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「月よりの死者」  作者: 住友貞男
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第1章 四次元から来た大天才

ここに書かれていることは、昔、日本のプロ野球界に実際におきた、重大かつ衝撃的な事件の全貌であります。あまりにも驚愕な出来事のため、当時の、宮嵜コミッショナーから、公式記録上、並びに、歴史上、その、すべてを、抹消するという裁定が下されました。

以上のような経緯を鑑み、登場人物名、地域名、その他を偽名(1部を除く)と、させていただきます

 なお、筆者の森光男は、元新聞記者で、この事件の中心的人物4人のうちの、ひとりです。


 1960年代初頭、日本プロ野球界に、まだ、ドラフト制度が、なかった時代の話であります。

頃は2月、四国高知球場、半神タイガース、春のキャンプ場。ここ、球団事務所の監督室では、本藤監督と吉田スカウト部長が、今シーズンの戦力再検討の、真剣な話し合いをしてます。特に、4番打者を、どうするかが、最大のテーマです。昨シーズンの4番は藤井選手でしたが、12球団最低の4番打者と言われ、また、有名歌手の妻との離婚問題も、世間を大きく騒がせています。

その時、玄関の方から「たのもう、たのもう」という大きな声が聞こえてきた、すぐに、監督が行ってみると、外に、侍姿の男が立っていた。

「何だ!」

「それがしは、徳島県は穴葺村の生まれ、姓は住吉、名は吉兵衛きちべえ廣明と申す、武者修行のため、道場破りをして歩いてる、御道場の師範と勝負させて、いただきたい」

「勝負?」

「剣術の勝負でござる、拙者は、柳生神道無限流の、剣術と柔術の、免許皆伝を授かった者だ」

「ここは、剣の道場では、ないぞ」

「なに、おじけづいたか、さきほど、百姓に、この辺に剣術の道場が、あったはずだが、と聞いたところ、良く分からない様子だったので、大勢の男達が集まって、木の棒を振り回して稽古をしている場所がないか、問うたら、それなら、直ぐそこに、その事務所があるというので、ここまで案内していただいたのでござる、表に半神軍と書かれた、立派な毛筆の看板を、かかげておられる、軍というからには、武士に間違いないと思い、門を叩いたのだ。それに、そこに、丸い形の木刀が、いっぱい立てかけてあるではないか、その木刀は、何という流派の物だ」

「これか?これは、野球に使う、バットという道具だ」

「柳生流ではなく、新しく、ヤキュウ流という流派が出来たのか、 稽古場はどこでござる」

監督は、(俺が下手な説明をするよりも、この男がグラウンドに行って、実際に野球の練習を見れば、野球と剣道とは、まったく違うものだということが、良く分かるだろう)と考え、グラウンドの場所を丁寧に教えてやった。


 しばらくして、グラウンドの観客席に、腰に大小の日本刀を差し、手に木刀を持った、侍男の姿が現れた。選手達は、近所で時代劇の撮影でもあるのかな? と、見ていたが、いつしか、練習に没頭して、その存在を忘れてしまっていた、その間に侍男は、バッティングゲージに行き、左バッターボックスに立ち、木刀を構えていた。何と、観客席からゲージに行くまで、誰にも気付かれず、それは、まるで、忍者のような、素早さだった。

「危ない! すぐに出なさい」と中嶋打撃コーチが、慌てて注意した。

侍男は、

「昔、戦場で、この球よりも、遥かに速く飛んでくる矢を、刀で払っていた」と、答えた。

「早く出ろ!」

「儂は四次元から道場破りにきた者だ」

「ヨジケン? そんな県、あったかな?」

「ヨジケンではなくて、四次元だ」

「ヨジゲン? どこにあるんだ」

侍男は、指で天を差した。

「天にある、という意味か?」

「そういうことで、ござる」

「中嶋コーチ、こいつ、すこし頭がおかしいんじゃないですかね」

「普通じゃないな」

いくら、バッティングゲージから出ろと言っても、侍男は、木刀を構えたまま動かない。

 根負けしたコーチが、

「仕方ない、それでは、あのマシンから飛んでくる球を打たしてやるが、打てなかったら直ぐにゲージから出ろよ」

「マシンと言うのは、あの大きな筒のことだな、よし承知した、拙者も武士のはしくれ、打てなかったら潔く帰る、ただし、儂の打った球が、あの筒の後方にある塀を越えたら、御道場の師範と勝負させていただく」

 中嶋コーチは、師範と言われても、いったい、チームの誰のことを差すのか、まったく思い浮かばなかった。しかし、マシンからのボールの速度は時速140から150キロもある、野球の経験ゼロだと思われる、この侍男に、どう間違っても、ホームランなど打てる訳がないと思い、

