㊴デートしようよ
「それはそうと拓夢くん。わたしとのデートの約束、考えてくれた?」
桜は上機嫌にそう尋ねてきた。
日頃、桜からお世話になっている拓夢は、ご褒美にデートをしてあげる約束をしていたのだった。もちろんプラン、エスコートを含めて全て拓夢主導だ。
なので、その進捗はどうなのかと尋ねたのだが、
「あ、その件ですけど……今度の休日って空いてます?」
「うんうん!」
拓夢の質問に、桜は嬉々として頷く。
「じゃあ、『チェリー・ブロッサム・ハイランド』ってとこでどうですか?」
「チェリー・ブロッサム・ハイランド……?」
なぜか桜は、きょとんとした顔でオウム返しをした。
その様子を見て、拓夢もまた首を傾げた。
チェリー・ブロッサム・ハイランドといえば、若者に絶大な人気を誇る、国内でも最大級のアミューズメント・パークだ。それなのに、桜の反応はなぜか微妙だ。
「あの、イヤだったら、別の場所にしても……「そんなことないッッ!!」」
拓夢の提案を、桜は大声で制止した。
「あの……嬉しいよ。拓夢くん、ありがとね……」
そう言うと、太もものあたりで指を組み合わせ、もじもじした。
デートの予定を聞いただけで頬を赤らめるなんて、まさに恋する乙女。
こんな風に女の子とデートする日が自分にも来るとは。しかしながら女性アレルギーがあるので体に触れることは出来ない。自分の体質に、今日ほど後悔した日はなかった。
しかしながら、ここまで楽しみにしてくれてる桜の為にも、当日は精一杯ホスト役を務めよう。
「じゃあ、今度の休日、13時に。場所は、現地集合ってことで。いいですか?」
「うん! 楽しみにしてるからねええええぇぇええええええッッ!」
食堂中に響き渡るような声で返事をする桜に、拓夢もまた微笑みで返すのであった。