㊲庶民特待生☆スペシャルトークショー
そして、翌日。何やかんやあって、ようやく庶民特待生☆スペシャルトークショー開催の日となった。
授業が全て終わった放課後。下の学年の2クラス分が、講堂に集まっていた。
そう、場所は講堂。参加人数が多いため、800人ほど収容できて、音響設備や映像機材も充実している講堂が、うってつけだったからである。
拓夢が豪華な装飾がなされたステージまで上がると、目下には1年生の女子達が数十人ほど並んでいた。
鉄枠のトラスで組み立てられたブースに入ると、中はテーブルとチェアがパーテンションによって仕切られていたので、とりあえず椅子に腰かける。
すると、一人の女子生徒が姿を見せた。
「は、初めまして! 成瀬心実です! 本日は、よろしくお願いいたします!」
心実と名乗った少女は、拓夢の前で深々と頭を下げた。
頭を下げた際にサラサラなロングヘア―がパラパラと垂れたのと、ブラウス越しでも分かるほど胸がたぷんと揺れたのは内緒だ。
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします……えーっと、成瀬さん」
「はい!」
「所属クラブと趣味特技、好物、将来の夢とかあったら、教えてください」
「わ、わたくしのですかあああああああああああああああああ!?」
「うあっ! ごめんなさいごめんなさい!」
台本通り喋った途端、心実は椅子から立ち上がり大声で叫んでしまったものだから、拓夢もつい謝ってしまった。しかし心実は、うっとりとした表情で涙さえ浮かべると、大きな胸の前で両手を組んで祈った。
「ああ……夢のようですわ! 拓夢神様から、わたくしのことを知りたいと仰っていただけるなんて!」
「え……」
拓夢神……? 心実の発した言葉に、思考がフリーズする拓夢であった。
「あの、拓夢神って、僕のことですか?」
「何を仰いますやら! わたくし達ファンクラブの間では、拓夢様のことはもはや神に等しいのです! 校門に拓夢様をかたどった銅像を建てようという話まで出てるくらいですわ!」
何もしていない自分がなぜ銅像になるのかはサッパリ分からないが、彼女達の間で、拓夢のことを神格化しているのは事実のようだった。
「わたくしの趣味はヴァイオリンですわ! 所属クラブは管弦楽部で、将来の夢は~~」
拓夢の動揺など素知らぬ顔で、心実は恍惚とした顔で自己紹介を始めるのだった……。
 




