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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第3章 うずまく陰謀! 拓夢出生の秘密!
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㊶波乱のお茶会

 拓夢とくるみは、部室である作法室へと向かった。その扉の前には、


「ようこそ。お待ちしておりました……城岡様、姫乃咲様」


 着物を着た、二人の女性が待っていた。


「私は茶道部の部長で、道明寺さつ希と申します。ようこそお越しくださいました」


 そう言って頭を下げるさつ希は、黒髪ロングのキリッとした美人で、モダンっぽい桜色柄の着物を着ている。流水紋に散りばめられたピンクの桜模様が、凛とした様子とよく似合っていた。


「わたくしは副部長の、宮ノ森つかさと申します。本日はよろしくお願いいたしますわね」


 続いて頭を下げたつかさは、マロンブラウンのミディアムヘアーで、肩までかかる毛先を巻き髪にした、見るからにお嬢様といったタイプ。そのふんわりとした印象に合った薄緑色の着物を着ている。柄は古典柄だ。


「はーい! 姫乃咲くるみでーす! よろしくお願いするです!」


「し、城岡拓夢です……。くるみちゃんの付き添いで来ました」


 と挨拶をすると、二人の美女は拓夢に視線を向けた。


「……お姉さま。この方が……」


「……ええ。そうらしいですね」


 何て、怪しげに耳打ちなどしている。


「あ、あの。なにか……?」


「拓夢先輩が、何か失礼なことしましたか……?」


 尋ねると、二人は耳打ちを止めて拓夢を見た。

 その時、薄いリップを塗った唇が、艶やかに歪んだ。


「あ、あの……」


「いえ。なんでもありませんわ」


 柳眉を上げて、爽やかな笑みを浮かべるさつ希。つかさも、「つい緊張してしまって……」と困り笑顔を作りながら言う。

 

「ああ、そうですよね。何か僕有名人みたいだから。でも、僕の方が緊張しますよ。こんな綺麗な方たちと一緒に、お茶を飲むなんて」


「んもう、拓夢先輩ったら~。こんな綺麗なお姉さま達が、拓夢先輩を相手にするわけないじゃないですかぁ。ちょっと自意識過剰すぎですよぉ」


 狼狽える拓夢の脇腹を軽く突きながら、くるみが笑う。

 その様子を見て、茶道部の二人は眉をひそめる。


「……しなくては」


「……ええ、そうですわね」


 再び聞き取れないような小声で内緒話を始める。


「申し訳ございません。本当に何でもないんですのよ」


 怪訝に思う拓夢に先手取り、部長のさつ希が頭を下げる。


「それでは参りましょうか」


 さつ希が声をかけると各々が頷いて、茶室の中へと入っていった。

 中は八畳半ほどの和室と十五畳の広間に分かれてて、それぞれを(ふすま)で仕切られている。床には緋毛氈(ひもうせん)と呼ばれる来客用の赤いカーペットのようなものが敷かれていて、今回はここでお世話になるらしい。


 高そうな掛け軸の他には、花瓶に生けられた花、茶葉を入れておく(なつめ)という茶器、お湯を入れておく水差し、茶をすくって入れる茶杓、お湯を沸かす茶釜、抹茶を()てる茶筅(ちゃせん)などが置かれているといった、簡素な部屋だった。


「わぁー! すっごーい! くるみ、茶室に入るの、初めてですぅ!! うぅ――ん、わびさび~~~~♡」


 くるみはクルクル回りながら、畳の感触や、木目の匂いなどを噛みしめている。

 はしゃぐ気持ちも分かるのだが……


「姫乃咲様」


「は、はい! なんでしょう!?」


 突然声をかけられ、おっかなびっくりで振り返るくるみに、つかさは淑やかに笑いながら指摘をした。


「畳の上というのは、そのように音を立てて歩かないものなんですよ。すり足で静かに、しかし畳を擦りすぎないよう歩いてくださいませ」


「……うう。ごめんなさいです……」


 音を立てるどころか、ドカドカ走ってオマケにターンまで決めてしまった自分としては、謝る他はない。そう言われてみれば、歩きにくそうな白い足袋(たび)を履いているのに、二人は全く物音を立てていなかった。


「それにしても」と微笑みながらつかさは拓夢に向き合う。


「城岡様は、流石でいらっしゃいますわね」


「え? 僕ですか?」


(かかと)を立てず、音を立てないよう注意して歩いていらっしゃいましたね?」


「ああ……いや……」


「それに畳が傷まないよう、縁を避けておられたのにも、お心遣いを感じましたわ」


「……テレビで見たことがあるだけですよ。そんなに大したことしてません」


「まあ♡ 謙虚でいらっしゃいますわね♡」


 つかさは優雅に微笑みながら言った。程よく近づけられる整った顔から、漂ってくる清潔な香り。ドキドキしながら、「僕はただの客なんだ……」と、必死に自分に言い聞かせる。


「それでは皆さま。お座りくださいませ」


 さつ希の声に、各々が座布団の上に座る。当然のことながら、正座だ。しかし、くるみは苦い顔をしながら、


「え~~? くるみ、正座苦手です~」


「こらっ、くるみちゃん。足なんか崩しちゃダメだよ?」


「でも~」


「素敵なレディになるんでしょ?」


 拓夢がたしなめるとようやく、くるみは「はぁ~~い」と正座をした。

 今からこんなことで大丈夫だろうか。本当に、これで本物のお嬢様になれるのだろうか。今から心の内に暗雲が垂れ込める拓夢であった。

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