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愚者、愚かなものよ  作者: まっきよ
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愚者 勇者締まりない勝負


「ジャンケンで決めよう。」






これを聞いた黒島は最初どう反応すればいいか分からなかった。


あの完璧超人が物理的な勝負を降りた。


そして命の采配がジャンケンでいいのかと。


もちろん、確実に勝てる訳ではないのは同じだが、こちらはステータスが下がった、いわゆる雑魚キャラで相手に勝ちに行くようなものだった。


だが、そのステータスの懸念が白島の一言、提案で無くなろうとしている。


それがジャンケンという運で決まるものなら自分の弱さ関係なしに縋りたくもなる。


しかし、何故ジャンケンを提案したのか。


仮に相手に運勢力に分があるとしたら、相手にとっていい話であろうが、その真意が読み取れない。


黒島は思わず声を発していた。


「ジャンケンでってなんだよ。俺らの命がかかっているんだ。


それならお前は実力行使しかない。そんなアホみたいなことを言うな。


確実に殺してやるから俺はそんな冗談につきあっている暇じゃ


「違うよ。」えっ?」


「勘違いしないでくれるかな。これはお互いに利のある勝負だからね。


君だってこの膠着状態は見られたらよくないだろう?


もし、こうしている間に誰かがここを覗きにくる。


僕が君のやろうとしていることをみんなに言ったらどっちを信じるかは分かるよね?


しかも本当の事なんだからこっちも嘘のつきようがないしね。


だからこその提案だよ。


君は素面でもある程度戦える僕とは違って隠し球を用意した。


さっきのナイフだって僕には君がどこからか出したという以外分からないよ。


それは噂に聞くアイテムボックスとやらで、容量は無限に、そして、僕の「聖剣生成」を遥かに凌ぐ武器を蓄えているんじゃないのか?


恐らく、さっきのナイフは宝物庫よりは武器庫だろう。宝物庫は僕でも入れなかったからね。


大方、兵士の武器の予備ってところだ。そんなの、この世界に来て間もない僕にはまだ重い鉄の塊だ。


そんな怖いもの持ち出されたら僕はどうしたって勝てない。


だから僕は全ては運に任せてみようと。


僕が負けたら僕の命を君に委ねよう。


僕が勝ったら君がどうにかなってしまうのだろうが、それは僕の所為にはならない。


「鑑定」でもしてもらって君の状態を調べれば他殺ではないことは明らかになるさ。


君は周りのようなねちっこい嫉妬の目ではなく、誰にでも接する僕のつきあい方に嫌気がさしたんだね。


だから、教室で接触を避けられていた。


さてと、無駄話は終わりにしてさっさと始めようじゃないか。


それとも「聖剣生成」を使って実力行使といくかな?」


白島は見透かしているように笑っている。


気味の悪い笑いではない。


提案に乗ると確信している目、いたずらが成功する子供ような無邪気な笑みを浮かべている。


それはそうと、あいつなりの洞察力でかなりの警戒をされてるというわけか。


ならば、それを利用させてもらうか。


黒島は「聖剣生成」で戦うことは出来ない。


それを知らない白島の運にかけるという選択。


素面で勝てない性能の差。


これを意味するのはすなわちジャンケンを受けるということである。


黒島はその勝負について引っ掛けがないかを確かめる。


「仮ににジャンケンであったとして、何回勝負とか取り決めはあるのか?」


「うーん、僕は一回のほうがスパッと決まるんじゃないかな。」


「なるほど、首チョンパだけにか。一回勝負でいこう。お互い悔いのないようにな。」


一回に決まる。そう、これはもう戦いだ。


遊びではない公平な取り決めであった。


冗談でないのは奴の目を見て明らかだ。


俺たちは向かい合った。


「お前に勝ち、お前を殺す権利をもらう。二言はないな?」


「僕は君に勝ち、君を野ざらしにしていくよ。


襲ってきたら死なない程度に反撃するけど。


どちらにしろ君の供養はすぐにはできないね。」


独特な言い回しでこちらを見て淡々と答える白島。


俺たちは利き腕に力を入れて対峙する。


そしてついにその時がきた。


「じゃあせーのでいくよ!」「おう!」


「「せーの、ジャンケンポン!」」






そう、それは一瞬にして勝者が決まる互いの一手。






黒崎の掌の影が白島の拳に落ちる。







そう、黒島が勝ったのだ。





だが、黒島は白島をじっと見つめている。


その顔は怒りであった。


実はこのジャンケン自体、洞察力や反射神経に優れていれば相手の手を読むことだってできる。


白島は負けた後も黒島の手を見つめていた。


それは敢えて出した一手だともいうべき、ただ後出しにもならない完璧なタイミングの代物であった。


黒島にはその極意は分からないが、異様に黒島の手を見ていた。


そして負けるという一連の流れのようなものを感じた。それは相手が白島だからだ。


そんなやつの洞察力や反射神経は常人を凌駕する。


そんなやつが俺の弱体化されてない唯一の素早さでも見切れない訳がない。


だから、今の黒島には分かってしまうのだ。


こいつは最初から自分が勝つ気などなかった。


それは、顔を上げた白島の第一声だって、





「いやー、負けちゃったね。いけると思ったんだけどね。僕が負けた。もうこれは覆らないよ。おめでとう、黒島君。」










そして、負けたはずの白島は笑みを浮かべているんだ。








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