M−8:『・・・アッシュ』
砂漠・・・ノートは粒子をシールドで防ぎ空を見つめる。
『……あれは……』
ミオはそこにいる漆黒のミュトスを見る。
『…………』
ミオはサーベルを抜き構えた。
漆黒のミュトスは槍から孔雀石のような色の粒子の刃を出しノートに切り掛かった。
『………うっ………』
ミオは咄嗟に機体を左にずらしそれを避ける。
だがノートのライトアームはその刃に貫かれ爆発した。
『グングニルを避けるとはなぁ。てめぇが噂の・・・』
男の声がノートのコクピット内に響く。
『……噂?……』
ミオはシールドから粒子の刃を出し切り掛かる。
だがそれは空を斬った。
『命令にはねぇがまぁいいだろ・・・』
ミュトスはマニピュレータから粒子を出しノートに放つ。
『……………』
ミオはそれを避けるが・・・
『あめぇよ!!』
ミュトスは爪先から粒子の刃を出しノートの腹部を切り裂いた。
『……!!………』
ノートはバランスを崩し砂の上へと落ちた。
『終わりだなぁ!!』
ミュトスは槍を構える。
だが背後からの攻撃がミュトスのバックパックに命中しミュトスは怯んだ。
『誰だ!?』
ミュトスは背後を振り向き槍を構える。
そこにはヨルズの姿があった。
『まさか・・・オーディンが来ていたなんて』
リンスは腰部に展開させた粒子砲を放つ。
『あのミュトスは・・・そうか』
ミュトス・オーディンはそれをかわしヨルズに間合いを詰める。
『お前がリンス・ルゥ・ライラか?』
オーディンは槍をヨルズに振り下ろす。
『それがどうしたの?』
ヨルズはサーベルを抜きそれと鍔ぜり合う。
『ある“男”からの伝言だ!“ラグナレクは完成した”だってよ!』
オーディンは槍を横降りし、ヨルズを吹き飛ばす。
『やっぱり・・・ラグナレクが』
ヨルズは体制を立て直しサーベルを構え追撃に備える。
だがその追撃はこずオーディンは槍の粒子を消した。
『今のオレへの命令はヘイムダルの破壊だ・・・お前じゃない』
オーディンはヨルズに背後を見せる。
『ヘイトは殺らせないわ・・・』
リンスはオーディンの背後に切り掛かる。だがオーディンの槍の反対の柄から刃が現れヨルズの脇腹部を掠めた。
『くっ・・・・』
ヨルズは後ろに下がり射程範囲内から離れた。
『ヘッ・・・じゃぁな?リンス嬢』
オーディンはそのままその場を後にした・・・
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ベットの中、ミオはゆっくりと眼を開ける。
「……う、ん……」
身体に掛けられていた布団がずり落ち白い綺麗な肌がその下から現れた。
ショーツだけを穿いていただけだったミオは眼を擦りフラフラとした足取りで布団から出て凹凸の無い身体をさらけ出しながら歩きハンガーに掛けていたその肌と同じ位の純白のワンピースをその上から被るように着た。
そして、冷蔵庫に入れていたミネラルウォーターのペットボトルを出し蓋を開け二口、口に含んだ後それを冷蔵庫に直した。
「………ふぁ………」
欠伸を手で隠しながらミオは自分の機体の状態を確かめる為部屋を後にした。
* * *
−フューチャー社の近くの空き地−
「・・・アキラ」
リオウはベンチに座りながらヘイトの背中を見つめる。
「ありがとな?あの時お前が助けてくれなければ俺は・・・」
「・・・」
ヘイトは無言で背中を向け蒼い空を見つめていた。
「なぁ・・・俺達はやっぱり戦わなくてはいいんじゃないのか?」
「・・・」
「アキラ・・・戻ってこい」
リオウは立ち上がりヘイトの横に立ちその肩を掴んだ。
「まだ・・・」
ヘイトは小さく呟く。
「・・・え?」
「・・・まだ全てが終わったわけじゃない・・・終わっていないんだ」
「アキラ」
「その名前は全て終わってから名乗るよ・・・“憎しみ(ヘイト)”はまだ終えていないのだから」
