愚者 愚令の時間なり
そうだ、俺が、黒島恭弥が白島優希を殺した。
しかし、本心からやりたかったといえば違うと自信を持って答える。
いや、死に方を見れば殺意があったと言わざるを得ないものだが、こっちも必死だったんで結局はああなってしまった。
後悔は少しある。
誰かこんな俺の葛藤を愚者を許して欲しい。
黒島恭弥は、白島優希を殺さなければいけなかった。
それは黒島の職業「愚者」にあることだった。
愚かな者、職業にしては陰険であり、違和感が募る。
黒島もまた自分の職業をよく知らなかったのだ。
黒島の職業は勇者、勇者?そう、勇者であればよかったのだ。
そして、今は愚者という意味がわからない状態だ。
白島をきちんと、己の手で殺した。同じ人間側である勇者を。
そこには、愚者の問題が起きる前には、ステータス確認の時に何か異変があったのではないかと当然のよあった。そんな黒島のステータスはこのようになっていた。
ステータス
職業 勇者 レベル1
黒島恭弥
体力 200
攻撃力 200
守備力 200
魔力 80
脚力 80
運勢力 100
スキル 気配察知
固有スキル 聖剣生成
ステータス上、黒島は「勇者」であった。
固有スキル「聖剣生成」は勇者光属性の剣を生成することができ、アンデットなどに非常に効果的である有用なスキルである。
ステータスも普通の職業が合計500あればいいものの、レベル1でこの数値とはかなりいいもので、王様や王女も「勇者」が2人いると戦力上気分が良かったのもうなづける。
黒島も「勇者」という職業の割り当てに内心とても嬉しく思わず声に出しそうになった時、鈴の音が響くように体に虫唾が走るように体に寒気が来ると、急にステータス画面が開かれ、それを見た黒島は青褪めた。
ステータス
職業 愚者 レベル1
黒島恭弥
体力 50
守備力 50
魔力 100
脚力 80
運勢力 不明
スキル 鑑定 収納 念唱
固定スキル 愚行
黒島は思った。
何が起きたと?と。
何故か「勇者」が「愚者」となり、ステータスは下がり、スキルがいつのまにか追加されている。
何だ?何が起こった?職業どころかスキルまでもが変わっている。
当然だが、これは黒島の意思の結果ではない。
決して勇者という明るい職業にも不満があったわけでもない。
それなのに、無情にも勝手に変換されたステータス。
弱体化を伴い増えたスキル。
さっきの震え。
これは呪い?呪いなのか?誰にかけられた?
おかしい。俺だけ何かがおかしい?
この時点で恐怖を覚えた黒島は「愚行」を鑑定することにした。
愚行 「愚者」固有スキル
効果 指令によって愚令が出る。熟せなければ死ぬ。熟せば力を得ることができる。
愚行、愚かな行為。デメリットが愚令によって様々ではあるが、明らかに異常な固有スキルだ。
そして愚令というのも命令と言わない限りがデメリットらしき何かを匂わせていた。
そして、その予感は的中する。
それは、あの王様達との邂逅、白島が交渉をしている時だ。
俺はそれをぼーっと見ていた。
もう勇者たり得ないが、皆にバレると面倒なのが目に見えていて、周りから、「お前は何も言わないのか。」と言われて、「俺はああいうのは苦手だから任せた。」と適当に流した頃だった。
白島がみんなを諌め始めた。全ての視線が白島に集中
そんな白島が、みんなを諌めている時、なにやら頭に鈴のような音が響いた。そして、震えも。
まただ、この鈴の音、震え、何か来る。
もしかしたらとステータスを慌てて見てみると、固有スキルのところに愚令が来ていた。
そして、それを見た黒島は思わずえづき震えだす体を口を塞ぎながら抑えていた。
そこにはこう追加されていた。
固有スキル 愚行
愚令 白島優希を殺せ
残り “23:59:56”