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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第2章 築かれるハーレム! 拓夢様はわたくしのモノですわ!
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④からかい上手のノエルさん

 聖ジュリアンヌ女学院理事長、神薙夢子から理事長室に来るように伝えられたのは、放課後になってのことだった。

 もちろん拓夢は、すぐに夢子の元へと向かう。

 五階建ての校舎の、一番上の一番奥の部屋。それが理事長室だ。


「いらっしゃい、拓夢君」


 室内に入ると、夢子が持っていた書類を置いて手を振ってくれた。

 赤色のソバージュロングヘア―は、いつ見ても手入れが行き届いていて、雑誌のモデルといっても遜色(そんしょく)ないほどだった。


 同時に、世界中の男を魅了するであろう端正な顔立ち、大抵の服では包み込めないほどの巨乳を宿した絶世の美女こそが、聖ジュリアンヌ女学院を統括する理事長、神薙夢子なのだ。

 

 テーブルについて、適当にお菓子やら紅茶らを準備すると、夢子はさっそく口を開いた。


「どう? この学園には、もう慣れた?」


「正直に言うと、まだ少し不安があります」


「不安……どんな?」


「えっと……庶民同好会の方たちとは大分仲良くなれたんですけど、それ以外の方とは、あんまり……」


 拓夢がそう言うと、夢子は「やっぱりね……」と呟き、背もたれに体を預けた。

 

「こんなことを言うのは失礼かもしれないけど……そのことは、私も気にかけていたのよ。その……拓夢君はあまり、社交的な性格ではないでしょう?」


 夢子の質問に、拓夢は「はい」と頷いた。

 それは生まれついての性格でもあるし、幼いころ義両親に虐待されたという経緯からでもある。


「だから、私考えたの……。今度、『庶民特待生☆スペシャルトークショー』を開催できないかって」


「スペシャル……なんです?」


 拓夢がきょとんと聞き返すと、夢子は真面目に口を開いた。


「講堂を貸し切って、拓夢君をメインとした、簡単な座談会を開きたいの。全生徒対象でね。もちろん、拒否権もあるけど」


「ああ……」


 拓夢は納得したように頷いた。夢子の意図が見えてきたからだ。

 確かに今のままでは、拓夢は特定の生徒としか仲良くせず、その他の生徒とは距離を置いてしまうだろう。


「女子生徒一人一人に舞台に上がってもらって、拓夢君と五分ほどの時間お喋りをしてもらうわ。手っ取り早く打ち解けるには、自己紹介が一番だものね」


 でしょ? と夢子は優しげな視線を送ってきた。包み込むような、慈しむような、聖母の笑顔だった。


「全生徒ともなると、一日では足りないわ。一週間ほどかけて、三学年でサイクルを回していきたいと思うの。参加人数にもよるけど」


 まあ、拓夢君ぐらい可愛い子になれば、女子は全員こぞって参加すると思うけどね~♪ と夢子は、イタズラっぽい笑みを浮かべ、そして拓夢の顔をまじまじと見つめた。


「それで……どう? 拓夢君、承諾してくれる?」


 拓夢は、すぐには答えず考えた。

 本音を言うなら、ためらわれる。女性アレルギーがあるためだ。

 しかしこのままでは、どうしてもサークル内だけの付き合いになってしまうし、そうなっては他の生徒たちから不満の声が上がるだろう。


 結局、拓夢自らスキンシップを取るしか、解決の道はないのだ。

 大丈夫。今の自分には自信がある。転入式早々に気絶した、あの時とはもう違うのだ。


 そう決意すると、拓夢は口を開いた。


「分かりました……引き受けます」


「ハラショー!」


 夢子は大声を上げて、椅子から立ち上がった。

 その瞬間、スーツの谷間に埋もれた巨乳がブルンと震え、拓夢は目を丸くした。


「やあね。そんなに見ないでちょうだい。若い子に見られるのは、恥ずかしいわ」


「ご、ごめんなさいっ」


 クスクス笑う夢子に、拓夢は必死に謝った。


「でも……出来れば控えてください。露出度の高い服とかは、特に……」


「私、もうおばさんよ? それなのに、女性アレルギーってそんなに反応するものなのかしら?」


 あなたは普通のおばさんではありません……そう言いかけて、拓夢は口をつぐんだ。人は自分を卑下する生き物だとよく言うが、この神薙夢子という人物は、自分の魅力にとことん気づいていないのだ。


