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High-End-Arm  作者: 紅雫
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M−4:『大丈夫だから……』

ヘイトはリオウに連れられゼニウスの要とも言えるHEA製造社『FUTUREフューチャー』に来ていた。

「どうして連絡を寄越さなかったんだ?責めて生きている事を伝えるだけでも・・・」

リオウはエレベーターのボタンを押す。そして最上階の階を押した。

「・・・」

「まぁ、良いさ・・・スズカが喜ぶ筈だから」

エレベーターは上へと進む。そして最上階に到着し扉が開いた。

そこは赤い絨毯が一面に敷かれた部屋だった。

リオウは扉を開きヘイトを中に誘う。ヘイトは無言でその中に入った。

そこに居たのは黒いロングヘアーの髪をした少女がデスクに座っていた。

少女は無言でヘイトを見つめた。

「・・・スズカ」

ヘイトはその少女を見て名前を呼ぶ。

「・・・」

スズカは相変わらず無言のままでヘイトを見つめた。

「おい、スズカ!アキラが生きてたんだ!何か反応しろよ?」

リオウはスズカの横に駆け寄る。

「リオウ・・・どうして彼を連れて来たの?」

「え!?」

リオウは思っていた反応とはまるで違ったスズカに驚く。

「それに貴方もよ、アキラ・・・いえ、今は『ヘイト・ディスター』だったかしら?」

スズカは立ち上がりヘイトを睨む。

「何を言ってるんだ?スズカ」

リオウは戸惑う。

「どうやら全て知られているようだな・・・」

「ええ、全く呆れるわ。まさかリベレイターに参加していたなんてね?」

「な・!?」

リオウはスズカの言葉に驚きもはや戸惑いを隠せずにいた。

「どうしてリベレイターに参加したのかしら?返答次第では私は貴方を殺しますわ」

スズカの冷たい瞳がヘイトを貫く。

「・・・ゼニウスを潰す・・・そのためには力が必要だった」

「おい!おかしいだろう!?お前の家族を殺したのはリベレイターだろ?なら、憎むのは普通リベレイターだろ!?」

リオウは叫ぶ。

「確かに俺の親を殺したのはリベレイターだ。憎しみもある。だが、ゼニウスは何も助けに来てくれなかった!!あんなに激しい攻撃だ。普通気付くだろ?でも、ゼニウスは気付かぬふりをして、俺や父さん、母さんを見捨てた!俺は絶対に許さない!ゼニウス、世界を信じない」

「・・・貴方はリベレイターがどういう組織か知っていますの?」

スズカはパソコンのキーボードを叩き問う。

「・・・人を束縛するものの解放だろ?」

「確かにリベレイター(LIBERATOR)とは『解放者』を意味します・・・でも、それは貴方の言っている人々を支配から解放するという意味ではないと思う・・・」

と、その時外から爆音が響き渡らせた。

「!?なんだ」

ヘイトは急ぎ窓に向かい外を眺める。

外は爆炎を撒き散らし建物は次々に飲み込まれていく。そしてその中からリベレイターのHEAゲルが数十機現れた。

「な、何故リベレイターが民間地を・・・」

ヘイトはこの光景にくぎづけになり呟いた。

スズカはリオウに出撃命令を出し、ヘイトの横に歩み寄りその光景を見つめた。

「これがリベレイターよ・・・確かにリベレイターは解放者よ。でもねそれは人々の解放じゃない。地球を人の支配からの解放なの・・・そのために彼等は人の抹殺を続けているわ」

