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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第3章 うずまく陰謀! 拓夢出生の秘密!
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㊾はい、ポーズ♡ 一緒にプリクラ!らくがき!

「ごめんね、拓夢くん。女性アレルギーのこと、すっかり忘れちゃって」


 絹糸のような髪が胸元にかかるほど深く、桜はお辞儀をした。

 亜麻色の髪から除くキラリとしたつむじはとても美しく。

 数秒ほどしてから上げた、申し訳なさそうに潤ませるパッチリとした目はとにかく可愛い。


 拓夢は言った。


「いえ、いいんですよ。それより、次のアトラクションに行きましょう。今度はもう少し、大人しい所へ、ね――」


 ということで、やってきたのはプリクラだった。

 プリント倶楽部。略してプリクラ。

 シール状に分割された写真を印刷する機械、またはその写真そのものを差す。

 ようは、ゲームセンターなどでよく置いてある写真機だ。お嬢様にプリクラとかどうなの? とも思ったが、まあ動きの少ない施設というと、他にあまりない。


 当の桜は、両目を星のように輝かせながら、騒がしい音がする長方形の機械を前に興奮した様子でキョロキョロしていた。


「これがプリクラかぁ―――――――――――――」


 興味津々、といった風に、桜ははしゃぎながら言った。

 拓夢は桜の隣に立ち、プリクラの機械を眺めた。

 すっかり酔ってしまった拓夢を気遣って、次はあまり酔わないアトラクションにしよう! ということで、幾つか候補を上げてみたのだ。

 シアター、パレード、メリーゴーランド……その中から、即答で桜が選んだのが、このプリクラだった。

 お嬢様らしく、友達とプリクラを撮る習慣がなく、今日ここで拓夢と撮影するのが初めてだという。


 だからなのか、桜はとっても嬉しそうだ。

 

「もーっ、拓夢くん、何ボーッとしてるの? 早くこっち来てよッッッッ!!!!」


 先に写真機の中に入っていた桜が、カーテンの隙間からヒョッコリ顔だけ出して言った。

 今にも待ちきれない、といったハツラツとした表情だ。


「はいはい。今行きますよ」


 拓夢は早足で小さめの階段を上り、撮影ブースに入る。


「あー……そっか、これお金かかるんだ」


 先にガチャガチャと画面を触っていた桜が呟く。


「ごめんねー。わたし、プリクラやったことないから。いくらぐらいかかるの?」


「いいですよ、僕が払うからっ」


「それじゃ悪いよ。わたしも半分だけ出すね」


「いいですって」


「百万でいい?」


「だからいら――って、高っ!?」


 そんなにかからないですよ、とツッコミを入れながら、拓夢は機械の投入口にお金をジャラジャラと流し込む。すると音声が流れ始め、画面が動き始めた。


「わたしっ! わたしがやってみたいッッ!!」


 はい、はい! と手を上げる桜に「どうぞ」と操作を譲る拓夢。会社のロゴやPR動画が終わると、操作説明のマニュアルが表示される。撮影する人数、撮影回数、出てくる写真の分割枚数、ハイアングルにするかローアングルにするか、整形並みに顔の加工が出来る「盛れ盛れモード」か「無加工モード」にするか、など。


「よしっ、これでOKッッッ!!!」


 諸々の設定を終えると、桜は床に書かれた立ち位置を表す足跡マークの上に立った。


「ほらッ! 拓夢くんも早くッッ!!」


 そう言われ、拓夢は慌てる。画面からは、「ポーズを取ってね!」というボイスが流れてきているのだ。

 拓夢も実は異性とプリクラなど撮ったことはなく、聞きかじりの知識でうっすらと知っているだけだというのに。


「ポーズかぁ……。どんなポーズを取ればいいの?」


 聞かれて焦る。

 

(ポーズって何? そんなの取ったことないよ!?)


――3,2,1……。


 カウントダウンも進む中、いよいよパニくる拓夢の腕に、桜は自らの腕を絡めてきた。


「やっぱり、プリクラといえば腕組みだよねっ♪」


「なっ――――」


 なんで?

