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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第3章 うずまく陰謀! 拓夢出生の秘密!
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㉙軍師桜

「ティーチャー!! それは、上杉謙信ですッッ!!」


 拓夢が答えるよりも先に、桜が手を挙げていた。


「あら? どうして加々美様は、城岡様がご指名されたのに、ご自分がお答えになられるのでしょう?」


「そうですわね。それに、あんな簡単な問題を、城岡様が言いよどんでいたことも、おかしいですわ」


 口々に。

 クラスメイトたちは今の桜の奇行について話し合っていた。


「そういえば、加々美様たちはどうしてそもそも、今日に限って十神先生に積極的に挙手していらっしゃったのかしら」


「――私も聞きたいな、それについては」


 飛び交うひそひそ声に答えるかのように、十神は壇上を降りて拓夢と桜の目と鼻の先まで近づいてきていた。


(やばぁああああ! もう、ほとんどバレてるじゃんこれ!)


 まさか上杉謙信も分かりませんでしたなんて言うに言えないし。

 しかし、桜は拓夢の焦りとは対照的に、爽やかな笑顔を向けて言った。


「城岡くんのご気分が悪そうで、ティーチャーの質問に答えられそうになかったので、わたしが代わりに答えてあげましたっ!」


 桜の答えに、拓夢は椅子から転げ落ちそうになってしまった。確かにそれなら、上杉謙信を答えられなかったことも、桜がわざわざ自分の代わりに答えた理由にもつながるが。


「まぁ、そうでしたの? それは気づきませんでしたわ~~っ」


「そう言われてみますと、何だか汗をかいておられるようですわ……」


「さすが加々美さまっ! 何て気遣いの出来るお方なのでしょう!」


 クラスメイトたちは、桜の言葉にうっとりしている。


「それでは、どなたか保健室まで連れ添っては?」「わたくしが行きますわ!」など、クラスメイト達が会話の矛先を自分に向けようとしてくる中。


「あ……はい。実は、ちょっとお腹が痛くて……。十神先生に当てられた時には、もう限界だったんです。すみませんでした……」


 拓夢は適当に具合の悪そうに声を上ずらせながら答えた。前の学校では、どうあがいても通用しないような演技力だが。


「城岡様、可哀相ですわ! 早く、お医者様をお呼びいたしませんんと!!」


 しかし、純粋培養のお嬢様達は、そんな芝居を軽々と信じ込んだようだ。


(今さらながら……凄い学校だよな……)


 拓夢は内心で呆気に取られていた。これだけの大根演技にも関わらず、お嬢様達は誰一人疑う様子を見せない。むしろ、拓夢を助けよう、支えようと、我先に自分へ対して群がってくる。


「あー、分かった、分かった。美しい友情に免じて、今日のことは不問に伏そう。今日の授業はこれまでだ」


 十神は呆れたように授業道具をまとめると、さっさと教室から出て行ってしまった。


「「「城岡さまっ!!」」」


 すると、一斉にクラスメイト達が拓夢に駆け寄る。

 

「……!」


 拓夢が顔を引きつらせると、桜が前に出て、彼女達を制止した。


「みんなっ! 気持ちは分かるけど、ここはダメっ!! 女性アレルギーを持ってる拓夢くんにみんなでさわったら、拓夢くん死んじゃうからッッ!!」


 桜は大きな声で皆に叫んだ。


「それも、そうですわね」、「配慮が足りませんでしたわ」――と、クラスメイトたちの反省する声が、次々と打ち上げられる。


「申し訳ありませんでした、城岡様。もし保健室までの道が分からなければ、何なりとわたくし達に聞いてくださいませ」


「あ、ありがとう……。僕はもう、大丈夫だから……」


 拓夢は謝ってくる生徒にぎこちなく答えた。しかし、内心ではホッとしていた。ようやく終わったのだ。無謀なしりとり対決が。


(――あっ、そうだ。そういえば、勝敗ってどうなるんだっけ)


 クラスメイトがそれぞれの席につく中、拓夢は先ほどの勝負を思い出していた。


(桜さんが答えて、最後に「ん」がついてるけど……これって、実質僕の負けじゃん!)


 拓夢が額に汗をかきながら考えている時だった。


「たーくむくんっ♪」


 横から、楽しげな声が話しかけてきた。


「――えっ?」


 拓夢はハッと横を見る。

 目が合う――どころか、目に自分の姿がバッチリ映り込むくらい桜は顔を近づけてきていて、


「わたし、勝負に負けたから。何かプレゼントしなきゃだよね?」


 どこか楽しそうに提案する桜に、


「え、いや……あの」


 拓夢が戸惑っていると。


「そうだっ! 明日わたし、拓夢くんにお弁当作ってきてあげるよッッ! それも、すっごく豪華なやつぅぅうううう~~~~~~~~っっ!!!!」


 拓夢は茶色の髪が波立つほどジャンプして叫んだ。


(なんでやね―――――――ん!?)


 拓夢はまさかのプレゼントに、内心で盛大にツッコミを入れていた。

 しかし、思い返してみると納得できる。

 桜は最初から、勝敗にこだわるつもりはなかったのだろう。勝てばご褒美の要求。負けたとしても罰ゲームという名目で、お弁当を作って渡せる。さらに言えば、敗北寸前の拓夢を救ったということで、恩を売ることも出来た。試合に負けて勝負に勝つというやつである。


(一つ問題なのは……桜さんの手料理って、超マズいんだよな……)


 涅槃(ねはん)が見えるくらいのたうち回ったあの味を、頭の中で思い出していると、


「どうしたの? そんなに嬉しい?」


 楽しそうに、桜が顔を覗きこんで、


「と、ゆーわけで。明日はお腹、い~~~っぱい減らしてきてね♡♡♡♡」


 と、花園が見えそうなくらい弾む声でささやいてきた。


「ふん、ふん、ふ~~~~~んっ、明日が楽しみだな~~~~♪」


 桜の鼻歌が教室中に響く中、


(明日か……胃薬、用意しておかないとな)


 拓夢は心の中で呟くのであった。

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