ヘイトはリオウに微笑みその場を後にする。
残されたリオウはその背中を見つめ小さく呟いた。
「アキラ・・・憎しみから生まれた争いはいつか自分の身を滅ぼすぞ・・・」
* * *
「先刻の戦闘で私の部下達を助けて戴き有難うございます」
スズカは軽く頭を下げソファーに座っているリンスに言う。
リンス達はさっきの戦闘の後、生存者のリオウ、アッシュ、レンカを助け此処フューチャー社に来ていた。
「別に構いませんよ・・・私達はただ貴女に会う口実の為に彼等を助けただけですから」
リンスはスズカに微笑みかけ答える。
「何が望みなのですか?」
スズカはリンスと正面にあるソファーに腰を下ろす。
「此処の設備を少し拝借して欲しいだけですよ・・・後は貴女の今、現在知っているリベレイターの情報を・・・」
リンスは今度は鋭く睨みながらスズカを見つめる。まるで敵を見るような目付きだった。
「ふふ・・・どうやらそちらが本命のようですね?・・・良いでしょう。お教えしますわ私の知っている全てを・・・」
そう言ってスズカは立ち上がりデスクに置いてあるパソコンを操作する。するとカーテンが閉まり部屋の明かりが消え大きなディスプレイが天井から現れた。
そしてそのディスプレイには漆黒の宇宙が映し出されていた。
そして映像は拡大されていき一つの大きな建造物を捕らえた。
それは紅い大きな刀身を持つ“何か”だった。
リンスはそれを見つめため息を漏らした。
「『ラグナレク』・・・本当に完成していたなんて」
スズカは浚にキーボードを叩き次に漆黒のミュトスの映像を映し出した。
「オーディン・・・彼の有名な神。その神を現在操っているのは“戦争屋”カルマ・カーニッグ・・・」
「カルマ!?」
リンスはその名前を聞き驚く。その名前は国際指名手配された男の名だったからだ。元々傭兵だった彼はその性格からか敵味方問わず大量虐殺を行った戦闘狂。それが原因で指名手配された彼だがある日その姿を消してしまったという。
「まさかそんな男がオーディンに・・・」
「まぁ、嫌われている彼ですが腕は超一流ですからね・・・そこを買われたのでしょう。恐らく・・・」
スズカはパソコンの操作をやめカーテンを開け明かりを点ける。
「私の情報はこれだけですよ?」
スズカはソファーに座る。
「・・・これからどうします?」
「宇宙に上がります。ラグナレクを止めなくちゃ・・・」
リンスは手をにぎりしめ俯く。
「では、手配をしましょう・・・」
「!?手配って」
「ラグナレクの威力は貴女もご存知でしょう?時間がありません・・・私が今から宇宙に上げるための手配をしますわ。貴女はミュトスの予備パーツ、ミュトスを艦の中に収容してください。役割分担した方が良いでしょう?」
スズカはそう言いリンスの両肩を押し外へと出した。
「そうね・・・」
リンスは走りミュトスがある収容場を目指した。
「時は一刻を争います・・・恐らくあちらには“L”も・・・」
スズカは呟きパソコンを操作した。
セツカはリンスの情報を聞きヘイト達を艦に戻るよう連絡した。
「まったくあの娘ったら、いきなり宇宙に上がるて言うんだから・・・」
セツカはふて腐れながらも艦の調整をユウキと共に熟していく。
「ですが仕方ありませんよ?リンスちゃんから貰った情報によるとこのラグナレクって兵器は一度放たれると地球の半数以上の生物が死滅するようですから・・・」
ユウキはディスプレイを見つめキーボードを叩く。
「最高の大量破壊兵器ってか?リベレイターめ、奴らの目的は最初からこれだったのか・・・」
ジンはブースタの連結作業を進ませながら答える。
その時、警報音がブリッジ内に響き渡った。
「敵機がフューチャー社に向かって来ました。数は二十!!」