スズカはヘイトを見つめる。

「・・・どうするの?貴方はこの現実を見て・・・これが貴方の目指す世界なの?」

ヘイトは視線を反らし俯く。そしてリンスに渡された携帯電話を手に持ち逃げるようにその場を後にした。


「・・・アキラ貴方は世界を見なさ過ぎる・・・もう一度考え直しなさい・・・貴方にはこの血塗られた世界を変える事が出来る力が有るのだから」

スズカはデスクの上にあるパソコンを見つめた。ディスプレイには『SYSTEM“R”HEIMDALL』と写し出されていた。



 * * *

時は少し遡りリンスとミオは爆撃されている街の中を走っていた。

「ハァ、ハァ、なんでゲルが民間人を攻撃してるの〜!」

リンスはミオの手を繋ぎ走る。

ミオは薄い長方形型の通信機でセツカと連絡していた。

「……了解……ポイントFに向かう……」

ミオは通信機を服の中に入れる。ミオの今の服装はゴシックロリータだったので入れるポケットがなかった。

「……リンス海岸沿いに……」

「わかったよ〜」

リンスはミオを抱き抱え海岸沿いに向かう。ミオは小柄なのでリンスは楽々に抱き抱えた。

「それで〜どうやってノートを受け取るの〜?」

リンスはミオの顔を覗き込む。

「……飛び乗る……」

ミオはさらっと言った。

「あはは・・・マジなの?(^-^;」

リンスは引き攣り聞き直す。

「……マジ……」

やはりミオはさらっと言う。普通移動中のHEAに乗り込む者はいない。もし少しでもタイミングを逃せばコクピットに乗り込めず機体に轢き殺されるからである。

しかも今のミオはゴシックロリータである。動きにくい服で飛び乗る事は死にに行くようなものであった。


そしてリンス達は目的地へと着いた。

リンスはミオを下ろす。

「ねぇ〜やっぱり止めなよ〜、ミオちゃん死んじゃうよ〜」

リンスはミオの手を握る。

「……来た……」

ミオは海上から来る小さな黒い影を見つけた。

「……リンス、心配しない、大丈夫だから……」

ミオはリンスの手を優しく振りほどく。

黒い影はどんどん近づいて来る。

「ミオ・・・」

リンスはコクリと頷き数歩後ろに下がる。

「……じゃぁ……」

ミオは崖を飛び降りた。

そして戦闘機状態のノートのシールド部分の上に取り付いた。

「…………」

ミオは風に扇がれながらも這うような体制で前へと進む。

そして少し出っ張っている箇所に手を置く。

すると、その出っ張り部分は開き中にスペースが現れた。ノートのコクピットだった。

ミオは滑るようにその中に入った。此処まで掛かった時間は僅か十数秒だけだった。

「…………」

ミオはシートに座りハッチを閉めた。そしてディスプレイに掌を置き指でそこを数回弾くように叩いた。すると回りに明かりが灯りディスプレイに『MYTHOS-N=TT』と表示され、回りに外の映像が映し出された。

「……お願いねノート……」

ミオはグリップを引き、ノートを戦闘機からHEA形態へと変型させた。

ノートはそのまま、攻撃された街へと向かった。




リンスはその光景を見て安堵した。

「はぁぁぁ〜、よかったぁ〜、あの娘あんな無茶して〜」

溜め息を吐いていると携帯が鳴り響いた。

リンスは携帯を開き画面を覗くと相手はヘイトだと分かった。

(そろそろ来ると思った〜)

