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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第2章 築かれるハーレム! 拓夢様はわたくしのモノですわ!
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㉚生徒会役員共

「――私の跡を継いで、生徒会長になってほしいんです!」


 百合江のその声は、高らかに生徒会室に響き渡った。

 拓夢が面食らったのは、言うまでもないことだろう。生徒会の仕事を手伝うだけでも大分重荷なのに、生徒会長? ハッキリ言って、ありえない話だ。生徒会長どころか、クラス委員にさえ抜擢されたことがないのに。


「ぼ、僕が……生徒会長おっ?」


 拓夢の声もまた、生徒会室に響き渡った。

 聖ジュリアンヌ女学院は、超お嬢様学園だ。その女子校の生徒会長に自分がなる? ……あまりにも荒唐無稽(こうとうむけい)な話だ。


 狼狽(ろうばい)する拓夢に、百合江は少し気まずそうな顔をしながら、


「あ、いえ……別に、今すぐ答えようとしなくていいんです。考えてほしいってだけですから」


「あ、そうですよね……」


 ひとまず拓夢はホッとする。しかし、楽観は出来ない。百合江の表情は、真剣そのものだったからだ。


 そんな時、「ちょっと待ってくれよ」と冷静な声が割って入った。静香である。


「百合江、最初から順を追って説明したらどうだい? 冷静なキミらしくもない。少しは落ち着きなよ」


「副会長の言うとおりですよぉ。会長さん、ちょっと興奮しすぎです!」


 静香とミカ、二人に諭されて、流石の百合江もシュンとなって頭を下げる。


「そうですね……城岡さん、すみませんでした」


「あ、いえ。そんな……頭を上げてください」


 うろたえながらそう言われると、百合江は綺麗なお辞儀を止め、拓夢に再び向き直った。


「まず、生徒会の任期には、前期と後期があり、4月~9月が前期で、今は前期に当たります。後期は10月~3月なので。9月……つまり、文化祭終了あたりから後期役員を決める選挙を開始します。ここまではよろしいですか?」


「は、はい」


 選挙だの投票だのと、聞きなれないワードにおろおろしながらも、返事をする拓夢。

 百合江は拓夢の心境を知ってか知らずか、涼しい顔で説明を続ける。


「投票とは言ってますが、大体は出来レースです。立候補者たる資格は、担任の印鑑と、信用に値する生徒五名からの署名。要は、人気者が勝ち残る仕組みなんです。前任の生徒会長を含む生徒会役員からのお墨付きをもらえれば、ほぼ百%当選します。事実、私もそうでしたから。そういう意味では、一般投票というよりは信任投票といった方が近いですね」


 どうやら最後のは百合江なりのジョークだったらしい。生徒会メンバーがプッと吹き出す。


「城岡先輩なら大丈夫ですよ! 一年女子からの人気も物凄いですし!」


「百合江の時も凄かったよ。会長職には他に三人の立候補者がいたんだけどね。ほぼ百合江の圧勝さ」


「候補者演説も、一人だけレベルが違ってましたもんね!」


「演説だけじゃないさ。朝早く来て学校の掃除をしたり、昼休みには各クラスを回って学生たちに声をかけたり。そうした頑張りが、みんなに認められたんだよ」


 ミカと静香は、声を弾ませながら会話を楽しんでいる。拓夢が知らない、彼女達だけが知ってる苦労、歴史だ。会話の中には割って入れないが、楽しそうに話す彼女達を見ているだけで、このメンバーがどれだけいい仲間だったのかが分かる。


