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復讐の魂  作者: 米木パン
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第19話:ニエル①

 天井でウィーンと音が鳴る。

 自動ドアのように壁が仕舞っていき、空いた穴が閉ざされた。


「戦うしか、ない!」


 エルホープは立ち上がり、左手で剣を持つ。


 2人は同時に地面を蹴り、相手に接近した。速度は、僅かにエルホープが上回っている。


 先手を取り、抜け殻の頭に剣を振り下ろす。

 しかし、それが当たることはなく、相手の剣によって弾かれた。

 エルホープの体が、弾かれた剣に引っ張られ、態勢が崩れる。その隙にまた足が腹に刺さり、彼の体が宙に浮く。


「うぐッ!」


 その衝撃で、一瞬エルホープの意識が朦朧とする。

 その隙にエルホープを斬ろうと、抜け殻が剣を振り下ろす。


『させるかッ!』


 エルホープの体に憑依し、剣を盾のようにして受けた。しかし、圧倒的に力で負けており、彼の体は地面に叩きつけられた。

 抜け殻は一旦剣を引いて戻し、胸に向かって突きを放つ。


『チィッ!』


 右手でドンと、地面を押し体を横に移動させた。突きは胸からは外れ、右肩の肉を削いだ。


「あ、ありがとう父さん。もう大丈夫だよ!」


 エルホープの意識は戻り、ニエルは憑依を止めた。


『しかし、依然危険なことには変わりない。右手が無事なら私の肉体に勝てるほどの力はあるだろうが……』


「大丈夫。肉体はお父さんでも、それを動かしているのは機械か何かなんだ。そこに僕の勝機がある!」


 抜け殻を睨み、剣を構える。

そこから約10分程度、奴の攻撃を躱すことに専念した。

 そして……。


「距離を取れば接近して突きを放つ。僕が横に躱せば剣を薙いでくる。それすらも躱されたら一旦離れて態勢を整える」


 抜け殻はエルホープの言葉通りに動いている。彼は抜け殻の中に居る人工知能の全てを理解した。


「やっぱりだ。自動機能によって戦況の最適解を選んでいるだけで、臨機応変さは無い!」


 抜け殻の横薙ぎを躱し、相手の顔面に突きを放った。

 その突きは躱されたものの、僅かに頬を裂いた。


「よし、行ける!」


 抜け殻は距離を取るが、エルホープは逃がさない。接近して抜け殻の振り下ろしを誘発させ、それを横に移動して躱す。


 抜け殻が剣を構えるよりも早く、首に剣を振った。

 しかし、抜け殻の首輪が光り、その攻撃はしゃがんで躱された。


「え?」


 当たると確信していたエルホープは、呆然と目を開いた。

 隙ありとばかりに抜け殻のタックルが彼をふっ飛ばした。


「がッ!」


 エルホープの体は端までふっとび、壁に埋まった。目を開いた時には、抜け殻の剣が首元まで奔って来ていた。


 左手を持ち上げ、突きに剣を当てることで骨に当たるのは回避した。

 しかし頚動脈が切断され、エルホープの首から血飛沫が噴き出す。


「くぅッ!」


 エルホープは抜け殻の腹を蹴る。紙に当てたような感触が足に奔り、抜け殻の体はフワッと飛んでいく。


「く、な、なんで!」


『あの首輪だ。指揮官があれを使って人工知能を操作したんだ……!』


 エルホープの頬に汗が垂れる。

 首からは絶えず血が流れ、あと数分で息絶えてしまう。

 時間以内に抜け殻を討伐する術は、彼には無かった。


「いったい、どうすれば!」


 抜け殻から逃れながら、思考する。

 しかし、焦りながらでは考えも纏まらず血と共に力が抜けていくばかりだった。


『落ち着くんだエルホープ! 人工知能の指令を体に伝えている機械があれの内部にあるはずだ! それを壊せば勝機はある!』


「で、でもそんなのどこに!?」


『それは……!』


 ニエルは何も言えなかった。

 いくら考えても、そんな物がどこにあるかはまるで分からなかった。


 抜け殻が剣で顔を突いてきた。

 横に移動し躱そうとするが、躱しきれず、頬がザックリと斬れる。


『頭だ! 頭を狙うんだ! 人工知能ならば、脳を介して体を動かしている可能性が高い!』


「う、うん、分かった!」


 頭に、抜け殻の剣が振り下ろされる。

 エルホープはそれをわざと半端に避け、右肩で受けた。


「これで、どうだぁッ!」


 右肩で剣を止めながら、左手に持つ剣を抜け殻の顎に向かって突いた。

 

 エルホープの視界には、一瞬歪んだ笑みを浮かべる抜け殻の顔が見えた。



 抜け殻の顎から頭までを貫くと同時に、奴の足が腹に突き刺さった。地面をバインドしながら、遂にエルホープは意識を失った。


 抜け殻は、追い打ちを掛けるように地面に寝転がるエルホープに切っ先を向け、突きを放つ。

 その時、彼の体は地面を蹴り、抜け殻の攻撃から逃れた。


『な、なんだと!?』


 ニエルは驚いた。

 憑依しようとする直前にエルホープの体が動いたからだ。


『お父さん……いえ、獣人さん』


 抜け殻がまた突きを放ってくる。

 その人物は数ミリ単位の見切りでそれを躱し、頭に刺さっている剣を引き抜いた。


『彼が戻ってくるまで、私が戦います。その代わり、父以外の、誰も殺さないでください』


 エミリーの動かすエルホープが、ニッコリと笑みを浮かべる。

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