「よし、お前が本当に打ったら、師範と勝負させてやる」と、言った。

 すると、侍男が、

「念のため、確認しておくが、昔から道場破りが師範に勝ったら、その道場の看板を持って帰れるという、しきたりがある、お主、そのことは、ご存じであろうな」と、言った。

 中嶋コーチは、(この侍男が本塁打を打つなんて、万にひとつも有り得ないことだが、もし、まぐれにしろ、打たれたら、大変なことになるな、看板のことは、自分の、いちぞんでは決められない、それに、看板と言われても、どこの看板なのかな? 見渡したところ、それらしき物はどこにも、ないんだが?)と、返事に窮してしまった。

 侍男は、痺れを切らし、グラウンドに転がっているボールを、サッと拾って、その重さを確かめ、転がし、軽く上に投げて手の平で受け止めたり、していたが、一旦、ゲージから出て、大小の日本刀を腰から外して、若い選手に預けた。

「刀は武士の魂だ、粗末に扱うではないぞ、大切に持っておれ」と言い聞かせ、再び、バッティングゲージに入ろうとした。

 中嶋コーチが、

「木刀では無理だから」と、バットを渡そうとしたが、

 侍男は、

「その木刀より、自分の木刀の方が、使い慣れてるから」 と、拒否し、左バッターボックスに入り、木刀を上段に構えた。

 マシンから、1球目が飛んで来た、侍男は、ピクリとも動かず、

「思ったより速いな、上段より下段に、構えた方が良いな」と、つぶやいた。

 その、つぶやきが耳に入り、中嶋コーチが、

「上段から下段に、構えを変える理由は何だ」と、問うた。

 侍男は、

「儂は、戦場で、飛んでくる矢を剣で払ってたので、それと比べれば、この球は遥かに速度が遅いので、甘くみていたが、思ったより球の重量があるので、打つ瞬間、少しでも木刀の先が下に向いていると、球の圧力に負けてしまう。だから、最初から木刀を下段に構えて、木刀の先を天に向けといて、打つ瞬間、木刀の先が立つようにしたのだ」

「う―ん」

コーチが、感心するように唸った。

 次の2球目のとき、侍男は、タイミングを計る動作を少ししたが、やはり木刀を振らなかった。

「いま、振らなかったのは、どういう意味だ?」 と、コーチが問うた。

 侍男は、

「あの筒から、何の前触れもなく、とつぜん、球が飛びだしてくるので、振り遅れる危惧があった。それで、初動の感覚を計った、球が飛び出てくる瞬間と、儂の初動との、を、掴んだので、もう、振り遅れる心配は、なくなった」

コーチが、

「ほほー」と、目を丸くした。

3球目も、木刀を振らなかった、

「今は何で振らなかったのだ」と、コーチが、問うた。

侍男は、

「木刀を、球に当てるだけなら簡単なことだが、より強い衝撃を与えるには、全身の力を溜める必要がある、3球目は溜めを作る動作を試行した。初動を早めた分、力を溜め込む時間が充分に取れ、体の割れが出来て、全身の力を球にぶつけられることが確認できた。これで、木刀を振るための準備は、総て完了した。次は木刀を振るぞ」と、言った。

「大した奴だな、本当に野球の経験が、ないのか?」滅多に選手を誉めることのない、中嶋コーチが感嘆した。

「野球と剣道と、共通するところがあるんだろうが、口では何とでも言えるよ」と、投手コーチの、神河が言った。

「いや、只のいちども、バットを振らずに、僅か3球、ボールを、目で追っただけで、ここまで、バッティングのコツをつかめる奴は、どこにも居ない」と、中嶋打撃コーチが反論した。

 侍男は、次の4球目に、初めて、木刀を振った。

≫スパッ≪

 な、な、何と! 丸い西瓜を包丁で切ったときのように、ボールが綺麗に、ふたつになった。

「おい、いつ、木刀から日本刀に替えたんだ?」

「いえっ、木刀のままです」

「いくらなんでも、木刀で硬球が切れる訳ねーだろ」

「それが、切れたんです」

「信じられん、神業だ!」

「コーチ、木刀を、バットに替えさせますか?」

「野球は、ボールを切る競技か? 打つ競技だろう!」

侍男も、今度は素直にバットを受け取ると、珍しそうに、上から見たり、下から眺めたり、手で撫でたり触ったり、叩いたりし、何回か素振りをした後、バッターボックスに入り直した。

