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High-End-Arm  作者: 紅雫
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M−3:『お前は・・・』

「・・・まったく、えらくやられたモノだな」

男は頭を掻きながらヘイムダルを見つめる。

「そうですね。でも仕方のないことじゃありません?この機体は完成されずに戦場に出たのですから」

セツカはヘイムダルのコクピット周りのフレームを摩りながら呟く。

「だが、それでも酷すぎるんじゃないか?こりゃぁ、パイロットも悪いと思うぞ?」

「ウィンさん、彼はまだ子供です。仕方ありません」

(子供はまだ精神が脆すぎる)

男・・・ウィンロッドはセツカの言葉を聞き溜め息を吐く。

「今はどうこう言っても仕方がないな・・・まずはこいつの修理をしなきゃならんからな」

ウィンはヘイムダルのレフトアーマーの傷を見つめる。

(・・・妙だな。あれは高熱によって熔かされた後だな。粒子兵器か?・・・だが、粒子兵器はまだ実用段階には至っていないはず・・・)

「・・・今はそんな事を考えている場合じゃないか・・・」

ウィンは溜め息を吐きゆっくりと歩きその場を後にした。

ウィンの後ろ姿を見つめセツカは溜め息を漏らす。

「どうしたんだ?」

セツカの背中を一人の男がポンッと手を置く。

体格がズシッとした頼りになりそうな男だった。だが、特に目立ったのは右頬にある傷痕だった。

「ジン・・・なんでもないわ」

セツカはジンの手を払う。そしてその場を去ろうとした。

「あんまり自分を追い詰めるなよ?」

「解ってる」

セツカはカタパルトデッキを後にした。

「・・・解ってないだろが」

ジンは呆れ、溜め息を吐く。

(さて、今頃あいつらは街で生き抜きしているころか・・・いや、生き抜きをしているのはリンスだけかもしれないな。あの二人が生き抜きをしているとは思えないな・・・)