「チッ!敵さんは俺達を宇宙に上げたくないってよ?」
「フューチャー社のHEAが展開しました。」
「ジン!作業を急がして!!」
「分かってる!!」
ジンはディスプレイを見つめながら連結作業を急がせた。
* * *
「リオウ!」
アッシュはリオウを見つけ引き止める。その横にはレンカの姿もあった。
「アッシュ・・・お前は左眼を怪我してるんだ。大人しくしていろ」
アッシュは先刻の戦いで左眼を負傷していた。レンカも右腕を骨折していた。
「わかっている・・・ただ言いたい事があってな」
アッシュはリオウの横まで歩み寄り耳元で呟いた。
「死ぬなよ・・・」と。
そう呟いた後アッシュはリオウの横を通り過ぎその後ろにレンカが付いていった。
「・・・言われなくても、な?アキラ・・・」
リオウは振り向き壁にもたれ掛かるヘイトを見る。
「急ぐぞ・・・ヴォルヴァの発進まではまだ時間がある・・・なんとしても食い止めるんだ」
ヘイトはそう言いヘイムダルのコクピットに乗り込んだ。
「・・・世界を護る為に・・・」
リオウもゲリに乗り込んだ。そしてヘイムダルの後に付いて発進した。
ヘイムダルはライフルを放ち向かってくるゲルを破壊する。
「所詮は量産機ッ!!」
ヘイムダルはサーベルを抜き向かってくるゲルのマシンガンを左右に避け上半身と下半身を真っ二つに切り裂いた。ゲルはそのまま空中で爆発し、姿を消した。
「アキラ!出来るだけ街の外で戦うんだ!」
リオウは注意しながらライフル放ちゲルを墜としていく。
「……ヘイト…手伝う……」
ミオの黒い戦闘機、ノートは右翼に装備されたライフルを放ちゲル達を墜としていく。そして街内にいる最後のゲルをノートを変形させシールドの粒子ソードで腹部を貫き爆発させた。
「……リンスは忙しいから……戦力はヘイト、私、リオウさんだけ…」
「そうか・・・サンキュミオ。リオウまずは外の敵を!!」
「わかっている!」
リオウはヘイムダルの後を追う。
「……ん………」
ミオもその後に続いた。
外にはゲルの他に違う機体が数機いた。
それは紅い翼をもつHEAだった。それはヴァルキュリアと呼ばれるHEAだった。ヴァルキュリア・ラーズグリーズ。
ラーズグリーズはその手に持っている大きな剣を構えヘイト達に切り掛かって来た。
ヘイト達は散開してそれを避ける。
「クッ!どうやらリベレイターの新型のようだ」
ヘイムダルはライフルを構えラーズグリーズに向かって放つ。だがラーズグリーズは翼を前に展開させ粒子を防いだ。
「どうやらゲルとは違うようだな」
リオウは粒子サーベルを抜き切り掛かる。
だがそれは避けられ空を斬った。
ラーズグリーズはすかさずリオウに向かって粒子ライフルに変形させた大剣でリオウのゲリに放った。
「……………」
ラーズグリーズの粒子はノートがリオウの前に移動してシールドで防いだ。
「済まないな・・・ミオちゃん」
「……いえ………」
ミオはそう答えた後、サーベルを抜きラーズグリーズに切り掛かった。だがそれもリオウと同じで空を斬った。だが・・・
「……見切ってる………」
ノートのシールドの粒子ソードが延びラーズグリーズの胸部を貫いた。
バチバチッというスパーク音の後ラーズグリーズは爆発した。
「……射撃武器では翼で防がれる……近接攻撃はこちらの動きを詠まれ避けられる…だけどそれは一度だけ……二度目の攻撃は見切られない……」
ミオはそう言い2機目のラーズグリーズをさっきと同じように破壊していく。
「成る程な・・・」
リオウ、ヘイトもそれに続きラーズグリーズを破壊していった。
その時、リンスから通信が入った。
『ヘイトさん、ミオちゃんこっちの作業が終わりました・・・撤退して下さい』
ヘイトは向かって来るゲルをライフルを放ち破壊する。
「……ヘイト…時間…」
