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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第3章 うずまく陰謀! 拓夢出生の秘密!
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⑬如月春香の秘密

 テーブルの上には超高性能なタブレット、インクジェットプリンター、そして資料やレポート用紙などが山のように積まれていた。そしてそれらと格闘する四人の男女。


「ううう……」


 拓夢が発した(うな)り声は、書類や文具やデジタル機器の前でかき消された。その周りでは、三人の少女が作業をしている。

 拓夢が聖ジュリアンヌ女学院に転入して早2カ月、つまり五月になったので、生徒総会の時期がやってきたのだ。しかし、運が悪いことに1年会計の賀谷水月(かやみつき)が病欠になってしまった。

 生徒会長である百合江からのたっての願いということもあり、拓夢は生徒総会に向けての準備を、こうして放課後の間だけ手伝っているのだが……。


「うう……ちっとも進まない」


 拓夢はパンフレットを手にしながら、もう一度唸った。


「拓夢さん、無理はしなくていいですからね」


 テーブルの上で拓夢と同様にパンフレット作りを手伝っていた百合江が、拓夢にそう話しかける。

 (つや)やかなサラサラロングヘアーを椅子まで垂らし、凛々しく引き締まった瞳をメガネの下に隠す知的美少女。


 冷条院百合江。生徒会会長にして、庶民同好会のメンバーでもある。人手不足から拓夢に生徒会を手伝わせた張本人なのだが。


「そういう百合江さんは早いですね。もう一クラス分は終わってるじゃないですか」


「私は去年も一昨年も、同様の作業をしていましたから」


「うんうん。僕も百合江さんに負けないように、精一杯頑張るぞー!」


「いや、だから無理はしなくていいって言ったんですけど……」


 ツッコミを入れながらも、百合江の仕事は早い。

 タブレットで作成された当日のしおりを製本化する作業なのだが、ハッキリ言って素人にはキツい作業だ。しかも、全生徒535人分を作らないといけない。


 書類をホッチキスで冊子にして、製本テープで止めて本型にするという作業なのだが、百合江はこの作業が定規で測ったように正確で綺麗なのだ。


「うー、こっちもダメです! ちっとも終わらないです!」


 ライトブラウンのサイドヘアーを一房まるごとツインテールにした少女、進藤ミカは、泣きそうな顔で叫ぶ。一年生で本来は書記なのだが、会計である水月が病欠中のため、ダブルワークの負担が最も重くのしかかっているのが彼女だ。

 もっとも百合江に言わせれば、この程度のアクシデントに柔軟に対応できないようでは、到底この学園の生徒会役員は務まらないとのことらしい。高校生ながら責任感がやたら強い組織である。


 ミカの仕事は主に会計として予算案の提出だ。今年の予算は部費や生徒会活動予算を合わせて〇〇円であり、委員会活動予算額は前年度からの繰り越しで合計〇〇円になりますよ、という風に原稿をまとめているところだ。


「そんな風に叫んだって、仕事は終わらないよ、ミカ」


 タブレットPCを操作しながら、目だけをミカに向けながら、静香は言った。

 個性豊かな生徒会副会長、弥生静香(やよいしずか)は、漆黒の髪をポニーテールにまとめた、利発で勝気そうな美少女である。

 静香の仕事は主に、クラス委員から報告された意見を元に資料を作成することだ。委員会や生徒会執行部が提案したことをまとめ、当日の進行の計画を進めている。ステージ上のマイクの位置、椅子の設置、スクリーンやスピーカーの準備など、どれ一つ欠けてもイベントが成り立たない、重要な仕事だ。


「そうは言っても。ちょっとぐらい愚痴(ぐち)を言ったっていいじゃないですかぁ」


 涙目でミカが反論する。日数的にも人材的にも厳しいものがあるので、それも無理ないのだが……


「だーかーらぁ。口を動かすより手を動かせって言ってるんだよ。時間もないし。何より、いつまた如月春香(きさらぎはるか)の妨害に合うか、分かったもんじゃないんだぞ?」


 如月、春香……?

 聞きなれない名前に、拓夢がふと手を止める。


「あの、如月春香って、誰ですか……?」


「「ああ」」


 そういえばコイツ知らないんだよな、という感じで静香とミカが声を漏らす。

 百合江は「くだらない」とばかりに目を細めながら作業を続けているが。


「如月先輩は会長や副会長と同じく三年生で、去年の生徒会選挙に立候補して、落選しちゃった人なんですよ~」


「その後は風紀委員長を務めているらしいが、これが何かとウチ……いや、百合江に突っかかってくるんだよな」


 ですよねー、と、ミカは静香に相槌(あいづち)を打つ。

 そんなミカに静香は、


「それに、聞いたところによると、如月の親は百合江の親と同じく、法曹弁護士なんだ。実際に何度も法廷で争ったこともあるし、いわばライバル関係ってやつだな」


「そうそう! それに、学年テストでも常に会長に負け続けてるし……何かと因縁がある相手なんですよねぇ」


「もちろん成績だけじゃなくて、クラスの人望だって百合江の圧勝さ。というより如月は真面目人間の堅物すぎて、風紀委員どころか教師まで手を焼いてる始末だからね」


「いやいや、ホントですよね!」


「ねー」


 テーブルを間に挟んで、意気投合するミカと静香。

 拓夢としては、その如月という人がどんな人か知らないし、今の噂を聞いただけでは、本当に嫌な人間なのか判断がつかないが。

 しかし、少なくとも二人にとっては、如月を毛嫌いしているとう認識で間違いはなさそうだ。


「ねー。会長もそう思いますよねー? 如月先輩って、嫌な人ですよねー?」


「別に。そんなことどうでもいいです」


「リアクション薄っ!?」


 ミカの問いかけに塩対応する百合江に、静香が思わずツッコんだ。


「それよりも、生徒総会の準備を進めることを最優先としましょう。当日はどんな妨害に合うか、分かったものではないのですから」


「あー、たしかに。ミカ、気をつけるように」


 自分もたしなめられたことを棚に上げて、ミカに上から目線で注意する静香。


「静香先輩、ズルいですよぉ!」


「ふっふっふ。卑怯とは言うまいよ」


 ミカの抗議の声を、飄々(ひょうひょう)とかわす静香を、


「はぁ……。あなた達といると、いつ仕事が終わるのか分からないわ」


 あきれたようにジト目で百合江がそう言うのであった。

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