリギダケ……」
魔法の森に稀に生えているマドリギダケを採取しに行こうと思っていたのだ。
2000年前の大戦以後魔法の森に隠棲しているプリシラにとって、今は魔術の研究が生き甲斐だった。
「ついでに魔理沙の様子も見てこよう」
長年の一人暮らしですっかり板についた独り言を呟きながら、プリシラはタンスを開ける。
貴族だった頃の名残りで、外に出る時はそれなりの格好をする癖が付いているのだ。
「これでよし……と……」
そしていざ外に出ようとして、気付く。
「お腹空いた……」
いくら眠っていたとは言え、数年飲まず食わずなのである。《長寿》のおかげでほとんど肉体の劣化が無いので生きてはいるが、それが無ければとっくにミイラだ。
空腹なのも当たり前である。
「ええっと……。パン……パン……」
フラフラと台所に吸い込まれ、寝る前に捏ねておいたパンの種を探す。
「……腐ってる……」
数年も湿気の多い魔法の森に置いてあれば、当然そうなるだろう。
「…………魔理沙に恵んでもらおう…………」
空腹を訴えるお腹を抱え、プリシラは外へ繰り出した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「今日は霧が濃い……」
のんきに独り言を呟きながら、のんびり散歩感覚で魔法の森を歩く。
妖怪の賢者こと八雲紫が住まうという妖怪の森程ではないにせよ、魔法の森もかなり危険なのだが、プリシラにはその限りではない。
「ん……?」
敵意を感じ、やや驚きながら振り返る。
この森に住む妖獣や魔物のほとんどは、プリシラを知っている。
強そうには見えない彼女が、絶対に喧嘩を売ってはいけない相手だと。
現れたのは下位ゴブリンが八匹。
下位ゴブリンの寿命は五年前後。
親が子を教育する時間は無いし、そんな知能もない。
本能を受け継ぐことで対応しているが、それも曖昧なものだ。
「躾の時期かな……」
プリシラはそう呟き、ゆるりと手を持ち上げる。
そんな事せずとも瞬殺出来るのだが、それでは意味が無い。たっぷりと虐めて生きて帰ってもらわなければ、次が来るだけなのだ。
手を持ち上げたのは、加害者が誰かをハッキリと見せつけるためだ。
「ゲヒャヒャヒャヒャ……!」
そうとも知らずにゴブリンどもは下卑た笑みを浮かべる。
美形の多いエルフ。それも黒エルフのハイエルフだ。その稀少性について理解する頭はゴブリンにはないが、美しさは分かるものなのか、性懲りも無くよく襲ってくる。
自分達が加害者側だと疑いもしない無知無能。
無知は罪ではないが害悪であり、無能は有害だ。
「……愚者ども、よくよくその身に刻んでもらうぞ」
プリシラは霊力を活性化させた。
エルフは人類28種族の中でも、下位10種族に入る。
人間よりは優れた種族だが、それでも鬼人族のような上位種族と比べればカタログスペックは低い。
ハイエルフと言えど、まだ超常者の域に達していないプリシラは種族の域を出てはいない。
故にその威圧感は伊吹萃香などと比べれば可愛いものだ。
それでも下位ゴブリン如きにとっては、まさに絶望の威圧感だった。
「ヒヒャッ……!?」
己が選択を間違えたことを悟ったゴブリンどもは慌てて逃げようとするが、あまりにも遅すぎた。
「逃がさない」
白い術陣が刹那のうちに展開され、撃ち出された極細レーザーがゴブリンどもの脚を撃ち抜く。
「ギヒャ……?」
ゴブリン達は不思議だった。痛みは無いが、脚が動かないのである。
「もうキミたちの脚は動かない。腱を切ったから」
そう言ってプリシラはゆっくりと近付いて行く。
「たっぷり虐めてあげる。大丈夫、光魔術は治療も得意だから」
プリシラ=フィリシス・ユド=ゼフィリス。
《光速の魔術師》または《最速の魔術師》
かつての大戦において、数多の怪力乱神を押しのけて最も多くの敵を殺したと讃えられた彼女は、その異名を授けられた。
敵方からは畏怖と憎悪を込めて最多殺人記録保持者とも呼ばれたものだ。
霊力も術力もハイエルフ並でありながら神々と肩を並べた彼女だが、その人生は最初から輝いていたわけではない。
彼女は黒エルフのハイエルフでありながら、光属性の極めて高い適性を有している。
通常、黒エルフが高い適性を示すのは水、闇、氷というところで、白エルフが風、光、電だ。
この適性故に幼い頃は疎外され、心無い言葉を投げかけられもした。
通常王族か皇族にのみにしかありえないはずの産まれながらのハイエルフだったこともあり、それはもう下世話な噂をされたものだった。
それら全てを、プリシラは跳ね除けた。
生まれ持った才と、常軌を逸した努力によって。
「光魔術は戦闘に向かない」
誰もがそう言っていた。それは確かにその通りで、光属性は他の追随を許さぬ弾速の代償として、威力の低さや燃費の悪さなどの様々な問題を抱えているのだ。
ちなみに、無駄に速過ぎる弾速を削って威力と持続力とある程度の弾道自由度を確保したのが一般的な弾幕の正体だ。
しかしプリシラは光属性本来の特徴を極め、全く別の使い方を編み出した。
「私から逃げたいのなら、光より速く動きなさい」
光が拡散してしまうために距離が空けば空く程ゴリゴリ威力が落ちてしまう光属性霊術は、有効射程を伸ばそうとすると消費する霊力量もゴリゴリ増えていく。
普通なら弾速を削るところを、プリシラは光線を殺傷能力を失うギリギリ手前まで収束させることで対応した。
僅か直径0.2ミリの光線。収束させたことで威力は保っているため貫通力はむしろ増しているが、人間ですら直径0.2ミリの穴が身体に空いた程度では滅多に即死には至らない。
だからまず脊髄や腱を貫くことになるのだ。
言うのは簡単だが、直径0.2ミリの光線で脊髄や腱を貫くというのは現実的ではない技量を要求する。
それをやってのけてしまうのがプリシラなのだ。
だが、これは彼女が《光速の魔術師》《最速の魔術師》と呼ばれる理由の半分でしかなかった。
いくら光属性魔術の弾速が速くとも、その術式を構築するのが遅いようでは意味が無い。
故にプリシラは、術式構築の技量を磨き続けて来たのだ。
隠棲生活に入ってからも、それを怠ることはなかった。
弛まぬ研鑽は、彼女の術式構築速度を世界最速に近い域にまで到達させていたのだ。
だからこその光速にして最速である。
「光を見よ。そして刻め。今度こそ末代まで」
属性は全部で12。火水風土光闇時空爆電鋼氷が基本になります。
4/29。白エルフをホワイトエルフからライトエルフへ変更しました。