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第21話 人は横格を(ry その2

「異世界転移先で異世界転移するとは思いもしなかったぞ…」


衝撃展開すぎて、理解が追いつかない…



「…デバッグおにいさん、大丈夫?」


サキュ美は身体が小さいため、俺を上目遣いで見あげながら心配そうに声をかけてくれる。


「ああ、大丈夫だ」


遠方にはアリ子とその相方も見える。


何やら手を振っているようだ。


ここで自分は、このゲームの中で使える技が自然と脳裏に思い浮かぶ。


「なるほど、プレイアブルキャラクターはプレイヤー自身ってことか」


中距離拘束魔法:灼熱拘束

近距離高火力攻撃:紅蓮の一撃

特殊行動:跳躍


そうか、中距離の敵をスタンさせる魔法、灼熱拘束と、近距離超高火力の紅蓮の一撃。


それに、跳躍…?


試しに使ってみると、俺の身体は宙に舞う。


なるほど、本当にただの跳躍だな。


このゲームは連続して行動を取ると大きな隙が生じるシステムがある。


その硬直をいかにして狙うかが勝利のカギとなる。



この跳躍は行動権を消費しないようで、つまり硬直を発生させないいわゆる強技だろうと分析する。


「ふむ、俺は近接特化か。サキュ美はどうだ?」


「アタシは…そう、狙撃特化みたい」


俺はサキュ美のプロパティを覗き込む。


追従魔法:水球 

追従召喚魔法:火球

長射程狙撃魔法:神の杖(雷)


追従魔法は相手を誘導する魔法で、相手にするとかなり厄介な技だ。


さらに厄介なのが追従召喚魔法の火球だ。


これは召喚陣が相手を追従し、確実に相手の側に寄ってから火球がそこから飛び出す魔法だ。


これ単体では狙いが甘く、いいダメージを叩きだすことはできない。



だが、追従魔法があれば話は別だ。


2パターンの弾幕を避けることは難しいうえ、下手に逃げ回れば行動権の消費により動けなくなる。


攻撃が当たったり動けなくなったところを長射程狙撃魔法の神の杖で狙い撃てば、確実に相手を仕留めることが出来る。



間違いない、サキュ美は『こわれ』だ。


「お、良いのを引いたな。では行こうか」


しかし、今回は遊びなのだ。



相手が魔王四天王でもなければ、相方のサキュ美はこのゲームのプレイヤーでもない。


きっと初心者同士の優しい戦いになるだろう。


「行きますよ! デバッグおにいさん!」


正面、かなり離れたところからアリ子が声をかけてくる。


「よし、こい!」


俺がそう叫ぶと、アリ子はものすごい勢いで跳躍をする。



「跳躍撃!」



跳躍撃は行動を消費する代わりに、当たり判定を持った跳躍だ。


その万能さから、愛用するプレイヤーも多そうだ。


だが甘い。


空中にいては、サキュ美の狙撃の的だ。




「サキュ美、そげ───」



俺が指示するまでもなく、アリ子を射抜く。


「ぐえっ」


アリ子は地面に落ちる。




そこにすかさず追従魔法:水球で追い打ちをかけ、さらにアリ子の足元に追従魔法:火球を設置、逃げた方角に火球を射出する算段のようだ。


このどちらがヒットしても神の杖で狙い撃てるし、何ならヒットしなくても行動権を消費したアリ子を狙い撃てる。



あまりにも完璧すぎる。



あまりにも戦い慣れている。



実践ではサキュ美は戦いたがらないし、実際に弱い。



だが、この強さは明らかな矛盾だった。


ゲームだから、では説明がつかないほどの強さだ。



実戦経験が無ければ、このように───



「避ければ当たりますよ」



───このように戦いを楽しむような不敵な笑みをこぼすわけが無いのだ。






     *





「ここでばちこり格闘をねじ込んでいくぅ!」


「ま、負けた!」


つ、強すぎる!


アリ子の相方であるゴリタカ、異常な強さであった。


これは反則級だ。



「ふふーん、どうですかデバッグおにいさん。参りましたか!」


アリ子がめちゃくちゃ誇らしそうな顔をしている。


「アリ子…」


アリ子がめちゃくちゃゴリタカさんに介護されていたことを思い出して、何故か俺が悲しくなってきた。


こういうのをおんぶにだっこって言うんだよな、確か…



「ま、負けちゃった…」


サキュ美は今まで見たこともない本気で悔しがっているようで、驚いているような、今にも泣きだしそうな、そんな表情をしていた。



「すまんなサキュ美。俺が足引っ張ってしまった」


そんな表情を見たら、いてもたってもいられなくなってしまうだろう。


「いやーお嬢さん本当にいいセンスしてます。これで初回プレイなんて信じられないっすよ。良ければ俺が教えてあげましょか?」


ゴリタカという男はサキュ美に声をかける。


「ほんと?」


「ええ、マジのマジっす」


これはありがたい。



「サキュ美。リザード安田との戦い、一緒に挑んでくれないか?」


「もちのろん」


サキュ美は親指を突き立てて返事をする。



サキュ美とはあまり話したことなかったが、結構おちゃめな性格をしているな。


「とりあえず今日はもう帰ろう。明日から猛特訓だ!」


「うん、デバッグおにいさん」



こうして、キュ美おにペアが誕生したのである。


「あれ、わたしは?」


「アリ子、応援も立派な仕事だぞ!」


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