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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第2章 築かれるハーレム! 拓夢様はわたくしのモノですわ!
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㊾深まる謎! 拓夢の正体とは!?

「え。ちょっと待って」


 拓夢は、ベッドの上から飛び起きた。調子に乗ってノエルを抱きしめ、女性アレルギーが発症して苦しんでいたのである。

 それから一時間後。

 もう時刻は深夜の三時を過ぎている。しかし拓夢は、眠りにつくことなく布団をはねのけ、ノエルに向き直った。


「さっきの話だけど、矛盾してない?」


「矛盾……ですか」


 ノエルが聞き返すと、勢いよく首を振って拓夢は、


「そうだよ。だって、僕が城岡家に引き取られ捨てられたのも、夢子さんに庶民特待生として迎えられたのも、偶然が重なって起こったはずでしょ? なのにノエルの話だと、君が僕に仕えるのは、昔から決まっていた(・・・・・・・・)ことになるじゃないか」


「それは……。そうですね。その説明は、しないといけませんね……」


 うつむきながらノエルはふう~っと長い溜息をつくと、五秒ほど間を置いて顔を上げた。どうやって説明をするか、長い沈黙の間に考えていたらしい。


「どこから説明しましょうか。まず、私が仕えるべきだった、一族の当主について、お話しましょうか」


 ノエルは話し始めた。

 身振り手振りで、拓夢でも理解しやすいようにゆっくりと丁寧に説明する。


「そのお方は、私が物心つく前に既に亡くなっていました。なので、私はそのお方と直接お会いしたことは一度もありません」


 ノエルは拓夢を真っすぐに見つめながら言う。


「そのお方の名は、雙葉志拓(ふたばゆひきろ)といいました……。雙葉氏は生前、経営していた親会社を『とある人物に委ねる』と遺言を残したんです。社長の地位、所有する土地、個人資産、持ち株……私についての扱いも、その人物に全て託すと言い残したと言われています」


「雙葉……幸拓?」


 拓夢が呆けたように聞き返すとノエルは、


「……もう忘れたんですか? この学園の創設者ですよ」


 ノエルにジト目で睨まれて、拓夢は「ああ!」と大声を上げる。確かに聞いた。この学園に転入してきたその日、理事長室で夢子から。


 思い返せば思い返すほど、現像された写真のごとく、その姿が浮き彫りになってきた。

 日本屈指のコンツェルンで、戦後最大の財閥と呼ばれている雙葉財閥。その十五代当主であるのが、雙葉幸拓だ。


(その雙葉幸拓が……とある人物に対して、僕のことをノエルに託した……?)


 拓夢は顔をこわばらせた。

 日本最大規模の企業を抱える雙葉グループと、天涯孤独の自分……月にいるウサギと、水槽の中を泳ぐ亀くらい関係のない話だ。


 しかし、そこからさらに思い出してみる。


 あの日。拓夢が庶民特待生としてこの学園に来た、最初の日だ。拓夢は緊張して理事長室のソファーに座り、夢子は拓夢に対し、神妙な面持ちでこう言ったのだ。


『拓夢君。これはね。亡き前理事長……雙葉志拓(ふたばゆひきろ)の意志でもあるのよ』


 ……。

 嫌な方向に想像がいってしまったので、拓夢は思わず首を横に振る。


「う、嘘だ……まさか、そんな……。あの人が黒幕だとしたら……僕は一体、どうすれば……」


 あまりにも突然な推理に、脳内がパニックに陥る。


「拓夢様? 大丈夫ですか? とりあえず今日はここまでにして、明日続きを話し合いませんか?」


 ノエルが心配そうに顔を覗き込んでくる。


「い、いや。いいんだ。それで? 雙葉は『とある人物』に僕のことをノエルに託した……。そして、そのとある人物っていうのは?」


「……あの……それは」


 ノエルは続きを言いたくなさそうに、言葉尻を濁した。

 拓夢も聞きたくはなかったが、ここまできたからには真実を知りたかった。

 

 ――そう、それがどんなに残酷な「真実」だとしても。


「教えてくれ。雙葉から遺産を受け継いだ人物っていうのは、一体誰なんだ?」


 拓夢は胸の高鳴りを悟られないよう、精一杯冷静さを装いながら尋ねた。


「それは……その人物とは……」


 ノエルは両目をあちこちに泳がせながら、やがて真っすぐに拓夢を見つめ直した。


「それは」とノエルは言って、


「神薙夢子……理事長です」


 苦しそうに告げた。


 …………。


 再び長い沈黙。そして、


「そっか……やっぱりね」


 拓夢は、とりあえずそれだけ呟いた。ノエルの言うことは、大体予想がついていた。ついていながら、違っていてほしいと願っていたのだ。つまりは、現実逃避である。


(でも……。だとしたら、何で城岡家に僕を引き取らせたんだ? そして、何で十三年も経ってから僕を迎え入れた? そもそも、僕の本当の両親とは?)


