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復讐の魂  作者: 米木パン
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第1話:支配の輪

 戦争。それは、20年前から起こっている、人間と獣人の戦いである。

 お互いの住む地を守る為、そして増えた人口を新しい土地に住まわせる為に、戦いは行われている。


 人間は機械を扱い、獣人は身力を扱う。

 人族は機械により、どんな人間でも戦える様にして、量を制す。そして獣族は、己の身体を研ぎ澄まし、質を制す。

 そんな獣人の中でも、1番強いニエルは、人間にとっても、獣人にとっても、最重要戦力だと言える。


「それじゃぁ、行ってくるよ。」


 しかし、ニエルはそれに気負う事はない。ただ自分が研ぎ澄ました体を信じ、戦場を生き抜くのみだ。

 彼が待つ、妻の元へと帰る為に。

 そして、間もなく生まれる子供の為に。


ーーー


「はぁぁぁッ!」


 ニエルは戦場に着き、飛行船や戦車などを切り払っていた。


 彼の爪を斬り、そしてそれを研ぎ、剣に変化させた武器はどんな物にも優る豪物。

 如何に飛んでいようと、早く動こうと、所詮鉄の塊。そんな物を彼が斬れぬ訳が無かった。


「ふぅ……。」


 カチン、と剣を鞘に収めた時、彼は言い知れぬ違和感を感じていた。


「……今日は、恐怖が無いな……。」


 その恐怖とは、勿論彼の話ではない。人族の話であった。


 戦場に置けるニエルは、人間にとっては恐怖の象徴と言っても過言ではない。彼を見掛けた瞬間、逃げ出す様な者も多いと言うのに、今日は全員が向かってきたのだ。

 明らかに異様としか思えない。


「……まぁいいか、考えて分かるものでもない。」


 彼はそう結論づけ、また敵が居る場所へと向かった。それが、自分の故郷の為になると信じて。


 しかし、ニエルはここで一旦退いておくべきだったと、後悔する事になる。


ーーー


「チィッ……! またかっ!」


 ニエルは疲れが混じった声を漏らした。

 先程から、休む暇もなく、飛行機や戦車が飛んでくる。それも、一度に大量に来るわけでもなく、10台など、ほんの少しずつ、飛んでくるのだ。


 明らかにいつもとは違う戦法。

 人間を完全に駒とし、彼を疲れさせる為にやっている様な戦法である。


「おのれ……ッ!」


 ニエルも人間の作戦が読めない訳では無かった。しかし、彼は堅物であり、そして家族思いであった。


 ここで彼が休憩の為に退いてしまえば、そのままこの軍隊は街に攻め込んでしまう。それにやられてしまう様な街じゃないが、誰か一人が死んでしまうのではないだろうか。

 そう考えると、ニエルは退くという選択肢を取る事が出来なかった。


「はぁ、はぁ……ッ!」


 そのまま3日ほどもそんな戦いを強いられた。ニエルは疲労困憊の状況になり、遂に軍隊の前に、敗れてしまった。


ーーー


「うぐ……ッ!」


 彼は銃を体に打ち込まれた衝撃で、目を覚ました。

 目の前には、醜い笑みを浮かべた。白衣を身に着けた白髪の男が居た。


 この状況に、ニエルは内心ほくそ笑んだ。

 人間達に彼を拘束しておける程の設備は存在しない。ある程度体力を回復させ、ここから抜け出せば、また村に帰れるのだ。


 少なくとも、死んでないのは幸運だったと、ニエルは考えた。


「……着けろ。」


 奥の方に、3つの星が着いている帽子を被った男が佇んでいた。恐らく、あれがあの戦術を使ってきた指揮官だろう。とニエルは見切りをつけた。


「分かりました。ウヒヒヒヒ。」


 そう言って、博士風の男は、ニエルの首に、白い首輪を取り付けた。

 その瞬間、彼の頭に電流が走った様な感覚がした。


「うぐ……ッ!」


 その電流による痛みが収まった瞬間、ニエルの足が勝手に動いた。


(……なんだ?)


 そして、その瞬間にも彼は驚いた。自分の声が、出なかったのだ。


 そして、その時、指揮官らしき男が、一気に駆け寄ってきた。


 先程までの堅物そうな雰囲気とは違う。その渋みの感じる顔に、歪とも言える程、口角を突き上げた笑みを浮かべていた。


「ごきげんよう。私の兵器よ……。」


 その次の瞬間、ニエルの体は勝手に、指揮官に跪いていた。

 彼の意志とは、一切関係のない行動だった。

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