愚者 スキルと迫る猛火
さて、白島を倒した俺だがそれで終わりじゃない。確信が持てない。
タイムリミットは、どうか。
黒島は鑑定を使って、自分を鑑定した。
職業 愚者 レベル5
黒島 恭弥
攻撃力 110
守備力 120
脚力 80
魔力 200
運勢力 ?
スキル 鑑定 収納 念唱 ???
固有スキル 愚行
よし、愚令は消えたようだ。…、まあ、変わったことは変わったな。
魔物を倒さなくても人その中でも勇者というのはなかなか経験値があったということだ、レベル1にしては。
魔力は、勇者並みのステータスに戻った。他はぼちぼちなのだろう。この際ステータス数値はどうでもいい。
このスキル欄のはてな?が気になる。
もしかしたら、鑑定で何か見えるかもしれない
黒島は鑑定を再度自分に唱えた。すると、
職業 愚者 レベル5
黒島 恭弥
攻撃力 110
守備力 120
脚力 80
魔力 200
運勢力 ?
スキル 鑑定 収納 念唱 蘇生?
固有スキル 愚行
蘇生?だと?
黒島はこの蘇生という言葉に罪滅ぼしの可能性を抱いた。
白島をどうにかして蘇生できるのであれば、と。
みんなはあれから去っていった。白島の遺体もそのままだ。
明日には回収されると聞く。みんなの心痛な面影と王様達の苛立ちが浮かぶ。
幸い、皆が寝静まった時間、警戒は行われている。
他のみんなたちが狙われたらそれこそ人類の終わりみたいだ。
そうかい、俺はこれから単独行動をすると決めていたから、それにわざわざ変わる案を今から考えようにも出そうな気がしない。
黒島は、個室から出ると、人目を奪い、白島の部屋に突入。蘇生?を発動する。
緑色の光が出たが、起きる気配はない。
その緑色の光は、白島の体の中に入っていった。
しかし何も起きない。少し動いたような気がしたのは気のせいだった。
効果とかラグとか知っておきたいものだが出来なそうだ。
これ以上時間はかけられないと部屋を後にする。
そして、武器庫に侵入。この際奪えるものは奪っておきたい。
そういえば、毒の指環以外にも何か使えるものがあるかもしれない。、
黒島は漁りに漁った。そうして指輪を3つ調達する。
また個室の方に戻る。そして、ここからの脱出を図る。
何故他の日に回さないかって。勇者じゃないとバレるのが怖いからだ。
あっちが無理難題を出してきたらどうだ?勇者ならこれくらいできるだろうとほかの奴らとは違う特訓を用意していたら遅かれ早かれ不調を疑われ、鑑定でもされた日には…考えたくないはないだろう。
そうならなくとも訓練で魔物に倒されることもある。
黒島は自分の意思にそらない戦いをする気はない。普通の価値観を持つものであれば、それは誰だってそうする。
しかし、勇者は別だ。勇者という扱いが最初からなければ、ここに残ってもよかった。
黒島はそう考えると自分の愚者を恨むしかなくなる。
そこからは準備を早める。今日はハプニングがあったから訓練どころではなかったものの、明日からは王様達の言う訓練をしなくてはならない。
夜中というコンディション、警備がいるのも仕方はない。
しかし、慌てた様子ない黒島は、収納から1つの指輪を取り出した。
それは同色化というべき能力を持つ指輪で、背景に紛れる事ができる。
まるで、暗闇が暗闇を歩くような矛盾、それは遠目に見られる分には全然気がつかないだろう。
おそらく、この白い宝石部分が魔力を蓄えていてそれに効果が付随している。
宝石に傷がつかない限りは、この同色化は続くのかもしれない。
そう考えた黒島は今、個室を抜け、風景に同化している。流石に夜中であるため、照らすものはほとんど見当たらない。
ここは街だ。だったら街に入り口から出ればいい。
黒島は町の民家を縫って通る。道という道は使わない。さっきも言った通り、見回りがうろちょろしている。
勇者を殺した次は誰?とかまだ騒がれていたからな。
そんなものに興味はない。当事者はそう思う。
ここから早く逃げなくては、いずれ追手がくる。
クラスの奴らにも会いたくない。アイツらの温情など後ろめたさからの逃亡とか諸々いわれ、あてにならない。お互いにそうだ。
今更捕まってもいい思いはできないだろう。処刑にならなくてもきっと泥を這って生きるような日々の繰り返しをするだけだ。
それくらいならばと黒島は自分の強さに賭けることにした。幸い、今回のレベルアップで魔力の上昇値に期待が持てた。
愚者という職業を得た後突如現れたスキル。そして蘇生?。
蘇生?はどうだろうか。俺のスキルは分からないところがある、あり過ぎる。次の愚令も何も。
そう、愚令である。居心地の良くないこの街を抜け出す理由は愚令に対応できる力を有しなければいけない。でなければどのみち黒島は死ぬのだ。
そして計画した街脱出計画だが、1つ誤算があった。
黒島の目の前には、街の入り口らしきものがある。
どうやら、その先はすぐに草原に抜け、森が見える。
そこに、どうやら騎士団長らしき人物が陣取っている。
まるで、誰も通さないというように。
黒島が、どうにか同色化で横を抜けようかと思った矢先に、騎士団長は何を思ったのかこちらの方に目を向けてきた。
そして、斬撃を放ってきた。
黒島はそれを転んで避ける。どうやら用意した皮服が切れたようだ、次は黒島の番かもしれない。
騎士団長は、「避けたのか、まあいい。敵意があるとみた。通すわけがない。」と言って腰の重たそうな鋼で出来た剣を構えた。
どうやら、俺はこう簡単にも逃げれる運命はなかったらしい。
どこか諦めの黒島は同色化とはいえ、騎士団長を相手にすることに決め、ナイフを取り出し、指輪をポケットに入れると、もう1つの指輪を装着した。
さぁ、策を始めよう。
黒島は、白島を相手にした時よりはと、顔に笑みを浮かべた。