表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第3章 うずまく陰謀! 拓夢出生の秘密!
129/136

㊲交換写真

 しばらく気絶した後。


「えっと、確認なんだけど……聖薇がどうして、ここにいるの?」


 ベッドで自分のことを甲斐甲斐しく介抱する聖薇に向けて、拓夢は尋ねた。


「ふえ? え、えっと……」


 聖薇はすぐには答えなかった。


「いつも朝は、ノエルが起こしにくることになってるんだけど……」


 ノエル、の言葉を出すと、聖薇の肩がピクリと動いた。


「もしかしてこれも、校外学習の内の一つなの?」


 拓夢の言う郊外学習とは。

 聖ジュリアンヌ女学院に潜入した聖薇が、夢子から受けた提案である。

 庶民同好会の「郊外部員」として、学園への立ち入りを特別に許可してもらっていたのだった。

 しかしそれには、庶民同好会顧問のノエルの許可が必要なはずである。そしてメイドであるノエルが許可したからには、主である自分に報告がいくはずだ。


 拓夢が混乱したのは、そういう事情があったからだった。つまり、いるはずのない人物がいるはずのない場所にいる。寝起きということもあってか、ますます頭がこんがらがる。


 拓夢が頭から煙を出していると、ようやく聖薇が口を開いた。


「う、うん! ちゃんとノエルさんの許可も取ってるよ!」


「そ、そっか」


 思わず頷く拓夢だったが、すぐに疑問が湧いてきた。


 ――聖薇とノエルって、仲悪くなかったっけ?

 

 自分を追ってこの学園まで潜入してきた聖薇を、力づくで排除しようとしたノエルだ。ノエルからすれば聖薇は、憎き恋敵なのだ。朝の奉仕を譲るとはどうも考えにくい。


(まあ、仲良くしてるならどうでもいいんだけどね――って、ぇええええええ!)


 拓夢は聖薇の足元に落ちている写真を見て、心の中で絶句した。


「ノエルさんとは、上手くいってるの! だからね、お兄ちゃんが心配するようなこと、なーんにもないんだよっ!」


 聖薇がニッコリと明るく笑って言うが、正直それどころではなかった。

 聖薇の足元に落ちている写真……そこには、裸でシャワーを浴びる拓夢が映っていた。

 拓夢は呆気に取られたまま、その写真を見つめる。


「……?」


 不思議そうに聖薇は眺めていたが、拓夢の視線を追って自分の足元を見下ろしてみる、と。


「……………………………………………………あ」


 小さく呟くと聖薇は即座にササササッ! と擬音が鳴りそうなほど素早く写真を拾い上げると、エプロンの内ポケットに突っ込んだ。

 そして、実に爽やかな笑みを浮かべると、


「……コレ? お兄ちゃんソックリなアイドルの、ドッキリ生写真☆」


「絶対違うよね!!!!」


 てへっ♡と可愛く舌を出す聖薇に、たまらず拓夢は叫んだ。

 どう考えても、アイドルの写真ではない。

 お風呂場の雰囲気からして、城岡家にいた頃だ。もちろん、撮影などさせた覚えはない。


 と、いうことは……。


「うううううっ~~~~~~~~~~~!! なにその目!!」


 聖薇がうなる。

 しかし拓夢は、それどころではなかった。


「聖薇……おまえ、もしかして僕のことをずっと、盗撮……」


「お、お、お、お、お、お、お兄ちゃん!!」


 聖薇は目を泳がせる。


「こ、これは違うの……。えっとぉ~。ちょっとした趣味っていうか、ルーティンていうか、ライフワークっていうか。あの、だから……」


「ライフ……ワーク?」


「ううっ、だから、その……ぁあっ!?」


 聖薇が両手をバタバタを振り回し、叫んだ時だった。

 バサバサと、ポケットから大量の写真が零れ落ちたのだった。お風呂に入っている写真。トイレに入っている写真。寝ている時の写真。その全てに……自分が映っていた。


「せ、聖薇……」


「お兄ちゃん……あたし、あたしね」


 拓夢が名を呼びかけると、聖薇は瞳に涙を溜めながら、


「ごめんなさい……つい、寂しくて……。家にいる時、お兄ちゃんのことを……」


 ――隠し撮りしちゃってたのっ!


 そうバツが悪そうに白状した。

 拓夢は、そんな妹を気まずそうに見下ろす。


(いくら血の繋がりがないとはいえ……流石にまずいよなあ)


 そして、次に気になったのは、ノエルのことであった。あの嫉妬深いノエルが、自分に対してこんなストーカー行為をしていたなど、到底容認するはずがないが。


「えっと、それ……ノエルは知っているのか?」


 おそるおそる尋ねると、聖薇は意を決したように答えた。


「もう全部言っちゃうけど……ノエルさんは、知ってる。ていうか、ノエルさんも同じことやってて。それで……お互いの写真を交換しようって話になって……」


「えっ、交換?」


 聖薇の言葉が信じられず、拓夢は聞き返した。


 つまりは、こういうことだ。

 拓夢大好きなノエルにとっては。拓夢の幼少期からのあられもない写真は、何にも変えられないお宝グッズである。

 聖薇からすれば。毎日拓夢の奉仕をしているノエルが羨ましくてたまらない。

 ならばお宝写真と引き換えに、自分と朝の奉仕を代わってくれ、と。


「……と、いうことだから。これから毎日ご奉仕させてね☆ お兄ちゃん♡♡」


「とりあえず……その写真、全部捨てなさい」


 イヤ♪ と最高の笑顔で首を横に振る聖薇を見て。

 あの可愛らしかった妹がなぜこんな残念な子に成長するのだろうかと。

 心の中でため息をつく拓夢であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >あの可愛らしかった妹がなぜこんな残念な子に成長するのだろうかと。 妹軍団の作品を超えた血脈だからさw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