その瞬間、中嶋コーチが、

「おい、ちよっと待ってくれ、事務所に監督とスカウト部長が、おられるはずだ、急いでお呼びしてきてくれんか」と、若い選手を事務所に走らせた。


 グラウンドでは、全員が、監督と部長がくるのを、今か今かと、待ち構えていた。

「おい、話は聞いたぞ、どこにいるんだ」

「監督、お忙しいところ、申し訳ありません、侍男は、バッターボックスで、ずーっと、素振りを繰り返しています」

「ここへ、呼んでこい」

「はい」

若い選手が、侍男を、呼びにいき、本藤監督の前まで連れてきた。

その時、吉田スカウト部長が、

「監督、ここは私に任せていただけませんか」と、割って入った。

「そうか、ここは、スカウトの出番だな」と、監督が、一歩譲った。

 スカウト部長が、西村走塁コーチを呼び寄せ、

「マシンを打たせる前に、2、3、テストしてみたいんだが」と、言った。

「はい」

「まず、足を見てみたい、ホームから、ファーストを廻って、セカンドまで走らせてくれ」

「はい」

走塁コーチは、ダイヤモンドの中で、侍男を指導していたが、スカウト部長のところに小走りで戻ってくると。

「部長、あの男、すごいですよ、ベースランニングを教えたら、1回で、完璧にマスターしてしまいました、こんなに、センスの良い奴は初めてです」

「そうか、よーし、テスト開始だ」と、スカウト部長が言った。

西村走塁コーチが、侍男に走塁を指示した、侍男は、草鞋わらじのままで、ホームベースからスタートして、ファーストを蹴って、セカンドへと、全力疾走した、速い! 見ている選手全員が、息をのんだ。

「マスコミは居ないだろうな」と、スカウト部長が、あわてて周囲を見渡した。

「半神スポーツ新聞の記者が、ひとりだけです」

「よし分かった! 次はサードの守備に、つかせてくれないか」

「ハイ」

山田守備コーチが、ダイヤモンド内で、侍男と話した後、戻ってきた。

「グローブを渡したんですが、俺の手は鍛えられてる、そんな手袋を付ける程、柔ではない、素手で充分だ、と言うんです」

「木刀の素振りで、手の平が鍛えられてるから、大丈夫なのかも知れんな、よし、ノックを始めてくれ、ゴロの捕球だけで良い、ファーストへの送球はいらないぞ」

侍男は、最初、戸惑っていたが、剣術で身に染みついている摺り足と、ボ―ルの弾みとが、徐々に一体化して、プロの名人クラス以上の、捕球をみせ始めた、他の選手達は、只々、ぼうぜんと見ていた。

「よし、ピッチングを、させてみよう」と部長が言った。

投手コーチが。

「剣術で、木刀の扱いに慣れているだろうから、バットの操作は上手く出来るかも知れんが、野球のボールを生まれて初めて触った人間に、ピッチングは無理でしょう」と言った。

「とにかく、投げさせてみてくれ」と、部長の一声。

ブルペンに立った男は、投手板は、もちろんのこと、他のことも、なにひとつ分からず、投手コーチから、ピッチングの基本的なことを教わり、最初は、戸惑いながら、ぎこちなく、山なりのボールを投げていたが、段々と、プロのトップクラスのスピードに近づいて行った。

吉田部長が、

「監督、こいつの素質は、プロの選手の中に入っても、超一流! 足の速さは、直ぐにでも、代走で使えます」と報告。

監督が、大きく頷き。

「よーし、マシンと勝負だ!」と、大声で言った。


 侍男は、左バッターボックスに入り、ゆったりとした動作で下段に構えた、マシンから、うなりを上げてボールが迫ってきた。

≫一閃≪

打ったボールは、外野のフェンスを、軽々と越えた。ホームランだ!

侍男が大声で、

「約束だ、師範と勝負させろ!」と、叫んだ。

監督が、

「師範と勝負させるが、勝ち負けの判定は、どうやって決めるんだ?」

侍男は、

「マシンとの勝負と同じだ、儂の打球があの塀を越えたら、看板をいただく」

監督が、

「よし、分かった」と、言い、

「村川投手を呼べ」と、コーチに指示した。

投手コーチが、

「監督、いきなりエースを、使うんですか?」と、聞いた。

「当たり前だ、師範というのは、1番強い奴という意味だろう、師範と勝負させると、約束したからには、エースを投げさせなければ、奴を騙したことになる、それに、もし、ホームランを打たれたら、半神軍の看板を、持っていかれてしまうんだぞ!」

「看板て、どこの看板ですか?」

「球団事務所の入り口に掲ってる、(半神軍)と書いた看板だ、亡き初代社長が、お書きになられた、球団の宝物だ」

「監督、村川が、肩を作る時間を下さい、と、言ってますが」

「至極当然の要求だな、あわてずにゆっくりと、肩を作るように、村川に言ってくれ、俺は、ダッグアウトで待つ」

「はい」


 監督は、ダッグアウトのベンチに、ドカッと座ると、周りを囲んでいる選手達に、

「半神スポーツ新聞の記者を、呼んできてくれんか」と、言った。

「はい」

すぐに記者がやってきた。

周りの選手には、その場を引き払って貰った。

監督が、

「お前、ずっと、見てたのか」と、記者に聞いた。

「はい、一部始終を、見させていただきました。写真も、たくさん撮らせていただきました」

「どうする気だ」

「勿論、明日の1面狙いです」

「それは、絶対に駄目だ」

「大特ダネです! この男は大天才です! 侍姿といい、球界全体が、騒然となること、請け合いです」

「だから、困るんだ、この選手は、何が何でも、絶対に、タイガースに欲しい選手だ、お前が記事にしたら、他の球団に知られてしまう、極秘で、半神が契約したいんだ」

「監督の、御気持ちは、痛い程、分かりますが、新聞記者にとって、特ダネは、命と同じくらい大切なものです!」

「よし、今日のことを、黙っていてくれたら、お前の望みは何でも叶えてやる、高額なものでも何でも良いぞ、金は、半神球団から、いくらでも出させるから、何なりと言ってくれ」

