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ラブコメにならない  作者: 金子文誉
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「あなた方の愛のレクイエムを奏でてあげましょう!」

 名ばかりの部室には不釣り合いの、校長が使用していそうな重厚な机にためらいもなく片足を乗せ、ガッツポーズをしながら、渋面な下級生二人に法流院愛ほうるいんあいはエールを送った。

「「いえ、死んでませんけど」」

 ツッコミが弱々しい。北五十里賢治と中屋敷まどかにとって、彼女がそう親しくはない先輩であるから遠慮した、という理由以外にはない。ではあるが、それ以上に、

「先輩、俺たちの恋愛はネタですか」

「私は……そんな面白いことはないですけど」

 二人にとっては、この先輩が示した提案の方を憂うべきであった。

「ネタというわけではない。観察させてほしいと言っている。面白いかどうかは君たちの恋愛ではなく、君たちが引き起こす現象だ。だから、君たちのプライバシーや権利を損なうような表現はしない」

この高校の非公認部活動団体・ラブコメ研究会所長の法流院愛は、とある少女マンガ公募で三位になった作家である。デビュー作『ラブコメまっしぐら』は一〇万部売れた。売れたのだが、評の多くは「恋愛ものと言えるが、ラブコメではない」という趣旨で、次回作を編集部から「コメ成分をもっと多めに」と注文を付けられていた。

「学校での作業場がここというわけ」

 そこは理科系の科目の実験等を行う棟のほとんど使われてない準備室の一室で、もう内装は学校の趣が皆無で、完全に漫画家の作業部屋である。しかも、この団体には法流院しかおらず、全くの私的機関である。いきさつの一つに、団体名を恋愛向上委員会にしようとしたら

「編集部からストップがかかった、法的対応によって」

 作家として著作権についてもっと知っておくべきだろう。

「どうせなら恋愛ラボでいいんじゃない?」

 中屋敷が調子に乗って今まさに著作権が云々と言っているのに、そんなことを言い出すものだから、思わず

「恋愛ラブホ? 出版社に怒られるだろ」

 法流院はペンタブをかざしながら、ツッコんだ。いや、ボケたのだろう。

「いや著者にだろ」

 冷静に訂正させたのは北五十里である。そもそも二人にはラブコメに加担できる要素もなければ、二人が互いに思いあっているわけではない。ただ、二人が出会ったことによってでしかない事情が加速し始めたのは確かである。


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