 そんな感じで皆の会話を眺めていると、不意に百合江が口を開いた。


「城岡さん。不思議に思ってるんじゃないですか? どうして、ご自分が選ばれたのかを」


 拓夢はうなずいた。不思議どころか、皆目見当がつかないと言ってもいい。

 百合江はフッと薄く微笑みながら、おもむろに話を切り出す。


「あなたが、凄く優しい人だからです」


「は、はい?」


 拓夢は小さな声で驚いた。自分が優しいかどうかは別にして、生徒会長に求められるものは、リーダーシップや頭脳、カリスマ性だと思っていたからだ。


「ていうか……ハッキリ言いなよー。百合江は本当は、拓夢クンのことを……」


「――黙りなさい、静香」


「わ、わかったよ。そんな怖い顔で睨まないでくれよ……」


 静香が引っ込むと、目を吊り上げ威圧していた百合江は、メガネをくいっと持ち上げた。


「今は生徒会の存続にかかわる大事な話をしているんです。あなたも副部長なら、少しは自覚を持った行動をしてくださいね」


「はぁ~い」と口をすぼめて返事をする静香を尻目に、百合江は拓夢に笑顔を向けた。


「すみませんね、城岡さん。いつもいつも騒がしくって」


「拓夢クンのこととなると、いつも騒がしいのはキミじゃないか……」


「し~ず~か~~~~?」


「わ、わかったって! もう喋らない! 何も喋らないよ!」


 再び場を茶化そうとした静香は、百合江にジト目で睨まれ、両手を上げて降参した。

 そして静香を黙らせた百合江は、改めて拓夢に向き直る。


「まあ、そういうことです。この癖のある生徒会をまとめるんですから、単に能力が高いだけではダメなんです。優しくて、誠実で、諦めの悪い――つまり、城岡拓夢さん。あなたです」


「いや、ええ? 僕なんですか?」


 尚も拓夢は驚きの声を上げる。

 しかし、ミカも静香も、二人とも納得したように拓夢を見ながら笑っていた。もちろん、百合江も。


「もちろん、あなたは頭も悪く、要領も悪いです。ですが、人を惹きつける天性の明るさがあります。あなたのためなら、優秀な生徒が慕ってくれるし、頑張ってくれます。仕事なんてものは、後から出来るようになればいいんですよ」


「でも、僕は……それなら、ミカさんや水月さんの方が適任じゃ……」


「いいんです。私から見て、誰よりもあなたこそが、生徒会長にふさわしいと思ったんです。私の直感を信じてください」


 力強い言葉と、優しい視線。拓夢はいたたまれず、生徒会室を見渡した。

 すると、


「拓夢先輩、頑張ってください! ミカ、応援してますから!!」


「百合江にハメられたね。『うん』って言わないと、後が怖いぞぉ~?」


 ミカと静香は、「あはは」と笑いながら拓夢と百合江のやり取りを見ていた。百合江だけではない。生徒会のメンバー全員が、拓夢のことを認めているのだ。


「答えは、今すぐじゃなくていいです。当面の問題は、生徒総会ですから。ですが、生徒総会が終わったら、答えを聞かせてもらえますか?」


 笑みをしまった百合江は、再び真剣な表情で拓夢に尋ねてくる。つられて拓夢も、こわばった表情で返事をする。


「……は、はいっ。考えておきますっ! 冷条院さん!」


「それと、もう一点」


 百合江は補足をするように、指を一本ピッと立てた。

 まだあるのかと内心くたびれながらも、拓夢は百合江の言葉を待った。


「私のことは、今後百合江でいいです。仮とはいえ、生徒会のメンバー同士なんですから」


「で、でも……生徒会長相手に、僕なんかが、恐れ多い」


 元々引っ込み思案な拓夢は、義両親から虐待に合っていたこともあって、他人への気遣いがハンパではない。百合江は生徒会長以前に年上だし、お嬢様でもあるし、四天使の一人でもある。正直、普通に話せていることが奇跡のようなレベルなのだ。


 それが、名前呼び? 顔面蒼白になる拓夢に、百合江は真面目な顔で言った。


「そんなことありません。それに、地位や学年は関係ありません。私個人が、あなたに名前で呼んでほしいと思ったんです。それとも、私のことはお嫌いですか?」


「い、いえ……でも……」


 まだ及び腰の拓夢の両肩に、誰かがぽんと手を置く。


「まーまー♪ 一回距離詰めちゃえば、そこから先は早いですから♪」


「うん、ボクもそう思うな。それに、百合江はここのところ、拓夢クンに助けられてばかりじゃないか。名前呼びくらい、フツーのことだと思うよ?」


 ミカと静香だ。そしてその中央から割って入って、百合江が言葉をかけてくる。


「お互い苗字呼びだったら、距離が出来てしまうんです。それがそのまま上下関係になってしまう。そんなことだと、人間関係の発展はありえません」


 百合江は白く優雅な手を、拓夢に向かって差し出した。


「お願いできますか? 拓夢さん(・・・・)?」


「僕……その」


 拓夢は答えに(きゅう)しながら俯いていた。しかし、ミカも静香も、暖かな視線を向けてくる。

 だから、きっと大丈夫だ。

 拓夢は顔を上げ、百合江の手を握りしめた。


「分かりました。これからも、よろしくお願いします……百合江さん」


 拓夢がその言葉を口にした途端、生徒会室は拍手と喝采の音に包まれたのであった。

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