〜嫉妬心〜
人が苦手だ。嫌いなんじゃない。むしろその逆かな。どう接すればいいかわからない。人は皆、俺のことをフレンドリーなんて言い方をする。でも、それも最初だけだ。3か月も経てば無言で俺をさけていく。
それが俺の犯した罪。
黒板から4つ机を挟んで一番外の景色が見えるところから、俺は前の席に座っている二人を見ている。そのうちの一人剛がこちらに気づき振り向きながら声をかけてきた。
「なあ。聞いてくれよ辻弥!雅紀のやつまた連絡先相手に教えたんだってよ!」
すると右側に座っている雅紀が少し焦りつつ笑いながら、
「ちがうってば!いや連絡先は交換したけど、別にそんな下心があってのことじゃないんだってば!辻弥もなんか言ってやってよ!」
「相手が異性の年上って時点で下心みえみえなんですぅ!」
彼らはおそらく、雅紀が最近はまっているオンラインゲームで年上の女の人(本当かどうかはわからないらしい)と仲良くなって連絡先を交換したことがおもしろいから剛が俺にも共感してほしいのだろう。いつものことだ。俺は彼らに何言ってんだと、笑いながら言った。
放課後。二人とは駅で別れた。駅から徒歩約五分。たくさんの店が並ぶ大通りの一つ裏の道にそれはある。
「ただいまマスター。すぐ準備するよ。」
ここは、喫茶店。俺は扉を開きながらカウンターで客にコーヒーを入れている男の人に話しかけた。
「おっ。おかえり。別にゆっくりでいいさ。」
するとマスターの目の前にいた客が
「おかえりなさい辻弥君。お邪魔してるよ。」
「こんにちは。ゆっくりしていって下さいね。」
常連客の佐藤さんだ。マスターとは長い付き合いらしい。優しい顔のいい人だ。他にも客は何人かいるがほとんどが顔見知りだ。
少し前から思っていたのだけれど、うちの制服は少しかっちりしすぎじゃないか?ベストの上にエプロンは何か違う気がする・・・。
―――――ガッシャ―ン―――
突然店のほうから大きな音がした。あわてて更衣室の扉を開くと、人の形をした何かがカウンターのそばで女子高生に殴りかかっていた。俺はその子を右手で支え、左手で人型の何かを殴った。人型の何かは苦しみながら人ではなく黒いスライムのような形になりそのまま床の陰に入っていった。店の出入り口の前でマスターが【close】の看板を持って
「いやぁ。すまんすまん。油断しちまった。年かなぁ。」
店にいる客は皆、マスターに、次からは気ぃつけろよ?とか、マスターは大丈夫なの?なんて心配していて大して驚いないようだ。一人を除いては。
「あ…あのっ。さっきのは何だったんですか。どうして皆さん平然としているんですかっ!」
俺に支えられながら彼女は声を震えさせ言った。なんと説明すればいいのやら…。
「とりあえず、コーヒー飲みませんか?一言では説明しずらいので。あ、でも。この店に入れたってことは、あなたも…いえ。あとにしましょう。」
彼女を椅子に座らせて、コーヒーを入れながら、
「俺の名前は篠田 辻弥。君は?」
「藤原 愛海です。さっきは助けてくれてありがとうございました。」
「どういたしまして。ここは人でないものやそれに悩まされている人たちが自然と導かれる場所。だから君にとってここは安全だよ。」
彼女にコーヒーを渡しこう続ける、
『 ようこそ喫茶【フォレスト】へ。』