 分かっていたことだが、頭の中が大パニックだ。

 しかし、このまま黙っていたら本当に頭がおかしくなりそうなので、何とか思考を整理しようと、拓夢はノエルに話しかける。


「夢子さんは、雙葉の死後すぐにこの学園の理事長に就任したんだっけ?」


「……ええ。雙葉氏はオーナー経営者だったので。持ち株と共に、雙葉の財産をそのまま夢子様が相続した形になります」


「そうか……」


「はい……」


「僕を養子として城岡の人たちに命じたのは、夢子さんなの?」


「そうです。城岡隆志は、元々は雙葉系列の子会社で働いていた役員だったようです」


「……」


 その返事を聞いた瞬間、拓夢は下を向いて黙り込んでしまった。

 しかし、すぐに顔を上げると、


「そんなの、おかしくない!? 何で、身寄りのない僕を夢子さんは、わざわざ城岡家に引き取らせるような真似をしたの!? それに、何で今さら僕を再び引き取った!? 夢子さんのやってることはメチャクチャだよ!!!!」


「確かに……そう思われますよね」


 ノエルは、拓夢の勢いに押され、声を小さくして言った。


「以前、夢子様から聞いたことがあります。拓夢様が十七歳の誕生日を迎えると、『ある力』に覚醒してしまうのだと。だから十七歳になる前に、そばにいてほしいのだと」


 あまりにも非現実的な言葉が聞こえてきた。


「ある……力?」


 はい、とノエルは短く返事をした。


 力とは何だろうか。まず想像するのは、誰もをなぎ倒す圧倒的な力、つまりは暴力である。しかし、拓夢に限ってそれはない。すると、どんな企業をも統べてしまう、莫大な財産であろうか。これも、孤児である自分には当てはまらない。拓夢からすれば、ノエルの言葉は謎だらけであった。


「拓夢様……気が付きませんか? ご自身のお力を。本当に、何のお心当たりもないと仰るのですか?」


 しかしノエルは、真剣な表情でまくし立てた。


「だからなんなんだよ! なにかあるなら、早く言ってくれ!!」


 拓夢は声を荒げた。

 ノエルの話は拓夢の脳のキャパシティを完全に超えていた。というより、もう心が持ちそうになかったのだ。


 それを察してかノエルは、小さな声で告げた。


「例えば私は、拓夢様を見てると……胸がどくんどくんと、激しく高鳴ります。そして、変な気分になるのです」


「……変な気分?」


「拓夢様の白い肌……、細く整った鼻……、大きく力強い瞳……全てに、心惹かれてしまうのです……」


「な……なに? なにを言ってるの……?」


 自分がイケメンなのは散々言われたことなので自覚が芽生えてきた拓夢だが、ここまで恍惚な顔をして言われると、思わず面食らってしまう。


「つやつやして、ルビーのように真っ赤な唇……。ああ、今すぐその唇を奪ってしまいたい……」


 しかしノエルは、拓夢の不審を物ともせず、むしろ拓夢の首に手を回し、賛美の言葉を口にする。


「ぐはぁ!? や、止めてノエル! 女性アレルギーがっ!」


「止められません! だって私、拓夢様のことが好きなんですもんっ!!」


「~~~~~~~~~~~~~っ!!」


 心地よい肌の弾力と媚薬のような甘い香りに魅了されながらも、女性アレルギーによって昇天しそうになる拓夢であったが。


 ふとノエルは、拓夢から体を離すと、


「……これが、あなた様の能力なんです」


 潤んだ目で、拓夢を見た。


「?」


 ノエルの色っぽい視線を受けて、拓夢はますます困惑する。


「拓夢様のおそばにいると、我慢できなくなるんです」


「我慢……できない?」


 ――聞かなきゃよかった。尋ねた後にそう後悔してしまった拓夢だったが、時既に遅し。

 ノエルは、ハッキリと口を開いた。


「拓夢様の能力……それは、どんな女性をも(とりこ)にしてしまう魔の体臭……テンプテーション、フェロモンなんです!」

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― 新着の感想 ―
[一言] >「拓夢様の能力……それは、どんな女性をも虜にしてしまう魔の体臭……テンプテーション、フェロモンなんです!」 な、なんだってー!!(AA略) それって、女子校に放り込んだらアカン奴では(…
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