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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第3章 うずまく陰謀! 拓夢出生の秘密!
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㊷やさしいマナー講座

 それぞれが席につくと、目の前に菓子鉢に入った菓子が運ばれて来た。

 

「キャー! おいしそ~♡ いただきま~す♪」


 キャッキャッとくるみは、桜餅を手に取るとパクついた。

 すると、


「姫乃咲さん。はしたないですわよ」


 隣に座るつかさが、横目で見ながらたしなめた。


「ふ、ふえ! くるみ、何かダメでしたか!?」


 目を丸くするくるみに、つかさは粛然(しゅくぜん)と指摘をする。


「菓子は、亭主から「どうぞ」と勧められてから手を伸ばすのです。それが、令嬢としての礼儀なのですよ?」


『令嬢』という言葉に、くるみの肩はピクリとする。


「じゃ、じゃあくるみは、お嬢様っぽくなかったですか……?」


「はい。こういう時は、器を持ち、「ちょうだいいたします」と頭を下げるのも常識です。それと、一口で食べてしまわれるのも失礼なので、まず菓子を懐紙(かいし)の上に移してから菓子楊枝を使い、一口大に切り分けて頂くのが、(おもむき)のある作法というものですわ」


 つかさは気品のある様子を少しも崩さずに注意をした。くるみは拓夢に視線を向けるが、「くるみちゃんが悪いよ」というような顔をされたので、ガーンとなる。

 するとそこに、


「まあまあ。よいではありませんか。大切なことは、和の心を楽しんでいただくことですわ。姫乃咲様も、城岡様も。大したおもてなしも出来ませんが、ごゆるりとおくつろぎください」


 と、さつ希が隣の水屋から茶道具を運んできた。三年生で部長でもある彼女は、茶道の素人に対しての扱いが慣れているのだろう。先ほどから無作法を働くくるみにも、寛大な心で接している。


「しかし、さつ希お姉さま。こうした作法はしっかりと――」


「それぐらいになさって。せっかく庶民様もいらっしゃっているのですから。恐縮(きょうしゅく)などさせてしまっては、それこそ茶道部の名折れというものですわ」


 そう言うと、さつ希は柔和な笑みを浮かべ、つかさもまた「失礼いたしました」と頭を深々と下げ、くるみと拓夢に詫びた。その様子を見て拓夢は思った。やはり茶道はいいものだ、と。この清廉なる作法を身に着けた彼女達から和の心を学べば、確かにお嬢様への道はそう遠くないかもしれない。


「それでは。城岡様とつかささんも、召し上がって。道明寺粉で包んだ、桜餅ですのよ」


「どうぞ」と菓子が乗った盆を差し出されるので、慌てて拓夢は「頂戴いたします」と言って頭を下げた。そのまま桜餅を口にくわえる。


 まず感じるのが、桜の葉のしょっぱさ。次に感じるのは、ふっくらモチモチとした歯触りが楽しい餅米の粒感だ。最後に淑やかな甘みが喉の奥を通り過ぎていく。まさしく名品級のおいしさだ。くるみが騒ぎ出すのも、分からないではなかった。


 そんなこんなでしばらくの間。誰もが無言で菓子を食べていたが、ふいにさつ希が口を開いた。

 

「それでは。お茶を淹れさせていただきますわね」 

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