「特別欲しい物はありません」

「侍男の、単独インタビューを、させてやるが、どうだ」

「インタビューは、魅力ですが、私は、明日の朝刊に、すべてを賭けます」

「困ったな」

「記事の、〆切時間も迫ってるので、これで失礼します」

「お前、ひとり身か?」

「ハイ、そうですが」

「嫁さんが、欲しくないか?」

「今のところは」

「どんなところに、住んでる」

「マンションですが」

「持ち家か?」

「賃貸です」

「持ち家が、欲しいか?」

「まあ、いずれ結婚したら、分譲マンションでも、購入しょうかなと、漠然と考えているくらいですね」

「よしそれで行こう、お前に、プレゼントする、独身で、分譲マンションだ、あの男のことは忘れろ」

「それは、困ります」

「お前だって、半神タイガースに、強くなってもらいたいだろう」

「それとこれとは、話が別です」

「大丈夫だ、俺にまかせておけ、悪いようにはしない」

「〆切時間が迫ってるので、記事を本社に送ります」

「よし! 本社へ記事を送って良いぞ、その代わり、お前、明日から、出入禁止だ!」

「えー、そんな!」

「球団社長から、お前のところの社長に連絡して、担当記者を、かえてもらう」

「分かりましたよ、分かりました」

「ありがとう、やっと、分かってくれたか」

「分かってませんが、監督から、出入禁止と言われちゃ、どうしようもないです」

「申し訳ない、おわびに、奴との、単独インタビューの場を設ける」

「その、インタビューの記事は、すぐに新聞に載せて良いんですか?」

「すまん、奴が、タイガースと、正式に契約するまで待ってくれ、この通りだ」と、監督が、記者に向かって拝んだ。

そのとき、

「監督、村川の肩の準備が出来ました」と、連絡がきた。


 監督が、グラウンドに行くと、コーチ以下、半神タイガースの、全員が集まっていた。

始める前に、監督と村川が、侍男との勝負に、変化球を使うかどうか、話しあった。

「素人相手に、エースの私が、変化球を使わなければ、抑えられなかった、とは、言われたくないです」、村川の一言で、ストレートのみで勝負することになった。


 勝負は開始された、さすがに、エースのボールは、マシンからの、ただ速いだけの、棒球とは違い、投手の手の平を離れ、指の付け根あたりから回転しはじめたボールは、指先までいくと、瞬間、しなやかになめらかにスナップが効いた見事な回転が、かかり、放たれたボールは、バッタ―の近くで、グーンとホップ、侍男のバットは、かすりもしなかった、しかし、慣れてくると、徐々に安打性の鋭い打球が出だした。

監督が、大声で、村川投手を呼びよせ、

「このままだと、大切な事務所の看板を、持っていかれてしまうぞ」と、喝を入れる、

村川も、事前に、看板のことは、聞かされていたので。

「分かりました」と、顔を引きつらせた。

エースは、ここで、プライドを、かなぐり捨て、変化球を投げることにした。

伝家の宝刀、フォークボールは封印し、カーブを使った、最初、侍男のバットは空を切ったが、数球で通用しなくなった。直球とカーブとの緩急も、慣れてくると簡単に打ちこなされてしまう、スライダーもシュートも、結局は通用しなかった。

村川は、封印していた日本一のフォークを使うことにした、もう、日本のエース、村川も必死だ、素人を相手に、鬼の形相になった。

大リーガーのバッター達が手も足も出なかった、世界ナンバーワンと言っても過言ではないフォークボールだけに、さすがの侍男も、まったく打てない。

フォークだけを続けてみたら、5、6球目くらいから、バットに当たるようになってきたので、速いストレートを混ぜた、その緩急の差に、どちらのボールにもタイミングが合わず、数球、空振りが続き、やっと、ヒット性の当たりが、出始めた。

やがて、外野フェンス直撃の、物凄いライナーが、7、8本、連続で出たところで、侍男が、そっと、バットを地面に置いた。

監督は、侍男の行動に、とまどった。フェンス直撃の強烈な打球が数本、連続で出たのだから、勝ち負けの条件の本塁打は出なかったものの、エースの負けは確かだった、侍男から、看板を要求されたら、潔く渡すしかないのかな? と、心中、迷った。ところが、侍男は、何を思ったのか、その場で、土下座をし、エースに向かって、「まいった」と、頭を下げた。

