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第29話 争え…もっと争え…

───B74Fにて


「うおおお! 食材め! 肉を落とせ!」


「おりゃあああい! 上ロース、上カルビ、上ミノ!」


俺の攻撃にも劣らず、肉の部位を叫びながらアリ子は剣戟を披露する。


そういえばアリ子、俺よりも若干食べるんだよな。



スーパーデバッガーズでは、アリ子、僅差で俺、かなり差が開いてエル子、サキュ子、サキュ美の順で食べる。


だが、アリ子に肉を譲る気はない。


ボス部屋では、ボスを討伐したあとではモンスターは一切出現しない。


なのでそこでBBQを開催する。


推測では、25の倍数、つまり75階が次の決戦だ。



気を引き締めなければ。


あ、そういえば魔王パイセンを倒す目的もあったな。


「デバッグおにいさん、来ます!」


中型のいかにも獣といった風貌の、狼のようなイノシシのような凶悪な面構えをした魔獣が来る。


「まかせろ、睡眠瓶!」


超高速の睡眠瓶連打により魔獣は崩れ落ちるようにして寝る。


「好機! えええい!」


それをアリ子はすかさず縦一文字切りにより倒す。



「ナイスだアリ子」


「いぇい!」


俺とアリ子はハイタッチをする。


だがまあ、肉は譲らんがな。



それにしても、職を変えられるスキル書は落ちてたなかったな。


いつまでも付呪の使えない付呪士では前線は厳しいぞ。


おかげで前衛はアリ子、後衛は俺、サキュ子、サキュ美、エル子という非常に偏った編成になってしまっている。



アリ子には負担をかけるな。


まあ、落ちてないなら落ちてないでもやりようはある。


それはそれでプレイヤースキルでカバーして───



「あ! 扉が見えてきましたよ!」


ついにか。


この先がB75F、ボス部屋だ。


「みんな、準備はいいな」


みなが頷く。


いざ、飯へ───!






     *






───B94Fにて

「た、大変です、課長!」


瀬川クンは慌てて飛び出してくる。


「どうしたのですか、そんなに慌てて」


「それがですね先程まで50階を攻略していたデバッグおにいさんですが、もう75階に到達します!」


ば、馬鹿な…早すぎる!


「そ、そうですか…。仕方ありませんね。では、ダークナイト山根、貴方への出動を命じます」


「ああ、俺に任せておけ」



二刀の刀を携えたすらっとした白髪の青年剣士、山根は颯爽と消えていく。


それにしても山根、会社ではなよなよしてたのにここに来て雰囲気変わったな…。






     *






───魔王城にて


「あー、また俺の負けだ」


ヴァンパイアになった中年男性の加藤さんはカードを投げ散らかす。


「ちょっと〜先輩、負けたからってカード散らかさないでくださいよ」


「だってな〜。安田と川田、強過ぎるんだよ。大久保がまだいれば話は変わってきただろうに」


さいですか。


私川田、人生で初めてゲームうまいって褒められた気がしますね。



「ワイはプロデューサーやからな、ゲームうまないとバランス調整で文句言われんねんな。堪忍な〜」


リザードマンの姿をした安田さんは頭をかきながら申し訳なさそうに笑みを零している。



確かに、安田さんはゲームがうまい。


むしろうますぎて、一般の我々二人では少々バランスが悪いのだ。


ユニコーンになった大久保さんは一体どこで何をしてるのやら。


「そういえば大久保さん、どこに行ってしまったんでしょうね」


「さあな、アイツの考えてることはほんまわからんわ。アイツが新人でワイが教育係任された時はもー大変やったしなあ」


ンつくしいモノ好きの大久保さんの性格を考えると、想像に難しくないですね。



今回、大迷宮作戦において私たち、安田さん、加藤さん、私川田はお留守番なので、暇を持て余している。


まあ、定期的に魔王討伐隊を名乗る組織がやってくるため、お留守番の理由は分かりますが。



すると突然、ピンポーンとインターホンのような音が鳴る。


以前はインターホンではなく、警報のようなものすごくうるさい音だったが、魔王討伐隊は簡単に迎撃できるし、うるさいということでインターホンの音に変わったのだ。



「お、敵襲か。ゲームしても勝てないし、俺が見に行ってくるぜ」


加藤さんが席を立ちます。


魔王城内のモニターには、入口が映し出されています。


そこには、黒衣を身にまとった白髪の少女がいるのです。



外見は魔物のようですが、魔王を恐れ、崇める魔物がこの魔王城に踏み入るはずがありません。


ですので、その光景は異様なものに見えました。


きっといつもとは何かが決定的に違う。


そんな予感がしました。



そういえばどこかで見たような…。


まあ、加藤さんはヴァンパイアのスキルの都合上不死身に近いのですから、きっとやられることはないはずです。


きっと彼女もその能力の前にやられてしまうことでしょう。



加藤さんが彼女に接近します。



「何の用だ? 戦いたいってんなら相手になるが…」


「…する…」


少女が黒のガスマスクをつけているせいで、加藤さんは聞き取れなかったようです。


「あん? あんだって?」


「破壊、する───」



少女の背中あたりに浮いている黒いなにかが分裂し、四つの刃となり、漂います。、


「な、あんた…!」


「奥義、骨砕斬…」


少女が両手を上げ、振り下ろした瞬間、四つの刃が振り下ろされます。



加藤さんは咄嗟にマントでそれを防ぎます。


ヴァンパイアのマントは特殊コーティングで、斬撃の80%を無効化し、さらに攻撃してきた対象に麻痺を付与します。



普通の斬撃ならば、それでいとも容易く耐えられるでしょう。


ですが、それは普通の斬撃ではなかったのです。



「ちょっ…ぐあああ!」


なんと、マントを貫通し、本体の加藤さんを砕いたのです。



あの刃の幅からは逃れられず、かといってガード不能の一撃とは…。


しかし、加藤さんはスキル『不死身』により、即死はしません。



「おおお…あ、危ねぇ」


スキルにより難を逃れた加藤さんは、我々との合流を図るため、一時撤退をします。



「……?」


少女は加藤さんを追おうと足を踏み込んだ瞬間、麻痺により顔から地面に崩れます。


そして崩れた姿勢のまま、魔王城を見つめています。



こうしてはいられません、急ぎ合流して、迎撃しなければ。


「安田さん」


「ああ、分かっとるわ」


川田、安田、そして加藤でこの少女を迎え撃つのです。


そして彼女の正体、それを思い出したのです。



そう、彼女は───


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