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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第2章 築かれるハーレム! 拓夢様はわたくしのモノですわ!
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⑰真莉亜の作戦

 そして始まった、拓夢と真莉亜のクロスカントリー対決。

 桜に促されるまま、拓夢たちは馬と共にスタートラインに立った。フローレンスと、真莉亜の愛馬であるシルベーヌも、競技開始の合図を今か今かと待ち焦がれている。


 そのとき、桜は右手を大きく振り上げた。


「いっくよおおおおおぉぉぉ~~ッ! よ~~い……ドン!」


 桜が手を勢いよく下すと、二頭の馬はロケットのように駆け出した。


「速いよ拓夢くん! 3馬身くらい抜いてるッ!」


 桜が歓喜の声を上げた。と同時に、少しだけ心が痛くなる。拓夢が勝てば、真莉亜は拓夢にプロポーズをしてしまうのだ。


 もしそうなったら、自分は……。


「いいえ、勝負はこれからですわ!」


 取り巻きの言葉にハッとなる。2頭が向かう先に、障害物であるバーが設置されているのが見えた。いわば、ここが第一コースというわけか。


「真莉亜お姉さまーっ、頑張ってくださいませー!」


 取り巻きの女子達は、声を張り上げて叫んだ。彼女達も分かっているようだ。馬を走らせる技術と、馬を飛ばす技術は、全くの別物だということに。


「……?」


 桜は首をひねった。なんとなくだが、違和感を感じたのだ。

 コースといっても、下はふかふかの芝だ。障害物といっても、柔らかい木製のバーだ。要するに、人や馬が傷つかないよう配慮されたコースなのだ。そして、そのコースの中央付近では、真莉亜より拓夢の方が先に、フローレンスと共にバーを乗り越えていた。


「真莉亜お姉さまっ! 最初のバーがきましたわーっ!」


 取り巻きの言葉より早く、真莉亜は「ハッ!」という掛け声と共に、手綱を引き締めシルベーヌを飛び上がらせた。


「真莉亜ちゃん……?」


 あまりのフォームの美しさに、思わず見惚れてしまう。

 ギャラリーたちも同じ心境のようだった。なのに「えっ、お姉さまが拓夢さまに後れを取っている……?」という空気を出している中、桜だけが、その異変に気付いた。


「そうか! 拓夢くんッ! 前を走っちゃダメッッ!!」


「いやっ!」


 桜の声は聞こえなかったようで、拓夢は一心不乱に手綱を引っ張る。するとフローレンスはそれを察し、バーをギリギリのところで飛び越えた。


「ああ……」


 桜は嘆息を漏らした。拓夢の乗馬スキルにではない、拓夢が取った悪手に。

 真莉亜はおそらく、わざと後攻を選んだのだろう。後ろから悠々とレースが出来る。一方拓夢は、いつ抜き去られるか分からない緊張感の元馬を走らせているのだ。プレッシャーがそもそも違う。


 もう一つ理由がある。自分の走りを、拓夢に見せないためだ。拓夢のラーニング技術と、適応能力は並みではない。しかし、見本がなければ素人同然の走りだ。純粋な馬術であれば、真莉亜にかなうはずもない。


「真莉亜ちゃん……本気で、勝ちにきてるのかな……?」


 桜は思わずつぶやいた。

 そうこうしてるうちに、拓夢フローレンスペアは、3つめのバーを飛び越えたところだった。もっと近く、声が聞こえる位置に行かなければと、桜は芝生を移動する。


「拓夢くん!」


 叫びながら、拓夢を鼓舞しようとする。


「桜さま……横やりはいけませんわ」


 すると取り巻きの一人が、それを阻んだ。


「これは、真莉亜お姉さまと拓夢さまの勝負。そうではなくて?」


「あ、うん……そうなんだけど……」


 取り巻きの言葉に、桜は歯切れ悪く答えた。


「どうして……?」


 桜は混乱のあまり、ポツリと声を漏らした。


「……どうしてあなた達は、こんな勝負を認めるの? 拓夢くんが勝っちゃったら、真莉亜ちゃんを取られちゃうんだよ? それでもいいの?」


 桜が絞り出した言葉を聞いて、女子生徒は視線を桜に向けた。そして、言った。


「桜さま」


 その顔は笑っていた。達観したような、何かを悟ったような、儚げな笑みだった。


「桜さまは、本当に拓夢さまのことが好きなのですね」


「うん……! あなたは、どうなの? 拓夢くんが勝ったら、困るんじゃないの?」


 肯定の言葉を聞きたくて、思わず早口になる。だが彼女は、すかさず首を振った。


「わたくしは、真莉亜お姉さまを信じるのみです。それに、お姉さまの本心は、別のところにありますから」


「真莉亜ちゃんの、本心?」


 桜は、きょとんと聞き返した。

 すると、女子生徒は説明をしてくれた。


「真莉亜お姉さまは、口ではああ言ってましたが、本当は拓夢さまのことを愛しているのです。ですが、有栖川という立場上、自分から告白をすることはできません。ですからこうやって、勝負を持ち掛けたのです」


「わざと……負けようとしてるってこと?」


 桜はポツリと呟いた。確かに真莉亜ほどの馬術を持ってすれば、わざと失格することなどたやすいことだ。


「何を仰っているのですか?」


 桜が呟きに、女子は過敏に反応した。桜が視線を向けると、女子生徒は桜を見つめて言った。


「確かに、今は真莉亜お姉さまの方が劣勢です……。しかし、わたくしには分かります。この勝負、勝つのは真莉亜お姉さまだと」

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