訳を聞くと、

「良い当たりが続いたが、1本も塀を越えなかった、拙者の負けだ」

武士らしい、みごとな進退だった。


 半神スポーツの森記者が、監督に向かって、オドオドと聞いた、

「あのー、単独インタビューの件は、どうなりますか?」

「よし、お前に、全面的に任すから、この男の謎の部分を、洗いざらい浮き彫りにしてくれ、インタビューを受けてくれるように、俺が頼んでやる」


 球団事務所の応接室で、初めてのインタビューが、ふたりだけで始まった。

「よろしくお願い致します。私は、半神スポーツ新聞の記者で、森光男という者です」

「拙者、住吉吉兵衛廣明と申す、吉兵衛きちべえと呼んで下され」

「有難うございます、先程は、もう少しで塀越えという打球が、数本続きましたね、本当に残念でした」

「実は、そのことだがな」

「えっ」

「これは、お主と儂だけの、秘密にしてくれ」

「は、はい」

「あれは、斟酌(手加減)したんじゃよ」

「えっ?」

「あまりにも、師範が、必死の形相で、投げてくるので、惻隠の情(同情心)が沸いてな、それで、打球が外野席に入らないように、塀に直撃させたんじゃ」

「それは、びっくり、です」

「誰にも言うなよ、お主だけの胸に、しまっておいてくれ」

「分かりました、約束します」

「くれぐれも、頼むぞ」

「はい、承知しました。絶対に喋りません安心して下さい。

それでは、改めてご質問させて頂きますが、お生まれはどちらですか」

「徳島県の、穴葺村で、ござる」

「お歳は」

「拙者は、前世の27歳時の設定で、この世にきておる」

「えっ? どういうことですか?」

「だから、今は、自分の希望で、生きてたときの27歳の設定で、この世にきておる」

「分かりません?」

「あっそうか、すまんすまん、拙者が悪かった。最初から、ちゃんと説明しないと、お主には分からんな」

「申し訳ありませんが、まったく、意味が分かりません、よろしくお願い致します」

「分かり安く言うとだな、拙者は、閻魔大王様に許されて、1年間の期間限定で、四次元界の、あの世から、三次元界の、この世にきておる、と、いうわけだ」

「その話、本当の話なんですか?」

「儂は、嘘などつかんよ」

「なんで、許されたんですか?」

「ごほうびだ」

「何の、ごほうびですか?」

「閻魔大王補佐様が、おっしゃるには、住吉家の子孫が、現世で、何か特別な善行をしたらしい、そのご褒美で、住吉家の先祖の中から、ひとりを、ということで、住吉家から4人が呼ばれ、試験を受けたのだ」

「試験?」

「さよう、試験でござる、4人共、前世の15才時の肉体を与えられてな、アイキュウとかいう検査と、背筋力の検査を受けた」

「頭脳明晰で体の頑丈な者を選ぶ、と、いうことなんでしょうかね? 15才時の肉体、というのは、どんな意味ですか?」

「儂には、分からん、分らんが、勝手に思うには、生まれ持ってる素のままの能力を知りたい、と、いうことではないのかな? 素といっても、12、3歳では、頭も体も幼過ぎるということかも知れん、なにはともあれ、試験の結果、アイキュウ185、背筋力185、の儂が選ばれた、必要なだけの生活費・宿泊代・その他を、閻魔大王様より賜って、1年間だけ、下界に下りることを許された、という訳だ」

「でも、本当に本当ですか、まさか、吉兵衛さんの作り話じゃないでしょうね?」

「疑るなら、話は止めるぞ」

「すみません、すみません、申し訳ありません、真面目に聞きます」

「約束するか」

「真に、申し訳ありません、何卒、宜しくお願い致します」

「そうか、それほど言うなら、話を続けてあげても良いがな......」

「よろしく、お願い致します」

「そなた、先ほど、シンブンとか言っておられたが、儂には、何のことなのか分らんのだが?」

「そうですね、江戸時代の物で似たものと言えば、瓦版ですね」

「瓦版か、それなら分かる」

「そうですか、良かった」

「ちよっと待て、まさか、儂の話を、その瓦版に載せる訳ではないだろうな?」

「それは、吉兵衛さん次第です、吉兵衛さんが、駄目だと言えば、載せません。御許可を下されば、載せます、吉兵衛さんに無断で載せる事は、絶対にないです」

「良し分かった、次の質問は何だ」

「あの世では、閻魔大王様が、1番お偉い御方なのですか?」

「いゃ、そうではない、大王様は四次元界では、お偉い御方だが、まだ上に、五次元界、六次元界が、あり、更に、その上には、七次元界が、おあしまする」

「そうなんですか、我々人間が、架空の世界と思っているものが、架空ではなく、そういう世界が実在するんだ、ということなんですね?」

「そういうことだ」

「驚きです!」

「大王補佐様が、(お前は、前世の、何歳頃の姿で、現界に降りたいか)と、お聞き申されたので、それがし、前世の27歳時に、武者修行の目的で、四国全県の剣術道場の、道場破りをして歩いたことがあります、その頃の自分に戻って、もう一度、道場破りをしながら四国中を歩いてみたいです、とお願いしたんじゃ」