「でも、よかった。こんなところ、ノエルさんに見られたら何て言われるか……」


「私がなんですか?」


「うわあっ!?」


 声がしたので振り返ってみると、扉の前で両手を下げて組んでいるノエルがいた。いったい、いつの間に来てたのやら。


 不愛想な顔をして立っているこの女子こそが、拓夢の専属メイド、月雨ノエルである。

 ポニーテールにしたサラサラな白銀のロングヘア―と、神のイタズラと見まがうほどに整った美貌を併せ持つが、この通りいつもしかめっ面をしている。


 そんなノエルは、超至近距離で、全力に無表情な顔を拓夢に近づけて言った。


「なんですか。そのお化けでも見たようなリアクションは。普通に不愉快なんですけど」


「す、すみません……。ていうか、ノエルさんいつの間に来たんですか?」


「私は幼い頃からの訓練によって、気配を殺す術を数百種類身につけているのです。おかげで、こうして貴方の無様に驚く顔が見れました……ククク」


「ものすごい嫌な特技ですね……。ていうか、メイドならノックぐらいしてください」


「相応のサービスがほしいなら、チップでもいただきましょうか」


「ないですよ、そんなの」


「ないのですか? 海外のホテルの使用人には、チップを払う風習があるというのに」


「ここは日本です!」


「チッ」


「舌打ちしたよ! 今この人絶対舌打ちしたよ!」


 拓夢は思わずツッコんだ。

 ノエルも、ノリノリでやっている節がある。


「仲良くお喋りしてるところ悪いんだけれども」


 コホン、と咳ばらいをしながら、夢子は割って入った。掛け合いをしていた拓夢とノエルは、ハッと夢子の方を向く。


「この間言っていた拓夢君の家、何とか完成のめどが立ったわよ」


「本当ですか?」


 夢子が言っているのは、学生寮という触れ込みの、拓夢専用の豪邸のことだ。感染症による人手不足で、長らく完成が遅れていたらしい。


「ああ。拓夢様には勿体ないくらいの邸宅のことですか」


 ノエルが失礼な口を挟んでくる。

 

「すごい出来よ。完成予想図を見たけど、ほんとに全生徒が住めるくらい」


「で、その豪邸にこの朴念仁が住むと」


 夢子の説明すると、ノエルがジト目で拓夢を睨んできた。どんどんノエルの中で扱いが雑になっているのは、拓夢の気のせいではないだろう。


「勿体ないっていうか……実感が沸かないんです。自分でも、自分にそんな価値があるだなんて思わないし」


「拓夢君……」


 夢子は、悲しげに目を細めた。


「それに、皆さんには色々とご迷惑をお掛けしていて……。こんな僕が立派なお屋敷に住むだなんて、ありえないですよね」


「あ、いえ……」


 言い過ぎたと思ったのか、ノエルが気まずそうに口をつぐんだ。

 やはり口は悪いが、ノエルはいい人だ。

 普通に考えたら、ノエルのように有能なメイドに住む家を与える方が有意義だろう。


「拓夢君……気を落とさないで。自分の価値なんかに、こだわっちゃダメ。あなたはあなたなんだから」


「夢子さん……ありがとうございます」


 拓夢は微笑んだ。不思議と、夢子に慰められると力が沸いてくる。


「拓夢様。先ほどは言い過ぎました……。真に申し訳ありません」


 そう言って、ノエルが深々と頭を下げてくる。


「そんな……。ノエルさん、頭を上げてください」


「そうですか? じゃあ、遠慮なく」


「切り替えはや!?」


 速攻で顔を上げたノエルを、突っ込む拓夢に、オホホと笑う夢子。なんだかんだで、聖ジュリのみんなは良い人たちばかりだ。いろいろと深く考えてしまったがトークショーとやらも、案外こうして楽しめるかもしれない。

 

 そう思うと、少し気が楽になる拓夢であった。

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[一言] >「えっと……庶民同好会の方たちとは大分仲良くなれたんですけど、それ以外の方とは、あんまり……」 半分は、独占欲剥き出しの桜のせいだと思うw
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