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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第2章 築かれるハーレム! 拓夢様はわたくしのモノですわ!
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⑱焦りはミスを生みやすい

「拓夢く~~んッ! 〇〇〇~! ××~!!」


 後ろから桜の大声が聞こえてくるが、拓夢は正確に聞き取れていなかった。


「次は池垣か! いくぞフローレンス!」


 それを聞くと、フローレンスは身構えた。


「飛べ、フローレンス!」


「ヒヒーーーーン!」


 馬着が震えるほどの雄たけびを上げると、フローレンスは天空高く飛び上がった。

 見事に池垣を超えた瞬間、(くら)から拓夢へ、まるで地震のような衝撃が伝わった。


 ――わああああああああ~~っっ!!


 背後から歓声が聞こえ、拓夢は思わず後ろを振り向く。


「ま、真莉亜さん……」


 拓夢から2馬身――少し離れたところに、黒馬(こくば)と真莉亜が追ってきていた。


「油断大敵ですわ! 拓夢さまっ!」


 黒いヘルメットからのぞく金色の髪をたなびかせながら、真莉亜が叫ぶ。


「馬の動きに身を合わせるのです! そして、重心をしっかり保つことを忘れないでください!」


 真莉亜はなぜかそうアドバイスすると、シルベーヌを減速させ距離を置いた。


「真莉亜さん……?」


 拓夢は目を凝らして、コースの先を見た。目の前には乾濠――水の入ってない堀のようなものが設置されている。目の前で見るとかなりの大きさだ。乗馬素人の拓夢には、文字通りハードルが高すぎる。


「無理だ……!」


 絶望してリードを引こうした時、


「ひひいいいいいいいいいいん!」


 長いたてがみをなびかせ、フローレンスが勇ましく飛び上がった。


「い、痛っ!」


 見事地面に着地したフローレンスだったが、拓夢は無事ではなかった。

 車並みのスピード、300キロ近い重力の着地、その全ての反動が、(あぶみ)を通じて拓夢の足を貫いたのだ。


「ぐうっ……」


 拓夢は痛みに顔をしかめながらも何とか体勢を立て直す。後ろで咆哮(ほうこう)とヒヅメの音がする。どうやら、真莉亜の方は無事に飛び越えたみたいだ。


 しかし、拓夢は焦っていた。


「……僕は、負けるのか?」


 弱音をつぶやく。


「おそらく真莉亜さんは、いつでも僕を抜けるんだ。それを、手の内を見せまいとして……。今だって、フローレンスに助けられなければ、僕は自分からコースアウトしていた……」


「ひひん!」


「フローレンス……?」


 拓夢が名前を呼ぶと、フローレンスはまたも「ひひん!」と鼻を鳴らした。

 しっかりしろ、と言っているのだろうか。

 

「分かったよ……信じてみる! お前を、そして自分を!」


 拓夢は表情を引き締めた。どんなに高くとも、飛べないハードルなどないのだ。

 それに、障害物はもう9個飛び越えている。越えなければならない障害は、全部で13個。もうすぐだ。それまで抜かれなければ、自分の勝ち……。


「って、ええぇーっ!?」


 自分を鼓舞した瞬間、拓夢は驚愕の声を上げた。

 目の前にあったのは、巨大な丸太だった。

 こんなの飛び越えられない! 死ぬ! 絶対死ぬ!

 けれども、彼女――フローレンスは、減速しなかった。それどころか、ますますスピードを上げる。そして丸太が眼前まで迫ってきた瞬間、フローレンスは大きく足を上げた。


 ヒュオッという風を切る音が聞こえた。


「ううっ!」


 と同時に、今度はドシン! という衝撃が伝わる。思わずフローレンスの首にしがみつくと、フローレンスは拓夢を振り落とさないよう、大幅に速度を落とした。


 すると……。


「油断大敵と言ったでしょう!!」


「え?」


 声を上げる暇もなく、黒馬は走り去っていった。と同時に自分の目の前に立ちふさがることになったシルベーヌ。その上にまたがる真莉亜は後ろを振り向き、そしてこう叫んだ。


「わたくしは、あなたには負けませんわ!」


「まり……」


 拓夢が口を開きかけたのを、真莉亜は阻んだ。


「何もおっしゃらないでください! わたくしの心を変えたければ、あなたの誠意で見せてくださいっ!」


 そう叫ぶと、真莉亜はもう後ろを向かなかった。その目の前には、飛び越え用の簡単な柵が3つあるだけ……。


「真莉亜さん……」


 拓夢の心を、絶望が襲うのであった。

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