「そうですか、良く分かりました。たいへん貴重なお話を、お聞かせ下さいまして、まことに、ありがとうございました。それでは、その、前世での道場破りの件を、もう少し詳しく、お聞きしてもよろしいでしょうか」

「構わんが」

「道場破りの試合は、やはり、防具とか竹刀を、使うのですか?」

「何だ?ボウグとかシナイとか?聞いたことがない言葉だな?剣術に、ボウグとかシナイなどというものはないが、それは、どんなものだ?」

「えっ、昔は、なかったんですか?」

「剣術の、稽古も仕合も平服で行い、木刀と日本刀以外には、なにもない」

「そーなんですか、初めて知りました」

「当時、天下泰平で、平穏な時代では、あったが、それでも、剣を稽古する目的は、いざ合戦という時に備えて、戦場で戦うための準備でやる、それ以外の目的は、何もない。稽古は、刃引きした日本刀で、寸止めだったが、刃引きしていても、ときには誤って稽古で命を落とす者が出るので、木刀が考案されたのだが、最初の頃は、真剣よりも遥かに軽い木刀なんぞで稽古していて、いざ合戦という折に、戦場で日本刀を振り回すことが出来るのか、という声が多く、木刀を使うのは、軟弱者のすることだ、と言って、刃引きの日本刀を使って、稽古をする者のほうが多かったが、ときが経つにつれ、段々と木刀を使う人間が増えて行き、事故は大幅に減ったな」

「そうですか、そういうことなんですか」

「わしは、ボウグとかシナイなどというものは、聞いたことも見たことも、ないぞ」

「よーく分かりました、大変に失礼なことを、お聞きしてしまいました」

「分かって下されば、それで良ろしい」

「道場破りの結果は、いかがでしたか?」

「四国の道場を全部廻って、すべて破った、全勝だ」

「うわー凄い、本当に、強かったんですね」

「当たり前だ、剣の術に絶対の自信があったのは、もちろんのことだが、絶対に勝つ、という精神力が、どんな相手よりも、遥かに旺盛だった」

「全道場の看板を、持って来たんですか?」

「最初から、それが目的だからな、それと、道場破りと仕合して、もし、師範が負けたら、何がしかの金銭を包んで差し出す、という、しきたりがある、武士として、男らしく負けを認める、という潔さを表したものだ」

「相手が、吉兵衛さんとの試合を、断ってきたらどうなるんですか」

「戦わずして負けを認めた、ということだから、看板は、いただいて帰る」

「貴重なお話を、ありがとうございました。それでは、次に、あの世のお話を、お聞かせ願いたいんですが、よろしいでしょうか?」

「良いが、話せんことのほうが、多いぞ」

「はい、分かりました。それでは、早速質問させていただきます」

「待て、あの世のことを、瓦版に載せてはいかんぞ」

「吉兵衛さんの、御許可がなければ、載せることは出来ません」

「それなら、良いが、質問は、なんじゃ」

「四次元界は、広い宇宙の、どこにあるんですか?」

「それだけは、駄目だ!教えられん」

「是非共、教えていただきたいのですが」

「瓦版に載せられたら、儂の魂は消されて、宇宙空間のチリとされてしまう」

「絶対に載せません、他言もしません、私を、信用して下さい」

「お主は、信用出来る人物だと、感じてるが、命よりも大切な、魂が、かかってるからな」

「おねがいします」

「いや、絶対に駄目だ!」

「私を、信じて下さい」

「駄目だ、忘れてくれ」

「絶対に、私の胸の中だけに、おさめます」

「諦めろ」

「死ぬまで、一切、誰にも話しません」

「しつこい奴だな、絶対に駄目だ!」

「是非共、教えて下さい」

「いや、駄目なものは駄目だ」

「私も命をかけます」

「仕様がない奴だな、仕方ない、お主を信じて教えるが、絶対に絶対に、秘密だぞ! 今まで、口に、出したことは、一度も、なかったのだからな、四次元界は......、四次元界は......、実は、月にあるんだ」

