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復讐の魂  作者: 米木パン
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第11話:狼煙

 10年。森の爆発から10年が経った。エルホープは修行を続け、強くなれば、人間が近付かぬ険しい場所へと移り住む。それを繰り返し、10年もの間生き延びる事が出来た。

 

 洞窟から始まった彼の転居は、山奥、谷底、氷山と続き、遂に、火山の噴火口でも逞しく生きられるようになった。


『エルホープ……そろそろ充分だ。人間の目を気にして、こんな危険な場所で住む必要はもうない。戦いを挑もう』


「うん」


 エルホープは、コクリと頷いた。驚くほどの成長を遂げた彼は、今やかつてのニエルに並ぶほどになっている。

 ニエルは、人間に敗北はした。しかし、集落を守り抜こうとした故の敗北である。幸運と言うべきか、残念と言うべきか、今のエルホープに守るべき物は居ない。


 ニエルを破ったあの戦略を使われて、後れを取ることは無いと言える。


「よし……行ってきます」


 今まで住んでいた噴火口に別れを告げ、エルホープは火山から降りた。

 人間は勢力を拡大しており、火山から降りて、少し歩けば彼等の街が見えた。


「あれは……無視するんだよね?」


『……あぁ、わざわざこちらの姿を知らせてやる必要はない。まず……本体を叩く』


 人間達の街を襲って宣戦布告をするよりも、軍隊の施設を叩き、向こう側に大打撃を与える方が良いと判断した。

 幸い、ニエルには戦ってきた記憶がある。あれから10年は経っているが、極端に設備が移り変わっている事は無いだろう。


『まず最初に潰すのは……あの指揮官が住んでいた施設。軍の最重要地点だ』


 ニエルが操られ、獣人が敗北した原因となった場所。戦いを有利にする意味でも、復讐の狼煙を上げる意味でも、最高の施設だった。


ーーー


 そこは当然ながら防備が固められていた。分厚い壁で施設を囲んでいて、蟻の入れる隙間すら無い。

 だが、そんな防御もエルホープには無意味。彼の力を使えば、真正面から打ち破れるのだ。


「よし……っ!」


 彼は爪で作った剣を使って壁を切り刻み、中へと侵入。中に居た人間を声を出させる暇も与えず、切断した。

 今のエルホープは音速を超えている。戦闘機を使っているのであればまだしも、銃を持っただけの人間が相手では、勝負にもならない。


『止まれ……エルホープ』


「うん……」


 しかし、当然それだけで済むはずが無かった。エルホープの視線の先には今、3体のロボットが居る。

 全身が銀色の人型機で、その手には剣が握られている。


『中に人が入れるスペースはない……こいつは遠隔操作で動く機種か、自動で動ける機械のどちらかだな』


「うん……」


 エルホープは剣を構え、そのロボットを睨んでいた時、何やら既視感を覚えた。


「お父さん……もしかして……」


『エルホープ……体を借りてもいいか?』


「……うん」


 ニエルが彼の体を操り、剣を振らせる。そしてその時、相手側のロボットはほぼ同じ動きで剣をぶつけてきた。


『エルホープ……やはりこいつは、私を参考にして作られたロボットのようだ』


「やっぱり……そうなの?」


『あぁ……恐らく動きのパターンは10年前の戦闘データなどを使って作り上げている。そして、体の硬さやその強度は、向こうに置いてきた私の死体。あれを元に作られているのだろう』 


「そんな物を作ってるなんて……」


 エルホープは自分の手がしっかり自分の意志で動く事を確認した後、ギュッと剣を握る。

 その手には、ほんの僅かに汗が滲んでいた。


「それなら……警戒して挑まないと……!」


『いや、大丈夫だエルホープ。所詮こいつらはコピーに過ぎない。昔の私に勝ち得る程の力を持つお前ならば、苦戦はしない』


「う……うん……分かった!」


 エルホープは幾度かコピーと剣を打ち合う。彼は暫く、3人のロボットからの斬撃を、剣で受けるだけに留めていた。しかし……。


「よし……見えたっ!」


 彼がそう言い放った瞬間。反撃が始まった。ロボットから振り下ろされる剣を、受けることもなく横へといなす。そして刹那、エルホープの剣がロボットの首を切り裂いた。


「まず1体……っ! 次!」


 エルホープは真っ先に、剣でロボットの心臓部を貫く。そしての体を残ったロボットの方へと向けた後、蹴り飛ばした。

 奴が飛んできた残骸を躱したと同時に一閃。首へと剣を薙ぎ払い、最後のロボットを斬り倒した。


『見事だ……最初の動きでは、パターンを見ていたんだな』


「うん……この先、コピーとたくさん戦う事になるかも知れないから、今のうちに相手がどんな動きをしてくるのかある程度知っておきたいと思ったんだ!」


『ふ……随分と、頼もしく育ってくれたな……』


 ニエルは、我が子の成長を嬉しく思いながらも、着々と親離れしていく事に、少し寂しさを覚えていた。

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