 どうして?

 

(なんで僕の腕に、自分の腕を絡めてくるの!?)


 女性アレルギーのことは、散々言ってきた。さっきも同じように接触をして来て拓夢を失神させた。それなのに、どうしてまたくっついてくる?


「や、止めてください! 桜さん!」


 拓夢は慌てて体を離した。

 その瞬間、パシャリという音が鳴った。


「あ……」


 突き飛ばされた桜は、両手の平を顔の前で合わせ、「ごめんね」と謝った。


「でも、ちょっと腕を組むだけでもダメなんだ? それじゃ、何も出来ないよ?」


「そ、そんなこと言われても、アレルギーなんだから仕方ないじゃないですか」


 そんな言い合いをしているうちに、『次のポーズを決めてね!』というボイスが流れてくる。


「あ、次の撮影が始まるよ。じゃあ、どんなポーズがいい? 直接触れ合うのがダメなら、私にキスを迫ろうとしてるポーズとかどう?」


「いやいや……それはポーズではないでしょう」


「デート記念に、お互いのヌードを撮影し合うのもいいよねッッ」


「よくないよ!」


 そんな変態なことしてたら追い出されるよ! とツッコんだところで、またしてもパシャリ、と漫才をしてる所を撮影されてしまった。


「じゃあ、下着姿ならいい?」


「そういう問題じゃないですって……」


 頭を抱える拓夢。というか、さっきからマトモなプリクラを一枚も撮れていない。

 ――さあ、次はピースをしてね!

 またしてもボイスが流れる。今度はポーズの指定つきだ。


「ふっふん。拓夢くんは分かってないね。わたしはこの遊園地の代表取締役社長の娘なんだよ? その気になれば、遊園地丸ごと一日中貸し切りにすることだって出来るんだから」


「そんなのダメですよ! ……ていうか、いいんですか? また撮影終わっちゃいますよ?」


「よくなーい♪」


 拓夢が指摘すると、素早く桜は、右頬の横にピースサインを置き、首を傾げ、上目遣いにカメラを覗くと最高の笑顔を作った。あまりにも完璧な表情はまさにモデル、アイドル……。


「あーっ、拓夢くんもやらないと~~~~ッッ」


 一人ドキドキしながら間抜け面をしていた拓夢に、桜は不満げに口をすぼめる。


 ――ラスト一枚だね。最後は二人でハートを作ってみよっか♡

 機械からラストの撮影を告げる音声が流れてくる。


「あ! 言い争いをしてる場合じゃないッ!」


 桜は慌てて拓夢に向き直ると、


「じゃあ、わたしが指を曲げて『C』の字を作るから、拓夢くんは反対側からそれをやって! 指はピッタリ合わせないで少し隙間を作れば、女性アレルギーも発症しないでしょう!?」


「ま、まあ……それなら、いいですけど……」

 

 言われた通りのポーズを取る拓夢。

 お互いの指でハートを作るなんてことは、少し恥ずかしくもあったが。


――3,2,1……はい♡


 パシャリという音と共に、表情豊かな桜の笑顔が凄く眩しく撮れたので、それでよしとする。


「やったっ! 最後のはバッチリ決まったよねッッ!!」


 決め顔をポーズを崩しながら桜がはしゃぐ。

 と、そこで「次はらくがきブースに移動してね!」というアナウンスがされる。


「なに? らくがきって」


「ああ、写真にペンを使って、落書きしたりスタンプを貼れたりするんですよ」


 こっちです、と拓夢が案内すると、桜は隣のブースへと移動する。

 そこには大きな液晶モニターが設置されており、両側にはペンが置かれていた。


「えっ!? どーすればいいの、これッッッ!!!」


「このペンで落書きするんですよ。見ててください」


 基本的にはカラーを決めてペンで文字を書く。間違えた場合は矢印ボタンで一つ前に戻れる。背景をカラフルにしたりキュートな感じにも出来るし、映ってる人物の目を大きくしたり小さくしたりと、変幻自在だ。


