㉜ごめんね急に呼び出して。でもあなたに会いたかったの
拓夢がくるみに呼び出された場所は、駅と直結しているショッピングモールだった。
かなり大きな建物のため人も多い。一日かけても全部は回れないほどだ。中にはファッションフロア、レストラン、カフェの他に、ゲームセンターやカラオケ、コンビニまで入っている。
そんなわけで、駅から歩いて五分という聖ジュリアンヌ女学院の客室に住む拓夢にとっては、そのショッピングモールは計十分ほどで行ける距離なのだ。
ショッピングモールに着いた拓夢は、改札口から出てすぐ正面の西口から中に入った。
エントランスを歩くと、透明感のあるジャズが流れており、サラリーマンや主婦、若い男女など、沢山の人ごみで溢れる中、
「拓夢せんぱ――――い!」
拓夢の姿を見つけたくるみが、大きく手を振りながら駆け寄ってきた。
くるみは相変わらず小柄ながら肉付きのいいボディに、上は白のカットソーシャツ、下は黒のショートパンツという出で立ちで、非常に可愛かった。道行く男がいくつも視線を投げかけているくらいだ。
そんなくるみは、拓夢の目の前まで走ってくると、
「もー、遅いですよお! 拓夢先輩!」
「え……」
くるみが顔を突き出してプンプン怒っているが。
そもそもスマホに着信があって「助けて!」と呼び出されたから来たのに。何でこんな余裕そうなのか……というより、自分は一体なぜこんな場所に呼び出されたのか。
「ちょっと拓夢先輩、拓夢せんぱ――――ーい!」
「ああ、うん。なに?」
「もう、ボーッとしないでくださいよ! 早く、荷物持ってくださいっ!」
「荷物……?」
拓夢は、くるみが指さした方向を見つめた。休憩用のベンチに、紙袋の山がどっさりと置かれている。
「ふふっ、拓夢先輩がいてくれて、助かっちゃいましたぁ♪」
くるみが、拓夢の顔を見つめながらニッコリと笑う。
美少女とデートしていると誤解したのか、周囲の男から嫉妬にまみれた視線をぶつけられる。
しかしくるみは、そんな嫉妬の視線など気にも留めず、颯爽と言い放った。
「今から、くるみお嬢様化計画を実行するです! というわけで拓夢先輩は、くるみのフォローをお願いします!!」




