表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐の魂  作者: 米木パン
4/22

第3話:殺戮

「おぉ、無事だったか! ニエルッ!」


 かつての仲間達が、彼へと駆け寄っていく。

 ニエルの手に、剣が握られている事に何の疑念も抱かぬままに。


(やめろ……やめろ……ッッ!)


 ニエルのそんな心からの叫びは脳には届かなかった。

 脳はただ、あの黒い板から発せられる命令を、体に送りつけた。


 【剣を振れ】と。


 その時、かつての仲間達の首は、瞬時に切断された。一切の抵抗も許さず、ほんの刹那の内に。


「な……なぜ…………。」


 仲間はそう呟きながら、ボトッ、と首を落とし、息絶えた。


(クソッ……クソォォォッッ!)


 ニエルの悲しみの叫びも、言葉になる事は、無かった。

 その後も、彼は仲間達を斬り伏せて行き、遂に、彼がかつて戻る事を最も望んでいた場所。そして、今は最も望まぬ場所に、辿り着いてしまった。


「ニエル……ッ! 無事だったのね!」


 妻がニエルに駆け寄った。そして、彼に飛び込むように、抱き着いてしまった。


(あ……アアアァァァァァァッッッ!?)


 ニエルにとっては、それが何よりも辛かった。彼が求めて止まなかった温かみ、それを自分の手で潰えさせてしまう事が。


「……? どうしたの、ニエル?」


 テファルは彼を心配そうに眺めていた。

 その時、ニエルの頭に指令が入った。【殺せ】と。


 ニエルは手に握っている剣を、逆手に持ち替えテファルの首に突き刺した。


「ニエ……ル……?」


 目を見開き、口から血を吐いて倒れていく妻を抱き止めることすら、彼には出来なかった。


(う……ウアァァァァァァァッッッ!)


 彼の心は悲しみの絶叫を挙げ、やがて、意思を保つ事を、忘れた。


ーーー


 ニエルの視点を映しているモニターを眺めながら、一人の少年が無邪気にニエルを動かしていた。


「アハハッ、博士! ねぇねぇ、今の状況で、ここを押したらどうなるの?」


 その少年が、黒い板の赤いスイッチを指し示す。それを見て、博士がニッコリと笑った。


「ウヒヒッ、そこを押すと悪い人が殺せるんだ。良いか? そのボタンを押して、悪い人を倒すのが、世の中の為になるんだ。ウヒヒヒヒッ!」


「うん、分かった! じゃぁ、どんどん倒して行っちゃおうッ!」


 赤いスイッチを押すと、ニエルが剣を振り、モニターに映っている獣人が斬られて死んでいく。


「おぉ、凄い! 上手いよ君は……。流石、指揮官殿の息子だねぇ。」


「エヘヘヘ……そうかなぁ? よーし! もっと頑張るぞ! これが世の中の為だもんね!」


 博士が適度に褒め、操作を教えていく事で、少年の技術はどんどん向上した。


 そして、それはつまり、ニエルが殺す獣人がどんどん増えるという事だった。


「イヒヒヒヒ……あ、あそこを見るんだ。獣人の子供が居るだろう? ほら、大人に抱きかかえられているあの子だ。」


 少年は、大きく頷いた。


「うん、見えるよ!」


「獣人の子供は積極的に殺すんだ。すると、もっと世の中の為になるんだよ。ウヒヒヒッ!」


「そうなの?」


「あぁ、普通の獣人を殺してもボーナスは1ポイント。でも、獣人の子供を殺したら5ポイントのボーナスだ! どうだい? 凄さが分かったかな〜?」


「すっごーい! それならもっと早く知れば良かったなぁ……。よし、次からはどんどん殺して行っちゃおう!」


「うんうん、偉いねぇ。きっと君は良い子になるよぉ。ウヒヒヒッ!」


「うん、ありがとうおじちゃん!」


 この悪夢の様な戦争は、人間の圧勝という形で終わった。

 ニエルという存在を自由に動かせた人間にとって、最早獣人は敵ではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