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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第2章 築かれるハーレム! 拓夢様はわたくしのモノですわ!
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㉙Sを継ぐもの

 百合江に連れられ、拓夢は廊下を歩く。

 生徒の姿の少なくなった校内を進み、まっすぐ生徒会室に向かった。

 ドアの前まで来ると中から話し声が聞こえてくる。学校行事などについて会議をしているのかもしれない。


「失礼します」


 百合江がドアを開ける。拓夢も慌てて後ろに続く。生徒会の面々は全員揃っていた。百合江と、あと一人をのぞいて、だが。


「あー! 待ってたです! 会長!」


「拓夢クンも。二日ぶりだね。こんにちは」


 ホワイトボードの前で話し合っていた二人が話しかけてくる。

 最初に話しかけてきた少女は、進藤ミカ。常に元気いっぱいに行動する彼女は、誰もが認める生徒会のマスコットキャラでもある。一年生で書記を務めている。


 拓夢に話しかけたのは、百合江の右腕でもあり、「楽しければなんでもいい」が信条の生徒会副会長、弥生静香である。


「もーっ、拓夢先輩、遅いですよお!」


「す、すみません」


「城岡さんは庶民特待生として生徒のお相手をしていたんです。だから来るのが遅れたんですよ」


「そうだよ、ミカ。忙しいところをわざわざ来てくれたんだから、失礼なことを言ってはいけないね」


 拓夢に対してプンスカ怒るミカを、百合江と静香は冷静にたしなめた。怒られたミカは、「いっけない!」とばかりに口を手で押さえた。


「すまなかったね、拓夢クン。でも、本当に一刻を争う緊急事態なんだ。だから、今もミカと二人でどうしたものかと話し合っていたところなんだけどね」


「副部長だって、『拓夢クン遅いな~』ってずっと言ってたじゃないですかぁ」


「なにか言ったかなぁ~? ミカ~?」


 ボソリとぼやいたミカに、静香は笑顔で(・・・)詰め寄った。

 相変わらず賑やかなメンバーだった。しかし、何だか物足りない。いや、雰囲気とかではなく、物理的な意味で。


「あ、あの……水月さんは、どうしたんですか……?」


「そのことなんですけどね」


 拓夢に尋ねられた百合江は、顔を曇らせながら答えた。そう、一年生の書記で、真面目で大人しい女子、賀谷水月がいなくなっているのだ。

 簡単に説明すると、彼女は病欠しているという。


 ゴホゴホと咳をする水月を気遣い、問診を受けるように促したのが、結果は軽い風邪だった。

 水月はすぐにでも復帰すると意気込んでいたそうだが、両親からストップがかかったのだという。

 彼女は箱入り娘として大事にされているらしく、親は彼女を守るために学校を休ませ、自宅で療養させているらしいのだ。


 拓夢は少し気まずそうに、低い声で話しかけた。


「それで……水月さんの復帰は……?」


 そう尋ねると、百合江は無言で首を振るのだった。

 それだけの仕草で、拓夢は全てを察する。


「大丈夫なんですか……? 六月には体育祭もあるのに」


「その前に、生徒会にとって大きなイベントがあるんです」


「え、なにかありましたっけ……?」


「忘れたんですか? 生徒総会ですよ」


 百合江がそう言うと、拓夢は「あっ!」と声を上げた。

 その様子を見て、百合江が言いくそうに、


「あの……だからですね。その……」


 百合江は視線を斜め下に向けながら、何かを言いかけていた。

 しかし中々本題に入らない。彼女が切り出してくれないと会話の糸口がつかめない拓夢は、そわそわしながら百合江の話の続きを待っていた。


 そこに助け船が出る。


「まったく。生徒会長サマは、庶民特待生のこととなると、途端に奥手になるねえ」


「う、うるさいですよ! 静香!」


 百合江に怒られた静香は、「おお怖い」とばかりに、困った顔の横で両手を広げながら、ふうっと息をついた。


「分かりました。それでは、本題に入ります!」


 キリッと表情を引き締めると百合江は、拓夢に向かって凛と話しかけた。


「生徒総会まで、もう一月を切っています。なので、生徒会のお手伝いをして頂けませんか?」


 生徒総会とは、文字通り全生徒が講堂に集まって行われる、学校の課題や問題点を改善しようという話し合いの場なのだ。各クラスの委員長や各部活の部長が代表して選出されて壇上で意見交換を行うため、生徒会にとって最大のイベントといっても過言ではない。


「――と、いうことなのです。協力して頂けませんか?」


 拓夢が思案していると、百合江が顔を覗き込みながら尋ねてきた。


「お話は分かりました。でも、僕なんかで大丈夫なんでしょうか……」


「その点は問題ありません。協力といっても、軽い力仕事などをお願いしたいのです。役員が二人も抜けた今、男手はかなり貴重ですから」


 あなたに頭脳労働は期待していません。いいから黙って力仕事だけしていなさい、というのを、百合江は言葉巧みに言い変えた。


「それって、放課後必ず参加しないとダメですかね……?」


「気にしているのは、庶民同好会のことですね?」


「は、はい……」


 生徒会よりも庶民同好会の方を優先しているわけではないが、それでもどちらかを天秤にかけるのは相当の勇気がいる。拓夢は声を小さくして答えるのだった。


「心配しなくていいよ。キミがヒマな時でいいから」


 ミカと二人で成り行きを見守っていた静香が、拓夢と百合江の会話に割って入った。


「まあ、キミがずっといてくれたら助かるのも本音だけどね。何より、百合江はそっちの方が嬉しいだろうし……ムフフ」


「ちょっと! 副会長!」


 いやらしい笑いを浮かべる静香を、百合江は顔を赤くしながら叱責する。


「それで? どうなんですか城岡さん。お返事の方は」


「はい、別にいいですよ」


「え、本当ですか?」


 まさか即答で返されるとは思ってなかった百合江は、驚きの声を上げた。


「僕に出来ることがあったら協力しますと、前言ったじゃないですか。それに、困ってる人たちがいるなら、放っておけません」


 男手が必要という以上に、拓夢は「庶民特待生」という、特殊な地位にいる。

 しかも、近頃の女子生徒からの人気には目を見張るものがあり、その拓夢から手助けを得られれば、他の生徒からの助力も期待できる。百合江は、その辺りのことを補足説明した。


「ああ、そっか。だから僕に協力を求めたんですね」


「……貴方はご自分の立ち位置を、もっと理解した方がいいと思いますよ? 本当に、凄い人気なんですから」


「だって、前の学校では全然モテなかったんですもん……」


 自分が人気者だという自覚が全くない拓夢は、恥ずかしさのあまりソワソワし始める。


「……百合江。そろそろあの話したらどうかな?」


 その隙に静香が、百合江に耳打ちをする。


「……ええ、そうですね。今がチャンスですね……」


「……頼むよ」


「はい?」


 三分の一ほど聞き取っていた拓夢が、百合江と静香の会話に割って入った。

 何か頼みごとがどうこうと、聞こえた気がするが……。

 百合江は静香から体を離すと、拓夢に向き直った。


「城岡さん。今から話す内容は、全て極秘でお願いします。いいですね?」


 急にシリアスなトーンで話しかけられ、拓夢はわたわたしてしまう。


「え? ど、どうしたんですか、急に……」


「――いいですね?」


「は、はい!」


 慌てて答える拓夢を、微笑みながら眺める静香と、心配そうに隅っこから見つめるミカ。そしてその真ん中に立つ百合江は、真剣な表情で重い口を開いた。


「貴方には、もう一つお願いがあります……私の後を継いで、この学園の生徒会長になってほしいんです!!」

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