ノートがヘイムダルのライトアーマーを掴む。
「だがまだ・・・」
“片付いてはいない”と言おうした時リオウが。
「アキラ。もう良い・・・後は俺がやる」
「しかし・・・」
「お前がやるべき事はこんな事じゃない」
リオウはライフルの弾をリロードしゲルに放つ。
「行け!!お前のすべき事をするために!」
「……ヘイト……」
ヘイトは数機のゲルと交戦するリオウを見つめる。
そしてミオのノートを見て
「・・・あぁ、行こう」
ヘイムダルはバックパックのバーニアを噴かせ戦闘区域を離脱した。
ノートも戦闘機に変形しその後に続く。
だがゲルはそれを見逃さず追う。
「行かせるかよ」
リオウはライフルを放ちそのゲルを破壊する。
「来い!!」
リオウはゲリの腰部に装備された粒子サーベルを抜く。
「じゃぁ行かせてもらおうか!!」
突然リオウに向かって突っ込んで来た黒い機体がぶつかった。
「さぁ!!オレを愉しませて見せろよ!!」
漆黒の槍を持つミュトス、オーディンは槍の先端部から孔雀石のような輝きを持つ粒子の刃を出現させる。
「クッ!カルマ・カーニッグ・・・貴様も此処に」
リオウはオーディンに切り掛かる。
「へッ!戦いがオレを呼ぶんだよ!!全てを破壊しろってなぁ!!」
オーディンはゲリのサーベルを槍で鍔ぜり合う。
「ちっ!貴様のような信念も持たない奴が!!」
リオウは膝部でオーディンの胸部を蹴った。
「シンネン?生憎オレ様の辞書にはそんな用語は存在しないのよ!!」
オーディンは体制を立て直しマニピュレータ−に装備された粒子砲を放った。
「人間のクズが!!」
リオウはそれをサーベルで斬り防ぐ。
「オレは本能に従い生きている!人にとやかく言われる筋合いはねぇんだよ!!」
オーディンは爪先部の粒子の刃を出しゲリのレフトアーマーを切り裂きレフトアームを切り落とした。
「じゃぁなぁ!!」
オーディンは槍を構える。だが槍の刃はゲリには届かずゲリの前にある刀に防がれた。
「なんだぁ?てめぇは!!」
「アッシュ・・・」
リオウは自分の前にいる真紅のゲリを見つめて呟いた。
「リオウ・・・どうやら俺がいなけりゃいけないようだな?」
アッシュはリオウのゲリを見て笑う。
「お前・・・目が」
「そんな事は良い・・・くるぜ」
アッシュは日本刀、MURAMASAを構えた。
「オレの邪魔をしようたぁ良い度胸じゃねぇか!!」
オーディンは槍で真紅のゲリを突く。
だが刃はゲリの日本刀に防がれる。
「なに!?グングニルがただの実体剣に防がれるだと!?」
アッシュはさらに腰部に装備された剣を抜きオーディンのレフトアームを斬る。
「チィィ」
オーディンのレフトアームは装甲が砕かれ内部構造部が剥き出しになった。
オーディンは槍を横降りに振りゲリを吹き飛ばし間合いを取る。
「ヘッ!たいした事はねぇな?てめぇも」
アッシュは刀、剣を構える。
そして剣を振りオーディンに斬り掛かる。
「テメェ!!」
オーディンはそれを槍で鍔ぜり合う。
「そら!もう一丁!!」
アッシュは刀でオーディンのレフトアーマーを切断した。
その刃はさっきの刃とは違いオーディンの装甲を砕くのではなく切断した。
「ぐぁぁぁ!!」
オーディンはその後ゲリに頭部を蹴られ下にある海に落とされた。
「アッシュ・・・その刀は?」
リオウは刀を見てアッシュに問う。
「あぁ、此処に来る前に何か装備がないかと調べたらあったんだ・・・コンテナに入っていてな確か“ユグなんとか”て書いていたな」
「“ユグドラシル”・・・」
リオウは小さく呟いた。
(ユグドラシル・・・アキラによるとミュトスの動力源らしい。だがそれはリベレイターにしか存在しない筈だ・・・スズカか?だがもし手中にあるなら彼女ならもっと早く使用する筈だ。裏に誰かいるのか?ゼニウス、リベレイターに通じる誰かが・・・?)
