1話 出会い
俺達は長い長い船旅の末、広大な陸地を見つける事に成功した。もうもうと煙を上げる山を警戒し、少し外れた湾内に船を止め仲間たちは雨露をしのぐ洞窟を探す班と食料を調達する班に分かれて行動する。
「おい、シネリ俺達は山で鳥を探すからお前は浜辺で貝を探してくれ」
「ああ、分かったよ狙えるなら魚も狙ってみるよ」
俺は仲間たちと別れ砂浜目指し歩いて行く。岩場を抜けると砂浜が見えて来たので浅利やハマグリを取って居ると一人の女に声を掛けられた。俺達以外に人が居たとは驚いたな。その女は気の強そうなキリッとした目と、腰まで真っすぐ伸びる黒髪が印象的な女だった。
「你不看惯的脸,在这样的地方在干吗呢」
(あなた見かけない顔ね、こんな所で何やってるのよ)
「मैं यहाँ गोले ले रहा हूँ …… एक मिनट रुको, लोगों पर धनुष बारी नहीं है 」
(ここで貝を…… ちょっと待て人に弓を向けるな)
「不是不明白与你用日语在话没有说在什么」
ああ、これは何をいっているか何となく分かった。恐らく分からないから自分の知って居る言葉で話せと言っているのだろう。相手の女も多少は言葉が分かったのか弓を向けるのを止めてくれた。言葉が通じないので木の枝で絵を書いて貝を取って居る事を伝えた。
「聚集那个石头做什么?」
(その石を集めて何をするの?)
表情から察するに何か疑問が有るようだ。おれは口に運ぶ仕草で食用にすると伝えた。
「不是那样的如果吃东西坏肚子!!」
(そんな物食べたらお腹壊すじゃない)
「यह एक पत्थर नहीं है 、यदि आप परवाह है, मैं तुंहें कुछ स्वादिष्ट खाने देता हूं । कल इस जगह पर आ जाओ 」
「因此不明白说着什么」
(だから何を言って居るか分からないわ)
言葉が通じないのは厄介だな。取り合えず探しているのが石じゃないと言っても理解されないだろうし。明日ここに来たら飯をくわせてやると身振り手振りで伝えたら。理解できたのか女は帰って行った。明日来るか分からないが、取り合えず俺達以外の人間が居る事は親父に相談した方が良さそうだ。
「おう、シネリか貝は取れたか?」
「ああ、大漁さ。所で親父、この場所に俺達以外の人間が居る様だ」
「まあ、これだけ広い場所だ人位居るだろう。何処の部族の奴か分かるか」
「それが言葉が全く通じ無いんだ。今までは多少の違いは有れど大体言葉は通じたんだけどこんな事は初めてだ」
「俺の爺様の話じゃ、島々を渡った遥か西の大地にそんな奴が居ると言っていたな。俺達は漁業もやるが海運と貿易を生業としているから、何とかなるだろう。それでどんな奴だった?」
「凄い美人だったよ。髪の毛も俺達の様にちぢれてれてないし……」
「ははん、お前その女に惚れたな」
「そっ…… そんなんじゃねぇし」
俺は否定したが親父は聞き入れてくれなかった。そして、何か珍しい物が有れば交換してこいと女との交渉役任された。出来れば人を付けて欲しかったが、それは野暮だろうと訳の分からない理由で却下された。
翌日、砂抜きしたアサリとハマグリを持って昨日居た場所へ向かう。石を削って作った器兼調理道具で貝を焼いて居ると昨日の女が藪の中から顔を覗かせ何かを警戒していた。
「कोई और नहीं बल्कि मुझे है」
(ここには俺しか居ないから安心しろ)
言葉は通じて居ないだろうが、言いたい事が判ったのか女は藪の中から出て来た。
「发出什么好的气味儿、你什么制作着」
(何かいい匂いがするわね、アンタ何を作っているのよ)
「मैंने तुम्हें कल खिलाने को कहा था 」
(昨日食わせてやると言った貝さ)
しかし、言葉が通じないのは難儀だな。取り合えず一つ俺が食べてみて安全だと言う事を教えるかな。ちょうど良い具合に焼けたハマグリを差し出した。
女はひったくる様に俺からハマグリを奪い、おもむろにハマグリを掻き込んだ。
「唉呀,意外好吃」
(あら、意外といけるわね)
相変わらず言葉の意味は分からないが、満面の笑みで何かをつぶやく女は、俺の目にはとても眩しく見えた。航海の導き手と言われる太陽の女神もこのような顔をしていたのだろうか?
「तुम्हारा नाम क्या है」
(あんた名前は何ていうんだ)
「アマミよ、请预先记」
アマミと言うのか良い名前だな。
その後の言葉は覚えておけと言う解釈でいいのだろうか?
だとしたら今後も会ってくれると言う訳だ。
今度は旨い魚でも食わしてやろう。
言葉を通じない環境を演出するために中国語とヒンディー語を使っていますが、別に中国人とインド人の話では在りません。時代背景は約7300年前。
一応、喜界カルデラの噴火までは書く予定ですが、人気が出たら長期連載化するかもしれません。