リンスは心の中でクスクス笑って電話に出た。

「もしも〜し、ヘイトさ〜ん・・・うん、今ミオちゃんが向かったから・・・あはは、私が出たら街が消えちゃうよ〜・・・うん、分かったよぉ〜じゃあねェ〜」

リンスは電話を切ってポケットに直す。

「よ〜し!いざこざはミオちゃんに任せて私は待ち合わせ場所にレッツゴー!!」

リンスは元気よく右手を上げて歩き出した。



街は最低限の被害に食い止められていた。

レンカのゲリがライフルを構えゲルに向かって放つ。直撃したゲルは破壊まではいかなかったが仰向けに倒れ機能を停止した。

「まったく、民間地区を襲うなんて」

レンカは次々来るゲルに向かってライフルを放つ。

だが数が多過ぎて全てを破壊出来なかった。何体か弾を交わしレンカに襲い掛かって来た。

「アッシュ任せたわよ?」

「あぁ、分かった」

アッシュのゲリが剣を抜き迫って来たゲルを両断していった。

「くそ、数が多過ぎるぜ・・・流石に」

「泣き言なら後にする!」

レンカは浚にライフルを放つ。

「分かってらぁ!」

アッシュのゲリは浚に剣を抜きゲルを切り伏せる。

「レンカ!アッシュ!待たせた!」

とその時リオウのゲリが合流した。

「数が多いが頑張れ二人とも」

リオウはゲルにライフルを放つ。

「レンカ、援護を頼む!敵陣に突っ込む!」

アッシュは剣を構え数十機のゲルの中に飛び込んだ。

「まったく、何時もそんな無茶して・・・でも今はそんな無茶も必要ね・・・」

レンカはスコープを覗きアッシュに攻撃を行おうとしているゲルを狙いライフルを放つ。

だが、如何せん数が多過ぎて全てを破壊出来なかった。だがそれをリオウがカバーしていった。

「どれだけいるのよ?」

レンカはスコープを覗き敵機をロックオンしていく。するといきなりビーッとコクピット内を響き渡らせた。

「なに?」

レンカのゲリは空から来る物体をディスプレイに表示させた。そしてそれを拡大しその姿を確認した。

「!!ッそんな・・・こんな時に!」

ディスプレイには黒いHEAの姿が映し出されていた。

「どうした!?レンカ」

リオウは迎撃しながらもレンカに問う。

「じょ、上空に浚に敵機を確認しました・・・先日現れた黒いミュトスです」

「なんだと!?」

リオウの言葉と同時に黒いミュトス、ノートは地面に着地した。

ノートの二つのカメラアイが紅く光る。

「く、こんな時に!!」

リオウはライフルを構え放とうとした時、ノートはリオウとは正反対の方向にライフルを構え放った。

ノートの放った数発の粒子はアッシュの回りにいたゲル達を破壊した。

「な!?」

アッシュは驚きノートの方を向いた。

ノートは浚にライフルを放ちゲル達を破壊していった。

「どういう事だ?仲間割れなのか」

リオウはノートの行動を見つめる。

「だがお陰で助かった・・・あれのお陰でなんとかなりそうだ」

ノートは肩部に装備されたサーベルを抜きゲルに切り掛かった。

「……斬る………」

ミオは小さく呟きゲルを切り捨てた。

そしてシールドに装備された粒子砲を放ち遠くにいるゲルも破壊した。

「……これで最後……」

ノートのシールドの先端部の粒子ソードがゲルを貫いた。ゲルはスパークを起こし爆発した。

「……………」

ミオはその光景を冷たく見つめる。

そして機体を戦闘機に変型させ離脱した。

「行っちまったぜ?」

アッシュはリオウの横に着地し、呟く。

「どういうこと?」

レンカはライフルを下ろした。

「・・・とりあえず撤退だ・・・後は彼女スズカがやってくれるだろう」

(どうやら彼等は虐殺を望んでいないようだ・・・それだけでも収穫だな)

リオウ達は取りあえず街から離れ撤退した。




 * * *


リンスは廃工場地帯に来ていた。

そこにはヘイトがブロックの壁にもたれ掛かっていた。

「ヘイトさ〜ん取りあえず街を襲ったゲルはミオちゃんが全て破壊したって〜。もうすぐ此処に来るから〜・・・あ!言ってる間にきたようだね〜」

黒い戦闘機は変型し、膝を折る感じに着地した。

コクピットハッチが開き中からゴシックロリータで身を包んだミオが現れた。

ミオはコクピットから飛び降り着地し、リオウ達の所へ歩く。

「じゃぁ、ミオちゃんも来たので会議を始めま〜す。じゃぁまず、どうしてゲルが此処に現れたのか、だね〜」


**********************


リンスはしゃがみ込む。

「・・・どうやらリベレイターは俺達の知らない何かが有るようだ」

ヘイトは腕を組みミオの顔を見つめる。

「………………」ミオはコクリッと頷き肯定する。

「しかも、それはゼニウスの連中・・・いや、世界中の人達が知っているようだ」

「リベレイターがまさか民間人を襲ってたなんて・・・私はてっきり軍を相手にしていると思ってたのに・・・だから私はHEA開発を手伝ってた・・・虐殺の為に造ったんじゃない」

リンスは何時ものノロケ気味の喋り方を止めていた。

「……私も……」

「取りあえず一旦セツカさんの所へ戻ろう。あの人なら何か知っている筈だ」

「うん、分かったわ」

「……うん……」

そしてヘイト達は一旦セツカの所へ戻るのだった・・・









「それより、ミオお前どうしたんだ?その格好・・・」

「……リンスが勝手に決めた…………」

「どうどう!?可愛いでしょう〜」

「・・・あ、あぁ」

「……………………………………………………」

「まるで御人形さんだよぉ〜〜〜!」

何時もの調子に戻っているリンスだった・・・

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