「リオウ!!危ねぇ!」
アッシュの叫び声と共にリオウのコクピットが揺れる。
オーディンの槍がリオウのゲリの頭部を貫いた。
「ぐぁっ!!」
リオウのディスプレイは波が入るが直ぐにサブカメラの映像へと切り替わる。
「どいつもこいつも皆殺しだぁ!!」
オーディンは海上に上がり投げた槍がオーディンのマニピュレータに収まる。
「リオウ!さがれ!!後は俺がっ・・・」
「逃がさねぇよ!」
オーディンは一瞬に間合いを詰めアッシュのゲリのライトアーマーを掴む。
「なに!?速い!」
オーディンのマニピュレータ砲が掴まれたライトアーマーに直撃した。
「チィィッ」
アッシュはレフトアームに握られている刀を奮う。
だが槍に防がれる。
「アッシュ!!」
リオウは叫ぶ。
だがリオウの機体にはもうサーベルを形状するほどのエネルギーは無かった。
「じゃあなぁぁ!!」
オーディンの爪先部の刃が現れアッシュのゲリを貫いた。
バチバチと機体はスパークする。
だがゲリはオーディンからは離れなかった。
「ま、まだだ・・・」
ゲリは刀でオーディンの胸部を突き刺した。
「き、貴様ッ・・・!!」
それと同時にゲリは爆発する。
オーディンも爆発に巻き込まれ海へと落ちた。
「ア、アッシュゥゥゥ−−−!!!!」
リオウの声が響き渡った。
* * *
ヘイムダルは動きを止め振り返った。
「・・・リオウ?」
確かに今リオウの声が聞こえた。そんな気がしたヘイトは来た方向を見つめた。
ミオはそんなヘイトが気になり聞く。
「……ヘイト………?」
ヘイトはミオの声で振り向き首を振る。
「・・・なんでも無い。行こう・・・」
ヘイムダルはバーニアを点火させた。
「……ん……」
ミオは首を傾げその後を追った。
「セツカさん。物資の収容完了しました。」
ユウキはディスプレイを見てセツカに知らせた。
「そう、ありがとうユウキ・・・ジンそっちの方は?」
「こっちも今完了した」
ジンは腕を伸ばしながら答える。
「じゃぁ、セツカさん、発進させて下さい」
リンスが作業を終わらせブリッジに入り言った。
「え?でも、ヘイト達がまだ・・・」
セツカはリンスの言葉に驚く。
「時間がありません。報告によると先程オーディンと思われる機体がこの近くで確認されたようです」
「オーディン・・・明らかに今までのHEAの性能を上回る機体・・・」
ユウキはディスプレイにオーディンのデータを映しだし呟く。
「すでにヘイトさん達にも連絡をしています・・・ノートの起動力、ヘイムダルの“ラグナレクシステム”があればヴォルヴァに取り付けると思います」
“ラグナレクシステム”ヘイムダルに装備された隠された力。
これはユグドラシルの生産エネルギーを各部装甲を展開させ、一定時間機体性能を飛躍させるシステムである。そのエネルギーは機体装甲を覆い粒子兵器を含む全ての外部からの攻撃を無力化する事が出来る。ウィンロッドは『恐らくラグナレクという厄災に反応してこのシステムが作動した』と言った。“ヘイムダル”、(ラグナレクを知らせる者)も恐らく此処から来たのだろうと言われている。
だが、このシステムには欠点がありユグドラシルのエネルギーを機体全部に行き渡らせるという無茶な行いは長く続かず約10分足らずでオーバーヒートを起こし機体のシステムが停止してしまう。
「分かったわ・・・ヴォルヴァ、発進します」
「了解!ヴォルヴァ発進。」
ジンは舵をにぎりしめる。
ヴォルヴァは浮上し地面にほぼ直角に飛んだ。
リンスもシートに座り身体を固定する。
ヴォルヴァはスピードを上げブースタがフル稼働した。
「……ヘイト……」
「あぁ、急ぐぞ!」
ヘイト達は空に上がるヴォルヴァを確認した。
「ミオ先に行け!俺は後ろの奴らを・・・」
「……ん……」
ミオは小さく頷きノートのスピードを上げた。
ヘイムダルは振り返り後を追うゲルにライフルを放つ。
ゲルはそれを避け、ヘイムダルに近づく。
「邪魔だ!」
突然ヘイムダル全体が孔雀石のような輝きの光りが包み込まれた。
そしてヘイムダルはサーベルを抜きゲルを切り裂いた。
ゲルはスパークを放ち真っ二つに裂かれ爆発した。
「急げ・・・ヘイムダル」
ヘイムダルは急ぎノートの後を追う。
ノートはスピードを上げヴォルヴァの後部に追い付いていた。
「……もう少し……」
そして変形させ左腕でヴォルヴァの装甲にマニピュレータを引っ掛けた。
「……ヘイトは……?」
ミオは振り返りヘイムダルの確認をとる。
「……ヘイト………!」
