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庶民特待生となった僕は、名門学園に通う美少女達から愛されまくる!  作者: 寝坊助
第3章 うずまく陰謀! 拓夢出生の秘密!
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⑩くるみクッキング

 事の発端は、三十分前。そう、家庭科の授業である。

 庶民特待生である拓夢は、一つの教室に留まることはせず、各学年、各クラスを転々として回っている。


 そして、今日は一年D組。つまり、くるみの教室の番というわけだ。

 四時間目の授業は家庭科。調理実習の時間で、今日のメニューは「クッキー」である。名門学園の授業にしてはレベルが低いように思えるが、難しい調理ではないので、ケガをする心配はない。何より、男である拓夢に考慮して、比較的優しいレシピを教師側で考えてくれたというわけだ。


 とはいえ、拓夢は前の家で料理を作らされていたし、学校での弁当も自作していたほどだ。クッキーぐらいなら、まずまずの物が出来る自信を持っていた。


 そんなことを考えていると、


「拓夢先輩、これは大チャンスですね!」


「ん? 何が?」


 大声で自分に話しかけてきたのは、くるみであった。

 いくつかのグループに分かれて調理をするのだが、拓夢の班に無理やり押しかけてきたのだった。


「もちろん、『くるみお嬢様化計画』を遂行するチャンスに決まってるじゃないですかぁ!」


「お嬢様って……その恰好で?」


 拓夢はハート形のフリルがついていて、布地にタヌキやクマさんがあしらわれた、可愛らしいピンクのエプロンを着た、くるみを指さしながら言った。


「こ、これは……お、お母さんがこれしか用意してなかったですう! くるみは悪くないもん!」


 くるみはひどく憤慨(ふんがい)した様子で、頬を膨らませながらぷいっとそっぽを向いた。


「あ、いや、別に悪いとは言ってないんだけど……。お嬢様化計画の持ってこいってことは、相当の自信があるってこと?」


「そ、そうです! くるみが言いたかったことは、それです!」


 拓夢の言葉に、くるみは自信まんまんと言った表情で向き直った。

 くるみお嬢様化計画。

 くるみの親は元々金持ちではなく、普通の会社員だった。

 それが出世に出世を重ね、上場企業の社長に就任した、いわゆる「成金」というやつである。

 

 そう、つまりくるみは、本物のお嬢様ではないのである。

 そんなくるみがお嬢様を目指すため、拓夢が協力して挑むプロジェクトこそが、「くるみお嬢様計画」なのだ。


 とはいえ失敗ばかりしているが。


「ふんふ~ん。料理は愛情、ですよね~♪」


 鼻歌を歌いながらくるみは、卵黄、バター、バニラエッセンスを入れたボウルをヘラでかき混ぜていた。一応確認してみるが、分量は合っている。バターと卵は常温にしてあるし、薄力粉は事前にふるっている。

 後は、少しかき混ぜ過ぎなのが気になるが。多少ベトつくぐらいがちょうどいいのである。


「くるみちゃん。あんまり混ぜすぎると、生地が固くなってサクサク感が無くなっちゃうんだけど……」


 拓夢が気を利かせてアドバイスをすれば。


「いーから! 拓夢先輩は試食係なんだから黙っててください!」


 プリプリ怒るくるみに拒否されてしまう。

 自分にも任せてもらえれば、美味しいクッキーが作れるのになあ……と、ちょっとショックを受ける拓夢であった。


「ああ、そんなに生地を伸ばしちゃ……」


「だーかーらー! 拓夢先輩は大人しく見てるですう!」


 声を出し掛けたところで、またもやくるみに怒られる拓夢。


 その後も、くるみクッキングは散々な有様だった。

 冷蔵庫で冷やした生地を棍棒で伸ばすのだが、伸ばしすぎて生地がちぎれたり、逆に分厚過ぎると綺麗に型抜きしずらくなってしまうのだ。


(ほらほら、言わんこっちゃない! 生地がちゃんと冷えてないんだよ! そもそも均等に練り込めてないし!)


 声に出すと怒られるので、型抜きに悪戦苦闘するくるみに対して、心の中でツッコむ拓夢。料理上手な拓夢にとっては、手伝っちゃダメというくるみの指摘がもどかしく感じるのだ。


 とはいえ……後は180度に余熱したオーブンで、12分ほど焼き上げて余熱を取れば完成だ。そこら辺は、流石のくるみも間違えないだろう。


 しかし、まさかそれが大いなる間違いだっとは、この時の拓夢には想像さえしえなかったのだが。

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