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未来予知  作者: 李人
4/13

4.テスト前

 その日は朝から絶好調だった。

 ………………予知が。


 朝起きて寝ぼけ眼の時に“自分が朝寝坊する”という映像で目が一気に覚めた。

 宮本も同じ映像を見たのだろう、「起きてー!」という甲高い電話がかかって来た。

 それから柊からのメール。

≪映像見た。直接話す≫

 それに次々と返される返信。

 了解、とだけ送ったのが服を着て家を出る時。

 直接話すということは、いつも通り例の教室へ集合という柊なりの合図だろう。

 いつもより少し早めの時間。

 ゆっくり歩き始めた。

   ***

 特別教棟四階の空き部屋・最近は鍵部屋とも呼んでいる。

 宮本が言い始めたのがきっかけだった。

 そのドアを開けると、既に先客がいた。

「海上! 早かったな!」

「柊こそ……」

「そりゃ、呼び出しといて遅れて来るのは嫌だからな」

 柊らしい理由だ。

「やっほー! おはよう要人!」

 宮本、続いて佐藤と佐久間もやって来た。

「それで、どんな映像を見たの?」

「それが――――――……」

   ***

 朝のホームルームが終了。

 一時間目前の少しのんびりとして暇な時間。

 急に前の席の人が後ろを向いてきた。

「お、お前さあ、最近宮本さんと仲良いよなぁ……」

「橋本?」

 一度、連絡網の電話で話すようになった橋本(はしもと)賢治(けんじ)

 殴ると言われた時は若干引きもしたが軽いデコピンで済んでよかった。

 あれから仲良くなったわけではないけど話すようにはなった。

「……そうか?」

「そうだよ! いいよなぁ、あんな可愛い子と仲良くって……俺なんか近くにいるだけでも心臓バックバックなんだからな!」

「心臓が? 大丈夫なのか?」

「そこは察して恋だと思え! 宮本さんのあの笑顔に何回癒されたことか……」

「へぇ……恋なんてするんだな」

「そりゃ健全な男子高校生だからな! 好きな女の子と付き合ってキスしたいって思うのが普通だろ?」

「…………普通……?」

 女の子、か。

「お前だって実は、宮本さんに恋してんじゃねぇの?」

「恋? 宮本に?」

 恋愛……頭に思い浮かぶのは、凛としたアルト声の持ち主。

 あれ、なんで俺は今。

「海上、海上!」

「柊……!」

 名前を呼ばれ後ろのドアを向くと柊が顔を出していた。

 橋本に少し出ると伝え、柊の元へ行く。

「どうした……一組、ここから遠いだろ?」

「こっちは一限目自習だから大丈夫なんだよ。それより、朝言ったこと覚えてるか?」

「ああ、映像の?」


 ――それが、まあ全員集合にしちゃったけど海上だけに関する予知だったんだけどな。


 ――俺の?


 ――海上が、三組担任の平山先生に怒られているっぽい映像だったんだけど……。


「俺が、平山先生に怒られるっていうやつだろ? 覚えてるよ」

「……心配になって」

「大丈夫、目立たないようにしてるから」

「なら、いいが」

 目のキョロキョロ泳がせ、本当に不安がってるんだと感じる。

 自分のことのように、思ってくれているんだな。

 そう思うと嬉しくなり柊の頭にポン、と手を乗せてみる。

 そのまま手を上げて下ろし、ポン、ポンと二回優しく叩く。

「…………」

「…………………………」

「…………いつまで置いているんだ」

「え、ごめんなさい……!」

 乗せたはいいが離れるタイミングが掴めず、柊の頭の上にずっと乗せたままでいた手を急いでどかす。

 まだ顔を上げない柊を覗き込もうとしたら急いで顔を避けられる。

「もう行くからな」

「き……気を付けて……?」

 ……耳が赤かった。

 柊につられて自分の顔にも熱がこもるのを感じる。


「なんっだよ、お前! あの柊さんとも友達なのかよ!」

 席に戻るなりの橋本からの大声。

 あの柊さん、って違うクラスである柊のことも知っているのか。

「え……いや」

「どっちが本命なんだ? ん?」

「いやいやいやいや……」

「お前、頬少し赤いぞ? 分かった、柊さんが本命か!」

「……どっちも、友達なんだけど……」

「ふーん?」

 まだ納得しきれていない顔の橋本。

 早く一限目になれ。むしろ早く先生来てくれ、と心を願う。

 ドアが開き先生が入ってくると急いで橋本も前を向いた。

「あら? 海上君少し顔が赤いわね? 熱があるんじゃない?」

 橋本が前を向きホッとしたのも束の間。

 次は平山先生と目が合う。

「………………え?」

「保健室で熱測ってきなさい?」

「大丈夫、です」

「無理しちゃ、ダメよ!」

 教壇からいつの間にか俺の席の前まで来て、目線を合わせるよう中腰になる。

 眉を寄せ、まるで怒っているよう……。

 そうか、柊はこれを見たのか…………。

「……分かりました」

   ***

 保健室で熱を測り、平熱と分かってもなお大事をとって一時限目は保健室で横になることとなった。

 顔が赤かった原因は一つしか考えられないが。

 柊のあの表情を思い出すだけで顔が熱くなる。それを冷ますためにも少し硬くて冷ややかなベッドに身体を入れる。

 眠ることはできなかったが、横になってのんびりできるのは役得だと思ってしまった。


「せ~ん君? 大丈夫?」

 生憎保健室のベッド付近に時計がなく時間は分からなかったが、一限目が終わったのだろう宮本が保健室に来てくれた。

「心配だから来ちゃった。熱は?」

「六度七分。微熱ですらなかったよ」

「二限目出られそう?」

「出られるよ」

「良かったぁ……」

 宮本にも心配をかけたんだな。

 心配してくれる人がいるのは嬉しいと正直に思う。

「ニ限目はテスト対策だって!」

「……有り難い授業だな」

「え? つまらなくない?」

「……追い込みをしてくれる有り難い授業だと思ってるよ」

「千君はいい方に捉えるイイコさんだね~」

 一限目サボってしまったからね、とは言わないでおく。

 テストまで残り土日を挟む三日間。

 進級できるよう、頑張ろう。

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