* * *


とある貿易都市にヘイト達はいた。ヘイムダルの修理の間、『少し街で遊んでこい』とセツカが言ったからである。

当然ヘイトは拒否した。

だが、ヘイトの拒否権を無視しセツカはヘイトを外へと放り出した。

ついでに、ミオ、リンスも放り出された。

「ヘイトさん〜何時まで不機嫌面を続けるのですか〜?」

リンスはヘイトの横に並び顔を覗き込む。

リンスの着ているピンクのワンピースは風に靡く。

「・・・」

ヘイトは顔を背け無言を貫き通す。

ヘイトの服装はグレーを基準にした地味な服装だった。

「・・・ヘイト、不機嫌」

ミオはリンスのワンピースを引っ張りヘイトから引き離す。

ミオの服装は黒を基準としたやはり地味な服装だった。

だが、服装は地味だがミオのシルバーの髪は充分に目立っていた。

「でもね〜、何時までもこの調子だとこちらも疲れるのですよ〜」

リンスは少し困った顔をしてミオを見下ろす。

「・・・疲れるんだったら俺から離れたら良い・・・」

ヘイトはボソッと答える。だが、その顔はリンスの方を向かず正反対の方を向いていた。

「ですが〜、一人ですと迷子になってしまいますよ〜」

リンスはそういってミオと手を繋ぎヘイトに見せる。

「……ヘイト…迷子する……」

ミオは無表情な顔でヘイトに注意する。

「心配ない・・・此処は俺の知っている街だからな」

ヘイトは周りの町並みを見渡し言う。

「そうなんですか!?初耳です〜」

リンスは目を丸くする。今までヘイトは自分の事については何も語らなかったからだ。

「・・・じゃぁな」

ヘイトはリンス達とは別方向の道へと向かう。

「待って下さい!!どこ行くんですか〜?」

「別に、俺の勝手だろ?」

「では、せめてこれを持っていて下さい〜」

リンスはヘイトに向かって正方形の薄い物体を投げる。それはヘイトの掌に収まる。

「それには私の番号が入ってますから〜、何かあった時はそれで連絡してください〜」

リンスはニコッと笑う。

「・・・」

ヘイトはそれをポケットに収め人込みの中に消えていった。

「……ヘイト……」

ミオはヘイトの消えていった人込みを少し淋しそうな声で小さく呟く。

そんなミオの態度に心配したリンスはミオの肩に手を置く。

「ミオちゃ〜ん〜、私と一緒にお洋服を買いに行こう〜♪」

「……え?」

ミオはリンスの方を振り向く。

「だってミオちゃんってさ〜あんまりオシャレしないじゃない〜。だから今日はミオちゃんのお洋服を買いに行こう〜♪」

リンスはミオの手を引っ張る。ミオはリンスに成す術も無く引っ張られてしまった。



 * * *



「・・・」

ヘイトは街の中心部を抜け街の外れに来ていた。

そこは建物が半壊しているものもあれば殆ど建物の形をしていないものまでもがあった。

「・・・時が経っても此処は何処も変わってないな」

ヘイトは少し哀しみの顔を見せる。だが、その表情は直ぐに消え苛立ちの色へと変わる。

「・・・父さん・・・母さん・・・」

ヘイトの内から黒い感情がはい上がってくる。

(なんで!?どうして!?助けてくれなかったんだ!!憎い!!俺の場所を奪った奴が!!憎い!!この世界が!!)

ヘイトは感情に任せレンガで出来た壁を殴る。レンガで出来た壁は脆かったのか、それともヘイトの力が強かったのかボロッと崩れた。

ヘイトはそれを冷たく見つめ、瞳から一滴の水滴を流す。そしてヨロッとあどけない足取りで歩きだす。

ヘイトの向かった先は何も存在しない空き地だった。ヘイトは空き地の中心まで歩きその場に座り込んでしまった。

「・・・“スズカ”、もし今の俺を見たらお前はどうする?怒るのか?哀しむのか?」

ヘイトは自分の掌を見つめる。今まで何人もの命を奪った汚れた掌を・・・

ヘイトは昔、この街に暮らしていた。何も変わらない普通の少年だった。

毎日平和に暮らしていた。その日が来るまでは・・・

虐殺だった・・・リベレイターの・・・

リベレイターはヘイトの屋敷をいきなり攻撃を仕掛けて来た。そしてヘイトは父、母を失った。だが、ヘイトだけは助かった。母がヘイトを庇ったからだった。その時の光景をヘイトは今でも覚えていた。世界が真っ赤に染められた光景を・・・

リベレイターはその後退却したがヘイトは恐怖に支配され動けなかった。だが、恐怖の他にも憎しみという感情が支配していた。それは、リベレイターが現れたのにゼニウスが自分達を助けに来なかったことに・・・

そのあとヘイトは、母の屍の中にいるところを一人の青年に発見された。長い黒い髪は風によって靡いていた。

青年は問う。『力が欲しいか』と・・・

そしてヘイトはその問いかけに頷き答えた。

青年は手を差し延べる。

ヘイトはその手に手をのばした・・・

ヘイトがリベレイターに参加した瞬間だった・・・




ヘイトは立ち上がる。

「・・・あの時出会った男は結局何者だったんだ?」

あのあとヘイトはあの青年には会っていなかった。

おそらくリベレイターの一員だとは思うが、あの青年はあれからキッパリと姿を消してしまった。

「今更考えても仕方がないか・・・」

ヘイトは空き地から出て歩きだそうとした時、後ろから呼び止められた。

「アキラ?・・・なのか?」

ヘイトは驚き振り向いた。その名前はリベレイターに入る以前の名前だったからだ。

「お前は・・・!?」

ヘイトは呼び止めた少年を見詰める。

少年のバイオレットの髪が靡く。

「リオウ・・・」

ヘイトの口が自然に動いた。その名前は彼の唯一の親友の名前だった・・・



 * * *


「う〜ん♪、流石ミオちゃんね〜素体が良い性か良く似合ってるよ〜」

リンスはミオの姿を見て笑顔を零す。

「……………」

ミオの服装はレースが入った黒い服・・・所謂ゴシックロリータだった。

そしてそれは童顔のミオには良く似合っていた。浚に自前のシルバーのセミロングの髪がミオをゴシックロリータを輝かせた。

「フフフ♪後はこれを付けてっと〜」

リンスは不敵な笑みをしながらミオのセミロングの髪をポニーテールになるようにリボンで結んだ。勿論そのリボンもミオのゴスロリに合うように黒いレースの入ったリボンだった。

「………………………………………」

「キャウゥゥ〜〜!!♪可愛いぃぃ〜〜!!♪ミオちゃんその可愛さは殺人級だよぉ♪」

リンスはミオを強く抱きしめる。ミオの顔はリンスの豊満な胸に埋もれる。

「お持ち帰り〜だね♪本当に〜♪」

ミオの髪をリンスは頬ずりする。

「……………………………………………………………………欝陶しい」

ミオは胸に埋もれながら小さく呟いた・・・

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