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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第1章 ようこそ庶民様! 聖ジュリアンヌ女学院へ!
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⑱勝負ですわ!

 朝のHRも終わり、一時間目の授業。

 体育の授業なので、拓夢らB組のクラスメート達は、アーチェリー場へと向かった。


 体操服に着替えて、レーンと的がある芝生広場まで来たのは、拓夢が一番先だった。女子と男子とでは着替えるスピードが違うので、仕方ないかもしれないが。


 それでも続々と着替えを済ませてやってくる女子の中、


「遅れて申し訳ありませんわ」


 最後に会場にやってきたのは、真莉亜だった。すると、女子生徒から歓声が上がる。


「お待ちしておりましたわー! 真莉亜お嬢様ー!」


「ああ……真莉亜お嬢様の体操服姿……なんて神々しいんですの……」


 彼女が姿を見せただけで、広場はパニックと呼んでいいほどの悲鳴に包まれた。

 有栖川真莉亜(ありすがわまりあ)。常にお上品な態度を崩さない生粋のお嬢様である彼女は、学園でも一、二を争うお金持ちであり、また学園の人気を独占する『四天使』の一人でもある。


 そして、由緒ある有栖川家の子女として沢山の習い事をこなす彼女を、拓夢としてはとても心配しているのだった。


「真莉亜お嬢様……わたくし、あんまり遅いから心配になって。誘拐にでもあわれてしまったのではないかと……」


「ご心配をおかけして、申し訳ありませんわ」


「い、いえそんな! 私のほうこそ、出過ぎたことを申し上げてしまいました! この通り、お詫びいたしますわ!」


「いいんですのよ。皆さまも、そう気を遣わないでくださいまし」


 真莉亜がニッコリ微笑みかけると、先ほどよりも一段と大きな歓声が響き渡った。まるで人気アイドルを前にしたファンのように女子生徒達は次々と真莉亜を褒めちぎる。


「真莉亜お嬢様に微笑みかけていただけるなんて、一生の思い出ですわあ」


「落ち着いてくださいまし。あんまり騒ぎすぎると、真莉亜お嬢様に嫌われてしまいますわ」


「そんなの嫌ですわー!」


 折れんばかりに首を振る女子生徒達を、拓夢はドン引きしながら見ていた。

 今日は、昨日と違って二年B組で授業を受けている。大人しいA組とは対照的に、このB組はやたらと元気がいい。それは、いいのだが……。


「城岡さま。本日は、よろしくお願いいたしますわ」


「あ、有栖川お嬢様……よろしく、おねがいしますっ」


 淑やかに挨拶をする真莉亜に、拓夢はテンパりながら返事をした。それだけで女子生徒からは羨望と嫉妬の声が上がるのだが、当の本人はどこ吹く風だ。


 二年B組を的確に表現するなら『女王・有栖川真莉亜とそのお供達』であろう。

 もちろん、真莉亜に偉ぶったり人を見下したりということはない。

 彼女自身の放つオーラが、無意識に人を惹きつけるのだ。

 

 お嬢様ばかりの聖ジュリアンヌ女学院の中でも生粋のセレブ、さらに彼女自身も才能の固まりのようなお嬢様なので、尊敬を集めてしまうのは無理からぬことだが。


 拓夢としては、四天使の中で最も苦手とする人物だった。真性のお嬢様で、つかみどころのない性格、浮世離れした考え方といい、とにかく調子が狂う。


 拓夢の心境を知ってか知らずか、真莉亜は花のように可憐な笑みを向けてきた。


「おたがいに、頑張りましょうね」


 その笑みを見ただけで、また「キャーッ!」と悲鳴が轟く。

 それも無理はない。この優しく、慈しむような美しい笑顔。同性でさえ虜にしてしまうほどの威力だった。

 しかし、拓夢としては全く別の感情を持っていた。


 確かに、真莉亜は美しいと思う。心惹かれるのも事実だ。しかし、女性アレルギーもあって、あまりそばに寄りたくないというのが本音だ。


 真莉亜は、美しすぎるのだ。そして、相手が綺麗であればあるほど、拓夢のアレルギーは激しく反応してしまう。


 そうこうしてる内に授業が始まり、生徒たちは思い思いに、的に向かって矢を打ち出していく。

 お嬢様のたしなみということもあり、皆それぞれに射形が整っていた。

 中でも群を抜いていたのは、やはり真莉亜だ。


「キャー! 真莉亜お嬢様が、また中心に当てられましたわー!」


「100mも離れているというのに、なんという正確さでしょう!」


「本当に、真莉亜お嬢様は天才ですわ!」


「うふふ。みなさま、そうおだてないでくださいまし」


 皆からの喝采を、真莉亜は優雅に受け止める中、


「えーと、足を開くのが、スタンス……。胴を構えるのが、セット……」


 拓夢はつたないながらも、初心者用の的を使って一人練習していた。

 なにせ、庶民の拓夢はアーチェリーなどというオシャレなスポーツをしたことがないのだ。当然、真莉亜は別格としても、他の女子生徒と比べて尚、雲泥の差なのだ。自分の無力さ加減に、ため息をつきそうになる。


「ほら、城岡君。集中力が途切れているわよ?」


「は、はい! すみません先生!」


 体育担当教師に咎められ、拓夢は慌てて謝罪した。初心者用の使いやすい弓を持ち、一番近い30mの距離から打っているのに、まるで的に当たらない。教えてもらったフォームも、打つたびに崩れるのだ。やっぱり、お嬢様のスポーツは難しいなあ、と巧は思う。


「はいはい、それじゃ、試合はじめるわよ」


 体育教師が手を叩いて、生徒達に召集をかけた。


「6セットを先に取った方が勝ち。1セットは20秒以内に1射を3回行って、合計得点の高い方が2セット先取! 同点なら1セットずつね!」


 拓夢もいるので、体育教師はかなり丁寧に説明をした。初心者の拓夢にとっては、実戦を間近で見られるのは、参考になってとてもありがたい。


「それじゃあ、第1戦目! せっかくだから、庶民特待生の城岡拓夢君。いってみましょうか?」


「う……マジですか」


 まさか自分が選ばれるとは思っていなかったので、拓夢は苦い声を漏らした。まあ考えようによっては、実戦形式で矢を射るのは、体で覚えられて効率的と言えなくもない。問題は、対戦相手が誰かということなのだが……。


「お相手は、やっぱり有栖川さんにお願いしようかしら?」


「マジですか!!」


 ――キャアアアアアアアアアアアアアア!! 

 今までで一段大きな悲鳴が響き渡る。

 拓夢は、おそるおそる真莉亜に目を向けると……。


「うふふ……面白いですわね」


 彼女は、ゴージャスな笑みを携え、


「城岡さまがお相手とは。庶民の実力がどれほどのものか、楽しみで仕方ありませんわね。この有栖川真莉亜。有栖川家の名にかけて、全身全霊をかけてお相手いたしますわ」


 ……と、実にやる気まんまんな真莉亜なのであった。

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