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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第1章 ようこそ庶民様! 聖ジュリアンヌ女学院へ!
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㉘拓夢の一人ファッションショー ~権力万歳~

 そして、拓夢が連れてこられたのは、ゲストルームだった。

 大型テレビや備え付けの家具、エアコンや床暖房などの機能がついた何十畳もの空間は、「ホテルのスイートルームか?」と勘違いしてしまうほどだった。


 そんな広い部屋は、盛大に賑わっていた。まず目につくのは、壁際の至る所に設置された、パイプハンガーだ。スライド式のラックには様々な洋服やワンポイントアイテムがかけられている。隣に試着室があることもあって、まるでファッションショーの楽屋みたいだ。


 どうしてそう思ったかというと、部屋の隅にLED証明つきのドレッサーがあったからだ。俳優がよくメイクさんにやってもらってるような、ライトつきの鏡台。その上には、コスメティックアクセサリー、化粧品、ドライヤー、アイロンなど、まさに衣裳部屋にふさわしい設備だ。


 さらにさらに驚くべきことに、部屋の中央には、カットチェアが置かれていた。これまたミラーつきのスタイリングテーブルには、ハサミ、シザースタンド、コーム、ヘアトリートメントなど。拓夢が見たこともないような、オシャレなスタイリングルームと化していた。


 そしてそのオシャレな空間に似合う、ハイセンスな美男が1人と美女が2人。


「――君が城岡君かい? 今日はよろしくね」


「えー、やだやだぁ。想像してたよりずっと可愛いぃん♪」


「ほんと、うちの事務所に引き抜きたいくらいだわっ!」


 計3人の男女が、それぞれ話しかけてきた。

 全員見た顔だ。

 

 最初に話しかけてきた男は、美容師の鈴木聖示。鈴木聖示といえば、一日に何百と予約が入るという、カリスマ美容師だ。TVで何度か見たことがある。


 その次に話しかけてきた女性は、南家れもん。女性誌などでたびたび見かける、アイドルやアーティスト、俳優など、数々の有名人を導いてきた、若者たちのファッションリーダーだ。


 ラストの女性が、藤原美里。世の中の男性を何人も美しく磨きあげてきた、美の伝道師。ハリウッドのメイクアップアーティストであり、自身も化粧品メーカーを経営している、凄腕のアーティスト。


 芸能界で活躍する一流の有名人たちが、こぞって拓夢のことを話題にしている。

 恥ずかしいを通り越して、息苦しいくらいだ。


「ど、ど……どういうことなんですか? 桜さん?」


 たまらず、拓夢は桜に話しかけた。

 桜は答える。


「思ったんだけどね~。拓夢くんが周りに馴染めない理由って、その見た目にあると思うの。前髪とメガネが邪魔して、顔がよく見えないし。ちょっと暗い感じ? だから拓夢くんの見た目が変われば、みんなも拓夢くんともっと話しやすくなると思うの!」


 桜は興奮ぎみに、両手を顔の前で握りしめながら力説した。


「だからね? わたしが彼女達を貸し切りで呼んだんだぁ。今日はみぃ~んな、拓夢くん専属のアーティストだよっ!」


「そっ、そんな! それって権力乱用ですよ! みなさんお忙しい中、僕なんかの為にわざわざ……」


「固いこと言わない! お金を払って雇ったんだから、みんな仕事で来てるんだよ? それにね? みんな拓夢くんに会えるの、すっごく楽しみにしてたんだからッ!」


 桜の言ってることが真実ならば、拓夢の為に大金を支払ってることになる。

 洋服も、カットアイテムも、メイク道具も。それらを含めると、家一軒が買えるだけの額が動いてるのではないだろうか?


 拓夢が愕然としていると、何やら部屋の隅が騒がしかった。


「じゃあ、どうする~? まずは、ヘアカットから始めていいかな~?」


 最初に提案したのは、鈴木だった。


「そうだね~。それによって、コーディネートとか変わってくるし」


「じゃあ、私はその色でまとめた、ワントーンメイクで合わせてみようかしら」


 れもん、美里と、口々に答える。

 どうやら、作業の優先順位を決めてるらしい。

 自分の意見を無視して話を進められてる現状に、拓夢は釈然としなかった。


「あ、あの……僕やっぱり……」


「よし、城岡君! まずは君の髪を洗っちゃうから! シャンプー台に座って!」


 店員としての血が騒ぐのか、鈴木は馴れた手つきで拓夢を椅子に座らせると、前かけを被せた。

 それから手早く拓夢の髪を洗いはじめる。その熟練の手さばきに、拓夢は黙ってされるがままになるしかなかった。


「お客様? かゆいところはございませんか~?」


「だ、大丈夫です……」


 そう答えるしかないぐらい、鈴木の洗髪は見事だった。


「ていうか鈴木さん、いいんですか? いくら仕事とはいえ。天下の鈴木さんが、僕みたいな庶民のために、こんな……」


「いいっていいって。加々美のお嬢様に頼まれたってのもあるけど、ホントのところはさ、君の髪に興味が沸いたからなんだよね。ほら、このハリ、ツヤ、コシ。ちょっと触っただけでも分かる。君は逸材だよ。うちにも欲しいくらい」


「その。さっきから皆さん、僕のこと欲しい欲しいって言ってるのが、少し気になるんですが……」


「ああ、気にしないで。言葉のあやってやつだから。君をうちの専属モデルに引き抜こうだなんて、そんなことはちーっとも考えてないからねっ」


「マ、マジですか……?」


 うん、マジ。鈴木はそう言うが、目は笑っていなかった。その間にも、南家れもんはスタイリング剤の準備を進めていたり、藤原美里はマネキンを使ってコーディネートのイメージをしたりと、仕事に余念がない。


 数々の有名人を輩出してきた三人は、拓夢に何を見出しているのだろうか。

 桜も桜で、何を考えているか全く分からない。イイ人なのは確かだが、底知れない雰囲気もある。


 拓夢が考え事をしてる間に、シャンプーは終わったようだ。


「はい、終わり。じゃあ次は、軽くブローしていくからね。お疲れ様でした~!!」


「お疲れ様で~す!」


「お疲れ様でしたー!!」


 鈴木の威勢のいい声に、れもんと美里も山びこ返しをする。そんな一同を、桜はニコニコしながら眺めている。そして、拓夢をカット台に座らせると同時に、ヘアブラシとドライヤーを器用に操り、ブローしていく鈴木。


 もはや抵抗する意思も消え失せた拓夢は、ゆっくりと目を閉じ、背もたれに身をゆだねるのであった……。

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