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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第2章 築かれるハーレム! 拓夢様はわたくしのモノですわ!
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⑧割れた茶碗はおいくら万円?

「きゃああああああああああああ!」


 そんな耳をつんざくような悲鳴が起きた生徒会室には、割れたお盆と茶碗、そして、床一面が水浸しになるという、悲惨な状況になっていた。


「う、うう……」


 事故を起こした張本人であるミカは、涙を流しながら床に這いつくばっていた。制服はびっしょりとお茶で濡れている。一番至近距離にいたのは彼女なので、当然と言えば当然だが。


「だ、大丈夫ですか!? 進藤さん!」


 時が止まってしまったかのようにシーンと静まる室内で、ただ一人大声を発したのは、拓夢だった。まず拓夢は彼女を立たせると、持っていたハンカチで顔を拭いてあげた。もちろん、びしょ濡れのミカにとっては、焼け石に水程度の効果だが。


「熱かったですよね。ケガとかはしてないですか?」


「ひっく……はい……」


 そう、拓夢が行ったのは、ミカの安否の確認だ。精神的にも肉体的にも、彼女は今傷ついているはずだ。ならばまず、その緊張を解すことが大事だと判断したのだ。


「すみません! 進藤さんを、洗面所まで連れて行ってもらえませんか? それと、替えの制服とかは!?」


 拓夢が後ろを振り返って確認した。百合江と静香が動く。


「ミカさん。着替えを手伝います。一緒に行きましょう」


「ボクは、替えの制服を用意してくるよ。濡れた制服も洗濯しないとね」


 素早く行動に移る二人を見て、拓夢はコクリと頷いた。


「では僕は、床を掃除しておきますね。割れた茶碗とかも、片付けなきゃいけないし」

 

 すると、百合江はフルフルと首を振って、


「そ、それはダメですっ! 生徒会で起こしたミスなのに、お客である城岡さんにお掃除なんてさせるわけには……」


「でも、壊れた茶碗をこのままにしておくのは、危ないですよね? 床も滑るし」


「そ、それはそうですけど……」


「だったらやらせてください」


 拓夢は安心してください、というように、ニッコリと笑って言った。その笑顔を見て、観念したように百合江は、


「分かりました……。それでは皆さん、それぞれ作業に入りましょう!」


 と、号令をかけるのであった……。


「いやー、大変な騒ぎだったね」


 綺麗サッパリ片付いた床を見下ろしながら、静香は快活にそう言った。

 そんな静香に、拓夢は声をかける。


「進藤さん、大丈夫でしたか?」


「……幸い、ケガはなかったよ。火傷の心配もない。ただ、本人は相当落ち込んでたみたいだけどね」


 静香は拓夢に受け答えしながら、意味深な笑みを百合江に向ける。


「それにしても。庶民特待生クンは、生徒会長サマの言ってた通りの人だったね♪」


「な、ん、の、話ですかっ!」


 話を振られた百合江は、キッと怒りの表情で静香を睨みつけた。静香はそんな百合江の視線をかいさず、満面の笑みを向けた。


「言葉のとおりさ。百合江の言っていたとおり、城岡クンは素晴らしい男性だなって」


「言 っ て ま せ ん っ !!」


「でも、事実そう思うよ? そんなに城岡クンを毛嫌いしてるなら、ボクがもらっちゃおっかなー? これでも、結構マジなんだよ?」


「~~~~っ!!」


 真っすぐな静香に、百合江は言葉につまる。拓夢としては困ってしまう。静香が自分と付き合いたいというのは、単なるからかいだとしても。百合江が自分との疑惑で迷惑しているのだとしたら、申し訳ない気持ちになる。


 拓夢がそう考えていると、百合江は部屋を飛び出してしまった。


「私、知りませんっ!!」


 語気荒く言い切ると、サラサラのロングストレートを波打たせて、百合江はくるりと前を向く。そして珍しく足音を響かせながら、生徒会室を飛び出てしまう。


 百合江のこんな子供っぽい反応を見るのは、初めてのことだった。普段は高校生とは思えないほどの大人びているので、ちょっと新鮮だ。


「うーん。ちょっとやり過ぎたかな」


 明るい声で肩をすくめる静香だったが、その顔には「まいったな」と書かれていた。おそらく、後で百合江から相当愚痴を言われるに違いない。


 二人っきりになった拓夢は、先ほどから気になっていたことを、静香に尋ねてみることにした。


「……あの、弥生さん。一つ、聞いてもいいですか?」


「静香でいいよ。なんだい?」


「じゃあ、静香さん。進藤さんが割ってしまった茶碗ですけど……相当高そうでしたが、いくらくらいするんですか?」


「ああ、そのことか」


 静香はなーんだ、といった風に頷いた。その様子から、案外そこまで高級品じゃないのかもしれない。拓夢がそう思っていると……。


「あれは著名な陶芸家に、無理を言って作ってもらった至高の天目でね。正直言うと、値段とかそういうものじゃないんだよ」


「な……」


「茶葉も、静岡産ふじやの最高級品を使っているからね。それを含めると、どれだけ安くても……おそらく一千万は下らないんじゃないかなぁ」


「いっ……いっせんまんえんんんんんんんんんんんんっ!?」


 静香の言葉に、拓夢は今日一番の叫び声を上げた。そんなティーセットをポン、と買える生徒会の予算も凄いが、そんな高級品が割れてしまったというのに、アッサリと許せる百合江や静香の度量も凄い。感心すると同時に、底知れぬ生徒会の威信に、恐怖する拓夢であった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です! [気になる点] ティーカップとかなら分かりますが数千万の天目茶碗なんてもんを欲しがるワビサビスキーなJKて・・・・・誰?wwwww その人物とそうなるに至った経緯が知…
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