 あとはスタンプ機能といって、ハートやら星マークやら可愛らしいキャラクターやらのスタンプを、画面の中で貼ることが出来る……とまあ色々な機能があるのだが、制限時間が三分と決まっている為、意外と使いこなすことは難しい。


「おお~~~~ッッ。すっご――――い」


 説明を聞き終えた桜はペンを握りしめると、感動した様子でプリクラに落書きを始めた。


「う~~ん。なんて書こうっかな~~~~」


「何か困ってます?」


 拓夢が画面を覗き込もうとすると、


「ダメッッッ!!! まだ書いてるんだから見ないでッッ!!」


 と、頬をぷくーっと膨らませて怒られてしまう。


「で、でも、もう時間が……」


「い――――――からッ。出来上がるまで見ないでッッ!!」


 桜にそう言われたので、拓夢は少し距離をとって見物してみる。可愛らしい動物や記号のスタンプよりも文字の方が好きなようで、先ほどから真剣な様子で何か書いている。

 

「スタンプは……今日の日付ので……これで……よしッッ!!」


「お、出来ましたか」


 時間ギリギリまで使った桜のらくがきタイムは終了した。

 ――今作成中だから、ちょっと待っててね! そんなアナウンスが画面から流れる。


「終わったようですね」


 外の取り出し口に向かうと、小さめの写真がピョコンとはみ出ている。


「見せて見せて見せて!!!!!」


 出てきたプリクラを拓夢が掴むと、猛烈な勢いで桜がそれを奪い取った。

 奪われたプリクラが、チラッと拓夢の目に映った。そこには――


「あの……なんか今、『わたしの彼氏♡』とか、『わたし達婚約中♡』とか書かれてなかったですか!? 嘘はダメですよ!!」


「え、なにが?」


「だから――」


 僕達、付き合ってないじゃないですか! とは言わなかった。そもそもただのプリクラだし、桜も半分お遊びでデコったのだろう。

 大体、


「拓夢くん拓夢くん拓夢くんっ!」


 桜が猫のように目をキラキラさせながらプリクラをふりふりと振り回しながら小躍りしていた。これだけ喜んでもらえると、そんなものは捨ててくださいなどとは言えない。


「あ、はは……。可愛く撮れてて、よかったですね、桜さん」


 仕方なく、愛想笑いを浮かべて手を振ってやると、


「拓夢く――――――――んッッ!!」


「え……な、なに?」


「えいっ」


 桜はイタズラっぽい笑みを浮かべながら、プリクラの裏面のシールを剥がすと、拓夢の頬に貼り付けた。


「もう、イタズラは止めてくださいよ……」


 苦笑しながら拓夢が、プリクラを剥がして自分のスマホの裏面に貼り付けた時だった。


「あぁっ!!」


「こ、今度はなんですか!?」


 短い叫び声を上げた桜に、拓夢は問いかけた。


「えへへ。すっかり忘れてた……」


「はい? なにがですか?」


 拓夢がそう尋ねた刹那。

 桜は問いに答えず、拓夢の服の袖を引っ張って歩き始めた。


「あ、あの、桜さん!?」


「いくよ、拓夢くんッッ!!」


「い、行くって、どこへ!?」


 四回目の拓夢の問いかけに、やっと桜が答える。


「この遊園地で、一番素敵な所にだよっ!」


「へ……?」


 ハテナマークを頭上に浮かべる拓夢をほっといて、桜はどんどん歩くスピードを早める。


「こんなんじゃ、ダメ! 拓夢くん、もっと早く動いてッッ!!」


「だから、なんでですか!? 一体、どこに行くんですか?」


「…………いいトコ」


「なるほど、ぜんぜん分からないですっ!」


 夕日が沈みかけ、黒ずみかかった空の下で、桜は拓夢を今日一日最後のアトラクションへと付き合わせるのであった。


 

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