「えっ、月? 月って、あの、お月様ですか?」

「ああ、そうなんだよ」

「人間、死んだら、魂は月に行くんですか?」

「さようでござる」

「うぇー、驚いた」

「拙者も、初めて聞いた時は、本当に、驚いたでござるよ」

「察するに、五次元界は、火星とか、木星とか、ですか?」

「いや、それは、全然わからん、五次元界から上は、神様の住む世界だからな、我々には、まったく、見当もつかない」

「凄いですねぇー、何か、壮大な物語を、聞いているようです」

「いや、まだまだ、話は続くんだ」

「あのー」

「何だ」

「野球の話に、戻しても、良いですか?」

「ヤキュウって、ヤキュウ流剣術のことか?」

「ハイ」

「別に良いけど、何だ、お主は、そのためにきたのか?」

「1番の目的は、それです」

「儂は、ヤキュウ流剣術に関しては、特別、何も話すことなど、ないぞ」

「吉兵衛さん、どうしても、1年間だけで、四次元界に、お戻りになられてしまうのですか?」

「ああ、閻魔大王様との、大切な御約束だからな」

「吉兵衛さんの、天才的才能なら、野球で大変な御活躍が期待出来るのですが」

「儂は、柳生流もヤキュウ流も、同じ剣術だと思っている、飛んでくる矢を剣で払う、矢を敵に命中させる、戦場で走る、敵に石を投げる、場合によっては逃げる相手を捕まえに行く、そして、毎日おこなう木刀の素振り、両者、まったく同じものだ、道場破りでの武者修行も、ヤキュウ流での武者修行も、まったくもって、違いはない」

「吉兵衛さん、道場破りで、四国中を、まわる代わりに、1年間、野球をやりませんか」

「今年1年間は、何をしても自由じゃから、儂としては、なんら、差支えはない、しかし、この世の者でない、本来、死んでる者が、正式な仕合などに出ることが、許していただけるのか?」

「吉兵衛さんには、戸籍がないので、色々と、越えなければならない壁が、あると思われますが、本藤監督さんには、吉兵衛さんのお気持ちを、そのまま、ご報告させていただきます。契約出来る可能性があるかどうかも不明ですが、契約出来るとなれば、相当な契約金と年俸が御用意されるかも知れませんよ」

「何だ、その契約金とか年俸というのは?」

「吉兵衛さんが、たくさんの金銭を貰えるという話です」

「あの世は、銭の存在しない世界で、銭は何の価値もない、契約金も年俸も要らない」

「そうですか、分かりました。そのことも監督に御報告させていただきます。申し訳ありません」

インタビューが、終わった。


 森記者は、インタビュー終了後、監督室に入った。

記者からの、詳しい報告を聞いた本藤監督は、厳しい顔で長考していたが、

開口一番、

「よし、覆面選手で行こう!」と言った。

「えっ、覆面選手? 覆面を被るんですか? 監督、素晴らしい、グッドアイデアです!」

「登録選手名は、覆面太郎でいこう。覆面選手への、マスコミからの、インタビューは、1年間、一切、すべて、禁止する。1年間、謎のまま、その正体を、隠し通す」

「本当ですか、いゃー、是非共、インタビューを、禁止にして下さい、宜しくお願いします」

「よし、森さん、明日、タイガース球団社長に、ふたりで、相談に行こう」

「えっ、明日ですか?」

「仕事の方は、都合つくか?」

「上司には、球団事務所に取材に行くと報告すれば、許可が下りると思います」

「よし、いま、荒川社長に電話してみる」

社長からは、午後早めなら空いてる、楽しみに、待ってますとの、ご返事をいただいた。


 翌日、大阪の球団事務所には、午後1時頃に着いた。

「荒川社長、突然で申し訳ありません。お時間を、お空けいただいて、まことに、ありがとうございます」

「本藤監督さん、遠いところから、ご足労なことでしたね」

「とんでもない社長、お忙しい中、ご迷惑では、なかったですか?」

「いや、私も、是非、監督さんにお会いして、お聞きしたいことがあったんですよ」

「どんなことでしょうか?」

「侍男のことですよ」

「えっ! 社長が、何で御存じなんですか?」

「スカウト部長から、お電話をいただきました。百戦錬磨の部長でも、いままで見たことのない、素晴らしい才能の持ち主らしいですね、実際にプレーを見てみたいですが、どんなに凄いかは、話を聞いただけで分かりました。あっ、この話は、私以外は、誰も知りませんよ、部長から、厳重に口止めされてますから」

「そ、そ、そうですか、安心しました。私も、御相談させていただきたいのは、そのことなんです」

「それでは、早速ですが、お話を、お聞きしましょう」

「実は......」

 本藤監督と、森記者は、住吉吉兵衛のことを、洗いざらい、荒川社長に、お話しした。

社長は、すべてを聞き終わると、珈琲カップを手に、窓際迄行き、しばらくの間、外を眺めていたが、こちらへ背をむけたまま、ふたりにも、自分にも、言い聞かせるように、

「無理だな、絶対に無理だ、出来るわけがない、相手は、戸籍の無い、あの世の人間だ、覆面を、かぶったところで、いつまでも隠し通せる筈がないし、本当に残念だけど」と仰った。

