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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第2章 築かれるハーレム! 拓夢様はわたくしのモノですわ!
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㊹勝手にしやがれ

 それから後も、しばらく聖薇は泣き止まなかった。

 そんな聖薇を、拓夢は泡を吹きながら震える手で抱きしめ続けていた。

 これまで我慢させてきた分、沢山甘えさせてやりたかった。

 聖薇はもう子供ではない、立派な女性だ。

 もはや虚飾(きょしょく)の仮面は捨て、また前のように、仲のいい兄妹としてやっていける……拓夢は、そう確信していた。


「くぅ~、すぴ~」


 時計の針が0時を差す頃。拓夢の腕の中で泣き続けていた聖薇が、静かに寝息を立て始めた。


「今日はとりあえず、ここに泊まらせましょうか。城岡家には、私から事情を説明しておくから。安心してちょうだい」


 拓夢が聖薇をベッドの上に寝かせたところで、夢子はそう切り出した。


「そうですね……聖薇も、もう大丈夫みたいですし」


 拓夢は嬉しそうに同意した。しかし、ノエルは不満そうな顔で、


「……本当に、そうですかね」


 ボソッと呟くノエルに、拓夢は聞き返した。


「えっ、どういうことですか? ノエルさん」


「この方が本当に更生したかどうかなんて分かりませんよ……。嘘をついて、また悪事を企んでいるかもしれません。この一件だけで全てを信用するのは、あまりにも早計だと言っているんです」


「それはそうですけど……聖薇は、僕を連れ出すために学校を休んでまでここに来てくれました。それに、ノエルさんに殴られても決してあきらめませんでした。僕は、そんな聖薇を信じたい」


 これ以上、兄妹で仲違いをして離れ離れになるのは嫌だ。そんな思いを込めて言った発言なのだが、ノエルは怒ったようにそっぽを向いた。


「ああそうですか! じゃあ勝手にしてください!」


「ノ、ノエルさん……?」

 

 声を荒げ、一礼することもなくドシドシと足音を立てて、ドアを乱暴に閉めながらノエルは去っていった。後に残されたのは幸せそうに眠る聖薇に、唖然とする拓夢と、意味深に微笑む夢子だけであった。


「まったく。拓夢君ったら。てんでダメねえ」


「え……僕が悪いんですか?」


「当然」


 夢子は、指をピッと立てながら厳しい表情をしてみせた。

 拓夢には何が何だか分からなかったのだが……


「前から思ってたんだけど。拓夢君は、女心を分かってなさすぎよ?」


「う……すみません」


 女性アレルギーのせいもあって、今まで女性と親密になったことが一度もない自分に、そんなことを言われても……と、拓夢は心の中で不満を口にした。すると、夢子は優しく微笑みかけてきて、


「拓夢君。ノエルに謝ってきなさい」


「え、今からですか」


 おそらくもう休んでいるであろうノエルの所に謝罪しにいったら、ますます怒られると思ったのだが。


「拓夢君は、今回のことでノエルに沢山お世話になったでしょう?」


「それは……そうですけど」


「それだけじゃない。毎日の食事の世話や、朝の着替え。制服の洗濯。成績の下がった拓夢君のためにテキストを作成したり。ノエルは拓夢君のために、寝る間も惜しんで仕事をしているのよ?」


 夢子の発言は、拓夢にとって驚愕だった。いつも飄々(ひょうひょう)としていて、自分をバカにしてばかりのあのメイドが、そこまでしてくれていたなんて。


「ノエルさん……」

 

 拓夢は、ばつが悪そうにつぶやいた。


「あの、教えてくれませんか、夢子さん。ノエルさんって、一体何者なんですか? それに僕、昔一度、ノエルさんとはどこかで出会っている気がするんです。違いますか?」


「拓夢君」


 しかし夢子はイタズラそうに笑って首を振るだけだった。


「ダメよ、横着しちゃ♪ 聞きたいことは、自分で聞きなさい。ノエルならまだメイド室にいるはずだから。直接行って確認してきなさいな」


「あ、ちょ、夢子さん!?」


 拓夢の問いかけには答えずに、夢子は部屋から出て行ってしまった。

 

「ふう……」


 室内に取り残された拓夢は、ベッドに眠る聖薇の寝顔を眺めていたが、やがてふんぎりがついたのか、前を向いてドアノブを掴んだ。


(とにかく……ノエルさんに会わないと)


 決意を固めながら、拓夢は部屋を後にするのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です! [一言] ま、拓夢が両親を亡くしたのが何歳の頃でその時どんな生活を送っていたかという話なのでまぁ様子見ですねぇ。
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