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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第3章 うずまく陰謀! 拓夢出生の秘密!
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㉗真剣しりとり対決!

 そして、始まったしりとり対決。

 ルールは以下の通りである。


 ①最後に「ん」がついた方の負け。

 ②同じ人物を2回言っても負け。

 ③名称は武将、大名、侍などの戦国時代の偉人に限定される。

 ④濁点などは省いてもよし。「が」→「か」など。

 ⑤以上のことを5分以内に回答しなければならない。


 以上の説明を桜から受け、いざ実戦へ。


「それでは、授業を始める」


 教師のその一言により、拓夢VS桜、しりとり対決のゴングが鳴ったのである。

 時刻は午前九時、一限目の授業である。

 壇上で教鞭を振るうは、日本史の担当である十神和美(とがみかずみ)

 純白のシャツに黒のベスト。

 髪は短く切り揃えられ、鋭い瞳を包むように、フチなしのメガネをかけている。


「――であるからして、諸君らからすれば、大変に喜ばしい、あるいは不幸なことなのだろう。ここら辺の領域は、次の定期テストには出題されない。しかしながら、まるっきり無益とも言えない。だからこそ学び、知識を収めることこそが、真なる学生の本分だと私は思うのだがね――」


 まるで学者のように長ったらしい講釈だが、これはいつもの通りだ。

 十神和美。噂ではあるがどうやら三十路前らしく、しかし仕事に専念したいせいか退職の意志はないらしい。


 つまり……典型的なキャリアウーマンだ、


(こんな人を前にしりとりだなんて、いよいよもって無理がある!)


 拓夢は涙目になっていた。

 桜は絶対バレないと胸を張っていた。迫力に押されて、何となく了承してしまったことを、ひどく後悔していた。


 そうこうしている内にも、十神の授業は続く。


「家督争いの混乱を収めた後に、桶狭間の戦いで今川義元を討ち取り、勢力を拡大した。足利義昭を奉じて上洛し、後には義昭を追放することで、畿内を中心に独自の中央政権を確立して天下人となった戦国時代を代表する英雄だな。その人物は――」


 サラサラ、と桜はペンを走らせ、それを拓夢に見せた。


《織田信長》


 ノートの端には、そう書かれてあった。


(織田信長かあ……。ってなに!? こういう感じでやるの!? すぐバレるよ!!)


 拓夢は内心でツッコミを入れたが、一度引き受けた以上、途中で勝負を放棄することなど出来ない。


(が……から始まる武将の名前か。がは流石に厳しいから、「か」にしとくか。か……か……)


 授業中だから当然のことなのだが、拓夢は頭に人差し指を押し当てながら考えていた。その甲斐あってか、何とか武将の名前を思いつくことが出来た。


《加藤清正》


 自身のノートに書いた文字を見せると、桜はすぐに考え始めた。拓夢はその間に周りを見渡してみる。自分たちと周囲の集中力との違いに、思わず愕然としてしまった。

 

 前の学校とあまりにも違っていた。みなマネキンかと見まがうほど姿勢がよく、キチンと正された机の上、規則正しく板書を書きとっている。三分の一以上が眠りこけてた、前の学校とは大違いだった。


「こら、そこ! さっきから、何をコソコソやっている!」


 静寂とした教室の中に、大きな叫び声が響いた。


「お前だ、加々美!」


「――!」


 拓夢は息を飲んだ。

 教壇の上から、彼女は鋭い視線を桜に向けていた。


(まずい、バレた!)


 拓夢は焦った。

 ゲームしていたとバレれば、自分も共犯者とバレるのも時間の問題だろう。


(やばぁああああああああ! のっけからゲームオーバーじゃん!)


 拓夢は目の前が真っ白になった。しかし、


「すみませんでした、ティーチャー」


 桜は立ち上がり、粛々とした表情で頭を下げると、


「わたし、十神ティーチャーの授業をこうしてお受け出来る喜びを享受し、かつ自身も奮励(ふんれい)しようと意気込みしすぎていたようですわ。以後、注意いたします」


 桜は伏目がちに謝罪をする。


「先生! 加々美様は、授業中に悪ふざけをされるような方ではありませんわ!」


「そうですとも! いつもお美しく、朗らかでいらして! わたくし達の太陽のような方ですの!」


「ですから、お許しくださいまし~!」


 クラスメイトたちが、口々に桜を擁護(ようご)する。この辺りは、さすが桜の人徳といったところだろう。ざわめく彼女たちに、さしもの十神も、


「分かった。だが、次また同じことがあれば、教室から叩き出すからな!」


 十神はそう言い残して、再び黒板に向かい合った。


(助かった……のか?)


 拓夢は目を丸くしつつも、桜に目をやった。

 紅潮した頬を楽しげに緩ませている桜に、反省の色は全く見えなかった。むしろ、十神にバレないよう拓夢にピースサインなど送っている。


(でもこのままだと……僕の勝ちだよな?)


 改めてルールを頭の中で思い出してみる。

 五分以内に答えられなければ負け、というルールである。今は桜の番。しかし、その桜は先生に怒られた。同様の手は使えない。つまりこのまま時間を浪費すれば、自動的に拓夢の勝ちということである。


「……こほん。では授業に戻ろう。戦国時代から江戸時代初期にかけての武将で、武田信玄に「我が眼」とまで言われた人物だが――」


 そこまで十神が教科書を読み上げたところで、桜が、


「はい先生!! わたしに答えさせてくださいっ!」


 ガタンと立ち上がって手を挙げた。

 教室中に響くような、大きな声だ。クラス中、もちろん、十神の注目も浴びている。


「……加々美か。よろしい。では、答えてみろ」


 凛とした声が突き刺さる。


「はい。その武将の名前は、真田昌幸ですッッ!!」


 対照的に、桜ははつらつ(・・・・)とした大きな声で叫んだ。「正解」とクールな声で十神は答える。


(まさか……っ!)


 拓夢は嫌な予感がして、桜を見た。

 桜はお澄まししながら席に座った。しかしその瞬間、確かに手のひらを拓夢に向け「はい、お次どうぞ?」的なジェスチャーをしてみせたのだ。


(これ、ゲーム続行……てことだよな?)


 拓夢は、呆気に取られた。

 確かに、ノートに名前を書いてやり取りをしていたんじゃ、目立つ。小声で言い合っていても、同様だろう。だから桜はあえて堂々と答えを言い放ったのだ。授業に参加するという名目で。一度怒られた桜が、やる気アピールのために席を立って挙手するという行動は、十神にとってさほど不自然ではないだろう。これなら十神の目を盗んで、いくらでもしりとりを続けることが出来る。


 桜の……作戦勝ちだ。


(なんていうか……そこまでして続けたいとも思わないけど)


 しりとりにかける桜の無駄な情熱に、思わず辟易(へきえき)としてしまう拓夢であった。

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