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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第2章 築かれるハーレム! 拓夢様はわたくしのモノですわ!
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①城岡聖薇の憂鬱

「さあ、聖薇ちゃんどんどん食べて~」


 母、佐和子の陽気な声が、リビングに響き渡る。 

 テーブルの上にはエッグマフィンにホットケーキ、ブリオッシュに、フレッシュオレンジジュース、黒トリュフのスクランブルエッグ、燻製サーモンの塩焼き、乳飲み仔羊のタジンなど、豪華な料理がこれでもかと並べられている。


 それらの料理を見下ろしながら聖薇は、「食欲ないし……」とため息をついた。

 

「どうしたの、聖薇ちゃん。ダイエット中?」


「違うって。ホントに、ただ食欲沸かないだけだから」


 聖薇は、首にかけられた金色のネックレスを弄びながら呟いた。


 義兄、拓夢が姿を消してから、およそ一ヵ月が経過した。最初は両親にこれでもかというほど詰め寄ったが、両親は「本当の両親に引き取ってもらった」と答えるだけだった。それが嘘だということはすぐに分かったが、聖薇にはどうしようもなかった。大人たちが用意周到に企てた計画の前では、一人の中学生の娘に出来ることなど、何もないのだ。


「……元気がないなら、お前が欲しがってたものをあげようか?」


 黙々と料理を食べていた父、隆志が、チラリと聖薇を見ながら言った。


「あたしの、欲しいもの?」


「スマホだよ。この間発売された、最新の機種が欲しいと言ってたじゃないか。今度の休み、一緒に買いに行こう」


「そんなの、欲しくないし!」


 聖薇は、顔を背けながら強く否定した。

 立ち上がってテーブルをひっくり返して、料理を床にぶちまけなかっただけでも、我慢した自分を褒めてやりたいくらいだった。


 それぐらい、聖薇は拓夢の失踪に心を痛めていたのだ。


「聖薇ちゃん。拓夢は、もうここにはいないのよ? あの子のことは、早く忘れなさい?」


 そう言って、佐和子は微笑みかけてきた。


「お兄ちゃん……」


 その名前を聞いた瞬間、聖薇の中で不思議と懐かしい感覚が蘇る。


 ――あたしの欲しいものは、お兄ちゃんなんだ……。


 聖薇がずっとイライラしている理由。それは、いなくなった兄の温かさを求めているからだった。


「あ、あたしっ。もう学校行くからっ」


「聖薇ちゃん!?」


 呼び止める母の声も聞かずに、聖薇は急いで荷物をまとめて家を出た。

 外に出た瞬間、聖薇の口からため息が漏れた。

 拓夢はもう帰ってこない。居場所も教えてもらえないから、こちらから会いに行くことも出来ない。


「寂しいよ……」


 霞がかったような、春の青空を見上げながら、聖薇は呟いた。美味しい料理なんてなくていいから、拓夢にいてほしかった。スマホなんて買ってもらえなくていい。拓夢さえいれば。


 それだけで、よかったのだ。


「お兄ちゃん、早く帰ってきてよ……バカ」

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