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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第3章 うずまく陰謀! 拓夢出生の秘密!
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㉑ラッサンブレサリューエ

 そして、何の因果か始まってしまったフェンシング対決。

 それもただのフェンシングではなく、有栖川家に代々伝わる伝統の決闘方法、通称「薔薇の決闘」だ。拓夢としては「何それ?」と言ったところだが、ルールを聞いて納得した。


 通称のフェンシングはフルーレ、エペ、サーブル三つの武器に合わせたルールが存在する。先に攻撃を仕掛けた方に攻撃権が発生し、後手に回った方は防御に専念しなければならない。

 サーブル競技で有効ポイントになるのは上半身のみで、1試合が3分間×3セットで、合計9分間。先に15ポイント先取出来た方の勝ちだ。


 これらが基本となるフェンシングのルールなのだが、今回行うのは「薔薇の決闘」。

 胸――つまり、心臓に薔薇を刺し、先に突き刺した方が勝ちという、何とも分かりやすいルールだ。

 といっても、フェンシング素人の拓夢には、これくらい分かりやすいルールの方が、かえってやりやすい。


 ピストと呼ばれる細長いシートの上に立ち、囲まれた花壇を境界線に見立てて、噴水が中央線だ。ちなみに正式なフェンシングではマスクや防具を被ることになっているのだが、この「薔薇の決闘」ではタキシードを着て戦う。ゆえに、当たっても怪我のないように、剣はナイロンによる特殊加工された、安全なものだ。


 以上の説明をされ、拓夢は水しぶきが弾ける噴水の前に立った。

 対して、一鶴もまたこちらに向かって歩いてくる。

 聞いた話だが、一鶴は昔全国大会に出場し、フェンシングの強豪国フランスに、大差をつけて勝利したこともあるという。


 一方で拓夢は、授業でちょっと習った程度。

 拓夢の脳裏に、薔薇越しに刺さった、血まみれの心臓が浮かんだ。

 もしかして――自分は今日、ここで死ぬのでは?


「Rassemblez! Saluez!」


 麗奈がその横で、拓夢と一鶴に向かって叫ぶ。

 一鶴は姿勢を正しこちらに向き、ペコリと頭を下げる。どうやら、「気をつけ、礼」のことらしい。


「あ……は、はいっ」


 拓夢も一鶴にならって、ぎこちない動作で頭を下げた。


「En garde!」


 麗奈の言葉に、一鶴は剣を構えた。


「さあ、君も構えたまえ」


「あ、いや、まだ心の準備が……」


 うろたえる拓夢の声を無視して、麗奈は進行を続ける。


「Eto vu pure?」


 そう両者に問いかけ、一鶴は「Oui」と答える。どうやら、準備はいいか? の質問だったらしい。もちろん、拓夢に準備など出来ていない。


「さあ、もはや言葉は無用! 今はこの戦いのみに集中するのだ!」


「いや、でも……」


「――Allez!!!!」


 麗奈の掛け声が、広場中に轟いた。

 すぐ目の前でザザッと草を踏む音。

 雑草を舞い上がらせるほどの脚力で、一鶴は瞬時に間合いを詰めていく。

 まるで一陣の風のように。

 急ブレーキをかけたスポーツカーのように猛スピードで拓夢の前まで立つと、神速の動きで胴に一突きを入れた。


「あぐっ!」


「おや…………失敗したな」


 叫び声を上げる拓夢とは対照的に、一鶴は不満そうに自身のサーベルを見回した。


「有効面をついたのだから、攻撃権は私に移るはずなのだがね。これは正式なルールではなく、『薔薇の決闘』だったな。城岡君、すまなかったね。このような変則的なルールには、実は慣れていないのだよ」


「……………………」


 申し訳なさそうに詫びを入れる一鶴。しかし、拓夢はそれどころではなかった。

 まったく見えなかった。突かれるまで、何の自覚もなかった。まるで、打ち出された弾丸だ。あんな攻撃を続けられたら……。


 拓夢の焦りを知ってか知らずか、一鶴は表情を引き締めながら告げた。


「さて、お遊びは終わりにするか」


(え……?)


 お遊び?

 拓夢は我が耳を疑った。

 あれだけの突きを、お遊びでしてみせたというのか?


「一鶴さ――」


 拓夢が言いかけた、その時だった。

 一鶴が、拓夢の前に出た。


「遠慮なく行かせてもらうよっ!」


 一鶴が右手――つまり、サーブルを突き出す。

 その威力はまさしく「稲妻」と形容するのがふさわしい。

 拓夢は本能的に、サーブルで自身の心臓を庇っていた。

 一鶴のサーブルと、拓夢のサーブルがぶつかる。

 飛び散る火花と火花。

 そして、薔薇の花が――


「拓夢さまっ!?」


 はらはら。


 真莉亜の悲鳴が響き渡った。

 拓夢は自分の心臓を凝視する。

 花弁が2、3枚減ってはいるが、芯はまだ残っている。


 つまり、まだ戦えるということだ。


「やりましたわ! さすが拓夢さまっ! わたくしの旦那さまですわ♡♡」


 飛び上がって喜ぶ真莉亜に対し、拓夢はツッコミを入れる。


「いやいや! まだ付き合ってさえいないから!」


「ひ、ひどいですわ……。わたくしの唇を、奪おうとなさったくせに……」


「あれは君の方から――って」


 拓夢は殺気を感じてふりむいた。

 ビュオッという空気が裂ける音がする。

 自らに向かってくる刃先と共に、拓夢はこんな言葉を耳にした。


「城岡君、今度こそ終わりだ!!」



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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です! [一言] 手前に有利な決闘方法を一方的に拓夢に押し付けハンデもなし、な、なんて大人気ないんだ・・・・w
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