ヘイムダルは装甲からユグドラシルの光りを放ち直ぐ傍まで来ていた。
「ヘイムダル・・・」
ヘイトはヘイムダルのバーニアをフルに使いヴォルヴァに追い付こうとする。
「……ヘイト……!」
ミオはノートの右腕をヘイムダルに差し延べる。
「うぉぉぉぉ!!」
ヘイムダルも左腕を前に突き出す。
2機のマニピュレータの間隔は徐々に近付く。
「……くっ………」
そして、遂に2機のマニピュレータ両方お互いが掴んだ。
それと同時にヘイムダルのラグナレクシステムが機能を停止させ、ヘイムダルの装甲を覆うユグドラシルの輝きが失った。
「……ヘイト………」
ミオはノートの右腕を引きヘイムダルは右のマニピュレータでヴォルヴァの装甲にマニピュレータを引っ掛ける。ヘイムダルと、ノートはお互いの頭部を交差させた。白と黒のミュトスはお互いを見る。
「…ヘイト………」
ミオはヘルメットを取りディスプレイに映るヘイムダルを見る。
「ミオ・・・」
ヘイトもヘルメットを脱ぐ。
そしてノートを見て微笑んだ。
ヴォルヴァはさらにスピードを上げ2機の、白と黒のミュトスと共に宇宙へと飛び出した。
ラグナレクを破壊する為に・・・
人物紹介
ユウキ・シャルマー
年齢 19歳
髪の色 グレー
姓で分かるようにウィンロッド・シャルマーの娘。
リンス・ルゥ・ライラの従姉妹になる。
父親と同じくメカの扱いが上手く普段は父親のサポートをしていた。(途中でオペレーターになるが暇があれば父親の手伝いをしている)
趣味は父親と同じくメカ弄り。母親はユウキを産んですぐに他界しており父親一手で育てられたのが原因だと思われる。容姿は大和撫子のようで可憐な雰囲気をしている。髪も長く腰辺りまで伸びている。普段は邪魔にならないよう一つに纏められている。
因みに彼女の悩み事は自己主張が大きい胸である。ようするに大きい胸が彼女の悩みらしい。普段、リンスにからかわれ揉まれて困っているらしい・・・
リンスは『これは絶対Gは越えているわ』と言っている。
カルマ・カーニッグ
年齢 32歳
髪の色 ダークブルー
傭兵。過去に大量虐殺を行い国際指名手配されている。その言動、態度から分かるように殺しをもう飲食と同じようにしか思っていない。当たり前の事、当然の事だと思い人を殺している。十年前彼はヘイト・ディスター(アキラ)の両親をオーディンを駆け殺害した。そしてそれっきり姿を消していたが十年後、現在また、姿を現した。
一応彼はリベレイターと共に戦っているが実はリベレイターには参加していない。一匹狼が好む彼は群れるのが嫌いだかららしい。
因みに彼の敵機を破壊する時の『じゃぁな』は口癖らしい。
容姿は二枚目俳優のような性格に似合わない顔をしている。髪も男性にしては長く背中位まで伸びている。
【機体説明】
リベレイター第2期シリーズHEA
『ヴァルキュリア』
ラーズグリーズ
型式番号 LR−20V
頭頂高 18.0m
本体重量 6.3t
全備重量 7.6t
ジェネレーター出力
4500kw
スラスター総推力
ユグドラシルのエネルギーでの稼動なので推進剤を必要としない。
動力
ユグドラシル不純石
センサー有効範囲
4000m
武装
粒子サーベル×2(脚部にマウントしている)
粒子サブマシンガン×1
防翼『ヴァルキュリア』×2(バックパックに装備されている)
リベレイターの第2期シリーズのHEAである。遂に量産機にも粒子兵器を装備させる事に成功させた機体。
天使を思わせる形状をしている。頭部も以前のゲルとは違いツインアイカメラが採用されている。そしてアンテナは額の中心に付けられ一角獣のような感じになっている。
武装の粒子ライフルはノートと似てマシンガンになっている。サーベルもミュトス達とそう変わらず出力も十分にある。
そして特徴の翼は前に展開させシールドを装備されていないラーズグリーズの盾となる。
だがそれはある程度の攻撃だけで出力の高い攻撃は防げない。(粒子サーベルのような収集された物は防げない)
パイロットは以前のゲルと同じく乗っておらず、AIが使われている。AIも大分改良されたらしく相手の攻撃をある程度避けるようになった。
そして動力の『ユグドラシル不純石』はミュトスのユグドラシル鉱石とは違い出力は劣るが人工的に大量生産が可能になっている。
出力以外に違う所は色が孔雀石のような輝きを持たず濁った緑色をしている。
機体のカラーリングはレッド。
名前は北欧神話のオーディンの配下天使『ヴァルキリー』、(計画を壊す者)ラーズグリーズである。