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第3話 魔王と四天王(四天王だからといって、4人とは限らないらしい)

第3話   魔王と四天王(四天王だからといって、4人とは限らないらしい)


「こちょこちょ作戦、決行じゃい!」


「アイアイサー!」


アリ子は躊躇なく、サキュ子の脇に侵入する。


「ちょ…やめ!…あはははははは!やあははははははははははははははははは」


「ここがええのんか〜?ええのんか〜?」


「グワーッベロベロベロベロベロベロ」

黒髪少女がエロおやじの如く脇を蹂躙し、脚竜ディープコンパクトが顔もへそも足の裏もよだれまみれにしていく。


「くっ、俺もモデルの感触を確かめたかった…!」

拘束さえしてなければ…!


「ちょっと、あは、あははは。もう、も、ギブ…どわははははは!」


「なんて言ってるんだ? 聞き取れんな〜。ちゃんと『ごめんなさい、もうしません』できないなら、離すわけにはいかんな〜」


「このっ…ころわはははは…ぎゃはははは!」


ディープコンパクトの耳舐め足舐めの前では、彼女は無力に等しい。


「今なんと?」


「ぎゃはははは! ごめ…あはは!ごほっ、ごほっ…ごめんな…ひぃ…はあははは!」


「あと一息って感じだな」

サキュ子からはすでに覇気を感じられなくなっており、汗とディープコンパクトのよだれでぐっしょり濡れ、陥落一歩手前と言ったところだ。


「ええのんかぁ? しっぽのつけねがええのんかぁ?」


「…れる…」


「ええのんかぁ? …ん?」


「漏れる…あは…漏れちゃうから…らめぇ…あはは…ひくっ…やめてよぉ…」


ピクピクと腹筋を震えさせていた彼女はとうとう限界を超え、ひくひくと泣きじゃくりながら笑い続ける壮絶なものになっていた。


「あの、デバッグおにいさん…でしたっけ。もうその辺にしたらどうです? 世の中はきっと暴力で解決できないことの方が多いんですから…」



「ああ、そうだな…」


『ええのんか』と随分ノリノリだったよなお前…


俺の肉体も落ち着き、着痩せした。


こうしてその場によだれや汗にまみれ倒れたサキュ子を残し、一件落着と相成った。


「さて、わたしのシキナキも帰ってきたことですし、今回はなんやかんやありましたがありがとうございました」


「くっ、そんなにひであきとイチャつかれては俺の割り込む隙がないな。これにてクエスト完了かな」


「ええ。…アリス…アリスです、わたしの名前。貴方は?」


容姿もありがち、声も特徴なし、名前もありふれているなと思ってしまったのは内緒で。


「いい名前だな。俺は…そうだな、デバッグおにいさんと呼ばれている」


「デバッグおにいさんですか。あの、少しお願いがあるのですけど」


「なんだアリ子、言ってみてくれ」


「なんですかアリ子って…まあそれはそれ。わたし、いつかシキナキと一緒に冒険に出てみたいと思ってたのです。でも一歩を踏み出す勇気が無くて。ですから、腕利きの旅人と見込んでお願いします。わたしを冒険に連れてってください!」


パーティ加入や離脱がフラグになっているグリッチもあるかもしれない。

仲間が増えるのは好都合だ。


「ああ、それなら、こちらこそよろしくな」


「いやったあ! これからお母さんを説得して、ギルドに登録して、それからそれから…」


「さて、冒険に出る前に夢から覚めなければいいんだが…」


「なにかいいましたか?」


「いや、気にするな。こっちの話なんだ」



「うぅ…ここは…って、デバッグおにいさん!?」


突然、サキュ子が目を覚ます。


「気がついたようだな。サキュ子よ」


「あたしはデゼル! サキュ子って誰よ!」


「サキュバス娘だからサキュ子、分かりやすいだろ?」


「だ〜か〜ら〜! デ・ゼ・ル! 王立魔族学院首席、出来ないことはコネで何とかすることで有名なデゼル様よ! どう? 恐ろしくなったかしら。今なら許してあげるから、この手足縛ってるのほどきなさいよ!」


そういいながらもじもじくねくねと脱出を試みている。


「そんなことはどうでもいい! 尻尾を触らせろ!」


「ひぃ!」


自信たっぷりの表情から一転、恐怖にも似た顔で、一瞬にしてサキュ子の眼から光が消える。


「こら、暴れるな! コリジョン判定が分かりにくいだろうが!」


「やぁ…そこは…あぁん♡」


ほう、尻尾のメッシュをすり抜けて指が入ってしまったが、なんと尻尾の内側にも判定があるのか。

素晴らしい作り込みだ。


「おにいさん、それくらいにしてあげたらどうです?

唐突に黒髪ガールが割って入る。


「そんなに自分のコリジョンチェックが待ち遠しいのか」


「いえ、お構いなくどうぞ!」


分かればよろしい。


「どれ、中はどうなっているんだ、これは…」


「ほ、ほんとにヤバいからぁ…なんかきちゃうぅぅぅ!」


なにか来る!

俺の直感がそう囁いているのだ。

あと少し、あと少しなのだ。

さあ、来い!


