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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第2章 築かれるハーレム! 拓夢様はわたくしのモノですわ!
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㉖くるみお嬢様化計画

 ――お昼休み。食堂にでも行こうかと、拓夢が廊下を歩いていた時だった。


「うう……女の子の視線が……痛い、辛い……っ」


「城岡さまっ! よろしければ私と、カフェでお食事でもいかがですか!?」


「ずるいですわ……それでしたら、わたくしと!」


「いいえっ、わたくしですわ! 城岡様、ぜひわたくしを選んでくださいませえええええええっ!」


 甲高い女子生徒の声が廊下中に響き渡る。まるでアイドルかなにかだ。

 桜のアイディアでイメチェンをして以来、どうもこんな調子なのだ。例えるならば、お花畑で女神と妖精に囲まれてるような状況なのだが、女性アレルギーの拓夢からすれば、針の(むしろ)に座って火あぶりにされてるようなものだ。


(気の休まる場所に行きたい……っ!)


 拓夢が心の底から叫んだ、そのときだった。


「――城岡先輩、こっちですぅ!」


「……え!?」


 何者かが拓夢の袖を引っ張り、女生徒の群れから引き離したのだった。


 そして、舞台は廊下から中庭に移る。


「ふうっ、走ったあとのオレンジジュースは美味しいですぅ♪」


 と、果汁百%のキンキンに冷えたジュースを嬉しそうに飲んでいるのは、庶民同好会のメンバーにして、四天使の一人である、姫乃咲くるみであった。青色のナチュラルボブカットに、大きくキラキラと輝く大きな瞳が特徴的な、元気いっぱいの女の子だ。


 そんなくるみにも悩みがある。それは、お嬢様ばかりの聖ジュリにおいて、自分だけが子供っぽく、周囲に上手く馴染めていないということだ。


「えっと……姫乃咲さん。そろそろ、どうして僕をここに連れてきたのか。理由を教えてもらえませんか?」


 カフェオレを飲みながら拓夢は尋ねた。食堂へ行こうと廊下を歩いてた所を、くるみに連れ去られ、中庭にあるテラス席まで来たのだ。状況は全く分からない。


「それに……ん?」


 サンドイッチを食べるくるみに、拓夢は目を向けた。


「姫乃咲さん、口元に卵サラダがついてますよ?」


「ふえっ!?」


 くるみは、慌てて口元を指でぬぐった。

 その様子を見て、拓夢が笑う。


「そんなに慌てて食べると、喉に詰まらせますよ。はい、紙ナプキン。今度は指が少し汚れちゃいましたから」


「う、うう……っ」


 くるみは、拓夢が差し出した紙ナプキンを、顔を真っ赤にしながら受け取ると、


「く、くるみを子供扱いしないでくださいっ!」


 ぷんぷんと、頬を膨らませながら怒った。口元や指先を汚しながら言うことじゃないよなあと、拓夢は内心で思いながら。


 不器用に手先を拭くくるみを見て微笑んでいた。

 子供っぽいくるみを笑ったのではない。何事にも全力で、そして感情を常にオープンにしているくるみが、何だか微笑ましかったのだ。


「……!」


 しかし、その気持ちはくるみには伝わらなかったようで、


「あう~っ、ま、またくるみのこと、やんちゃな娘を見守るお父さんみたいな目で見てるですぅ!」


 くるみは眉を逆ハの字にして、拓夢の視線を非難した。怒られているのだが、ちっとも怖くはない。女性アレルギーさえなければ、「よしよし」と頭を撫でてやりたいくらいだ。


「ひ、姫乃咲さん、落ち着いてくださ……」


「あううううぅ、ジュースこぼしちゃいましたああああああああぁぁっ!」


 空になって倒れたグラスを見て、くるみが叫び声を上げる。


「きゃあああ~! スカートにかかっちゃたですうううう~っ」


 濡れたスカートを見下ろしながら、いよいよくるみはテーブルの上でわちゃわちゃし始めるのを見て。


 さすがに見かねたのか、メイドがやってきて、


「姫乃咲様、大丈夫ですか? この程度なら、濡れタオルですぐに拭けば、シミにはなりにくいですよ」


「うう。ありがとうです……」


 メイドはくるみの制服を拭き終えると、テーブルを綺麗に掃除し去っていった。

 すると、くるみはポツリと、


「城岡先輩。くるみって、やっぱり子供っぽいですよね?」


「……え?」


「いいんです。くるみだって、分かってますから」


 そう言うと、くるみはデザートに頼んでおいたチョコレートパフェのクリームを、一口すくって口の中に入れた。

 フルーツの周りにショコラやカカオチョコレートやアイスが乗った、彩り華やかなパフェなのだが、くるみの顔は暗かった。


「前にも言ったですよね……。くるみは、本当はお嬢様じゃないって」


「はい」


 拓夢が頷くと、くるみは苦い顔をしてスプーンを置いた。


「城岡先輩は、言ったです。くるみは、今のくるみのままがいいって。でも、この学園ではお嬢様であることが普通なんです。だから、くるみはやっぱり」


「姫乃咲さん……?」


「城岡先輩……」


 拓夢は驚いた。くるみの顔が、すぐ目前にまで迫っていたからだ。

 その小さな身体は中学生といっても差し支えないが、出るところは出たグラマーな体、艶やかでぷっくらとした唇、そして若干潤んだ瞳は、不思議なほど色っぽく感じた。


「あ、あの……姫乃咲さ……」


「だからお願いですっ! 城岡先輩も協力してくださいっ! 『くるみお嬢様化計画』に!」


「……へ?」


 拓夢の眼前で、くるみは両手を握り合わせながらお願いしてきた。

 先ほど感じた色気など全て吹っ飛ぶくらいお子様な提案に、しばし拓夢は首を傾げるのであった。

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