「どうしても駄目ですか、私達も、99%無理だろうなと、思ってはいたのですが」

「だが、しかし、そんな偉大な才能を、このまま、簡単に消し去って良いのか? という疑問とか、罪悪感とかは残る!」

「こんな選手は、もう、2度と出てこないと、断言出来ます」

「我々の出来ることは、2つに1つだ。1つは、このまま、住吉の存在を、我々の記憶から完全に消し去ること。あと1つは、自分らの人生を犠牲にする覚悟で、この素晴らしい才能を世に送り出すか、どちらか1つを選ぶしかない」

「社長、どうしても、我々の人生を、犠牲に、しなければ駄目ですか?」

「本来、死んでる筈の人間を、正体を隠し、偽って、デビューさせるんだから、我々が無事で済む分けがないだろう」

「それは、そうですが」

「ただし、出来るだけ、我々の犠牲を少なくする、ということは、可能だと思う」

「それは、どういうことですか?」

「金銭的な不正は、絶対に、しないということだ」

「森記者も私も、それは、大丈夫ですが」

「金銭的な不正が、なければ、比較的、軽い罰則で済むような気がするんですが......」


 ここで、一旦、休憩とし、本藤監督と森記者は社長室を出て、近所の喫茶店で、ふたりだけで話し合った。その結論を持って、社長室に戻った。


「社長、ふたりで話し合いました」

「それで?」

「何があろうが、住吉選手の天才的プレーを、世に送り出すことを優先しょうと、決断しました」

「よし、決まりだ!」

「よろしく、お願い致します」

「それでは、善は急げ、早速ですが、まず、監督さんが、住吉を、ここへ連れてきて下さい。球団職員は、ひとりも社長室に入れずに、住吉と監督と私だけで、入団契約書を交わした振りをしましょう。住吉には、必ず覆面をしてくるようにと、言っておいて下さいお願いします」

「社長、ご心配なく、昨日、覆面を購入しまして、住吉に渡してあります。すでに、覆面を被って生活してます」

「そうですか、ありがとうございます」

「いえ」

「それと、契約成立後の行動ですが、3人で、職員達の居る事務室に行き、球団職員を集めて、いま、覆面選手と契約を交わした、と報告をする、契約書は、厳重に私の金庫へ入れてある、覆面太郎として、1年間通すので、本名が洩れると困る、球団職員の皆様にも契約書は見せられません、と説明する。覆面太郎本人の、たっての希望で契約金も年俸も、ゼロですと、職員全員に周知する」

「社長、それなら、住吉の正体は、バレませんね」

「住吉本人が、 (あの世は、銭の存在しない世界で、銭は何の価値もない、契約金も年俸も要らない)と言っているのだから、球団の持ち出しは、1円たりともない、球団の出費はゼロだ」

「社長の仰る通りですね、あとあとのことを考えたら、それが、1番良いと、私も思います」

「住吉は、チームの皆とは、宿舎を別にして、ひとりで宿を取ってもらう、もし、架空の名では、宿が取れないとなったら、監督と森さんで、何とかしてあげて下さい。試合と練習以外の時間は、他の選手と別行動にする、1年間の宿代と生活費は、住吉が、閻魔大王様から、いただいてる分だけで払って貰う、球団からは、1円たりとも出さない。もし、どうしても不足が出たら、本藤監督が個人的に経済的援助をしてあげて下さい、私の、ポケットマネーで出したいところだが、つまらない疑惑を持たれると困る」

「はい、喜んで、援助させていただきます」

「今シーズン限りで、住吉は引退、球団社長の私も引退で居なくなる、住吉に、球団からは1円たりとも渡してない、何か、法律に触れる問題も出てくるかも知れないが、金の面で不正なし、大きな罪には、ならないだろうなと思います。契約書は紛失してしまったということにするか、或いは、口約束で契約した、ということにして逃げる、民法で、口約束も法律上、契約は成立することになっているんだ、もし、覆面太郎の本名を聞かれたら、忘れてしまったと言い通す」

「社長、大丈夫ですかね?」

「何かあったら、私が、責任取らして貰います」

「申し訳ありません」

「これで、本名は謎のままだ、未来永劫、覆面太郎のままだ、住吉が、あの世から来たという証拠は、何も残らない、そして、この世の誰かなのか? という痕跡もない、キャンプの時に素顔の住吉を見た選手やコーチが、マスコミに喋ったところで、証拠は何もない、素顔の写真も、森記者しか撮ってないから、問題ない、一件落着だ! やり方が、強引で乱暴だけど、このくらい、やらないと、あの世の者を、プロ野球にデビューさせることなど出来ない、あとは野となれ山となれだ、私は腹を、くくったよ」

「社長、ありがとうございます。写真は、森記者に、すべて処分させます」

「はい、森光男、責任持って処分します、1枚も残しません」

「住吉の正体は、私と、監督と、森記者と、3人だけの秘密にする」

「分かりました」

「男同士の約束だ!」

「はい!」

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