「ああ…来る…来ちゃうぅぅ!!」


「ええい! 声がでかいわ!」


やましいことは何もしていない。

なのになんだ、この胸の高鳴りは。



「おやおやデゼル、みっともないですねぇ。貴方ともあろう方が」


突如、闇夜を切り裂き黒い翼の男が空に佇んでいた。


「くっ、誰だ貴様は!」


「問われたのならば答えましょう。私は株式会社スゴスギゲームス開発…や、そうですね、魔王パイセンとでも名乗っておきましょうか」


「魔王パイセンだと!」


「そう、私は魔王パイセン! 瀬川クン!  彼女を救出してあげてください」


「了解です課長」


「フッいい返事だ。ちょっと話変わるけどここでは魔王パイセンと呼びたまえよ、瀬川クン」


彼らから出るドス黒いオーラ力に、ラスボスの気配を感じ取った。


「魔王パイセン、一体何者なんだ…!」


そうこうしている間に、瀬川クンと呼ばれる黄色い小さな妖精なような生物がサキュ子へと接触をしていた。


「一旦引きますよ、デゼルお嬢様」


「しまっ…!」


瀬川クンとデゼルは青いエフェクトに包まれ、魔王の後ろへと瞬間移動する。


「まだ負けてないのに〜…覚えてなさいよ〜!」


それは負け犬の遠吠えというやつだ、サキュ子よ。



「まあいいさ、もう時期に俺の目も覚める。続きは製品版でってな」


「くく、くはははは! デバッグおにいさんよ、この世界は夢でも何でもない! リアルだ! 貴方の身体はなんかよくわからんそういう電波によってゲームの世界に意識が飛ばされているのだ!」


「な、なんだって!?」


確かに、言われてみれば尺が長いような気がする。


「ログアウト不可! 出るためには私を倒すしかない! このゲーム世界で貴方の心をこう、ポキッと折ってくれるわ!」


くははは、と笑いがこだまする。


「ゲームの世界から出られない? 上等だ。俺はこの世界をデバッグするまで帰れない。ひとまずラスボスを1週も倒さずには終われない!」


「その域ですデバッグおにいさん! あんな社畜っぽいおじさんサクッと倒しちゃいましょう!」


「おのれ、NPCの分際で…いいでしょう、貴方達には最高の絶望をプレゼントいたしましょう。いでよ! 我が魔王四天王よ!」


「お呼びとあらば」


魔王パイセンが天に向かって叫ぶと、いくつかの影が彼の周りに集まる。

影たちは、続けざまにセリフを並べる。


「会社に尽くした我が人生」


「順風満帆、満たされた人生」


「しかし貴様はこう言った」


「『この床抜ける!』『アイテムが消えない!』」


「『技の計算式がおかしい!』『足がかゆい!』」


「え…えーと。だから我らは貴様を倒す」


「凄惨に倒し尽くしてくれよう!」


影たちはセリフを終えると、全員そろって叫ぶ。


「「「「「「「我ら魔王四天王、貴様を討つ!」」」」」」」


くっ、すごい迫力だ。だが…


「ただの逆恨みじゃねえか! あと魔王四天王っていうけれど7人いるし!」


魔王パイセン含め、魔王四天王はあっと驚いた表情になる。


「どうします先輩、今から七人衆とかに変えます? 命名した人事の瀬川落ち込んでますよ」


「いやいいでしょう、響きがかっこいいし。 あと身内ネタやめて、身バレしちゃうじゃん」


「あっ…すんません」


なんかグダグダだなあ…


「何が何だか分からんが、勝負するのか、しないのか?」


「いいえ、私の最大戦力であるデゼルがやられてしまった以上、ここは撤退が得策でしょう。時間は現実時間の1/100000。いずれ貴方を倒せばよろしいのだから」


「く、頭が切れるな…魔王パイセン。一体何者なんだ…」


「ではいずれ。くはははは!」


そう言い残し、魔王軍は去っていった。


しかしあの魔王パイセン、さっきの四天王用のセリフのカンペが羽にびっしり貼られてたのは言わぬが花だろう。






デバッグおにいさん

種族:人間

ジョブ:未選択

LV.8

HP:100

MP:20

魔力:55

力:120

知力:150

防御力:80

魅力:150

素早さ:90

運:220


特殊技能:スプリント

種族特性:運命翻転(不可能を可能にする)




「ん…ふぁーあ…よく寝た」


目が覚めると、そこはいつもの大きなまぞくベッドの上だった。


「おはようございます…おねえちゃん」


私の傍らで布団の中に潜り込んでいたのは、綺麗な水色の髪の、私の最愛の妹にして最優秀まぞくのジゼルだった。


「うっ…ジゼルぅ…おねえちゃん怖い夢を見たの…パンイチ筋骨隆々の男に陵辱されてそれで…うぅ」


「よしよし…デゼルおねえちゃんはあまえんぼさんですね…」


「うぅ…だってえ…」


あのような羞恥は生まれて初めてだったのだ。

瞼を閉じればあの男の顔が嫌でも浮かび上がってくる。



だから会わねばなるまい。

会ってこの気持ちを確かめるのだ。


そして次こそは…

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