初戦闘。初戦犯。
リンカを後にして森に歩き出すコウキ
歩き始めて約一時間
少々リンカを置いて来たことを後悔し始めたその時
茂みがカサカサと音を立てて動いていた。
コウキは足をガタガタ震わせながらおそる恐る恐るその茂みに手を近づけようとするが、残り1mくらいの所で何か飛び出して来た。
暗い森の中、月の明かりでかろうじてその何かの影だけが見える状態だ。
しばらく見えない何かと睨み合っていたが、だんだんと目が慣れていき、ついにその何かの正体がはっきりと見えるようになった。
それは狼の頭に丸々とした身体をした生き物だった。
体長は1mくらいだがその生き物との距離はほんの2mだった。
コウキは震える足を踏み出し手に持っている剣で斬りかかった。
が…
スカッ
綺麗に外してしまった。
一回外した事でコウキは怖いと言う恐怖心より悔しいと言う感情の方が大きくなっていた。
次こそは仕留める、そのことしかコウキの頭にはなかった。
それに伴って自然と足の震えも落ち着いて来た。
完全に震えが止まった瞬間、コウキはもう一度剣を振りかぶり斬りかかった。
スカッ
またも外してしまった。
二度も外してしまった事により、自分の中の恐怖心がまただんだん大きくなった。
だが、今出てきた恐怖心はタチが悪かった。
何故なら、自分の弱さも連れてきてしまったからである。
一度止まったはずの足が、またガタガタと震えをあげていた。
次は私の番だと言わんばかりに、狼の生き物は襲いかかってきた。
「もう終わりだ…」コウキはそんな事を思っていた。
その生き物のまだ伸びきっていない爪がコウキの顔、残り10センチに来た時、
コウキは覚悟して目を閉じた。
しかし一人の声が聞こえた
「本当にダメダメですね。あなた。」
その声に驚いた時にはもう、コウキの目は開いていた。
辺りを見回すと、正面向かって左にある木に狼の生き物が突き刺さっているのが見えた。
するとその生き物が突然光始めだんだんと薄くなり消えてしまった。
消えたところには小さな剣が木に刺さっていた。
その光景をまじまじと見ていたコウキだったが、後ろから
「ヤッタァお金ゲットしました。」
と明るい声が聞こえた。
振り返ると金色の髪の毛をポニーテールにした小学生くらいの少女がいた。